第209話 卒業の式典(4)

「お待ち下さいお父様。」


 そこでリディアが待ったをかけた。

 リディアを見るアルザードさん。


「そこにおられるお二人はこの学院切っての実力者です。学生として、私とシエイラに次ぐ実力を持っておられます。」

「リディアさん」「リディア様」


 二人が嬉しそうにリディアに顔を向ける。

 しかしリディアはにっこり笑った後、僕を見た。

 ・・・なんか嫌な予感がする・・・


「そこにいる方々はシャノワールのパーティメンバーです。」


 そして二人の男は僕たちの方を見て


「・・・美しい・・・リディアさん達と同じくらいだ・・・」

「シエイラさんクラスばかりだ・・・エルフ族もいるとは・・・」


 ねぇ・・・僕が目にはいってないんだけど。


「ですので、その実力をそこの男性に見せて貰えませんか?そしてもしあなた方が勝てば私達はあなた方を認め、あなた達のパーティに入っても良いですよ。」


 リディアはそうにっこり告げた。

 ああ・・・やっぱり・・・

 僕は渋い顔をする。

 アルザードさん達は笑いを堪えているようだ・・・というかレイチェルさんは後ろを向いてめっちゃ笑っている。


「そういうことなら、あたしも、もしこいつが負けたらあんた達のパーティに入ってもいいぜ。」

「メイもです。」

「うふふ・・・じゃあ私もそうしましょうかね〜?」


 アイシャ達も笑いながらそう言った。

 面白がってるな?もう!

 

 しかし、男たちには効果覿面。


「この男に勝つだけで全員が・・・だって?」

「これは・・・素晴らしいパーティになるぞ!おい!そこのお前!パーティ会場をいまからもう少し豪勢にするよう指示してこい!リディア様!本当は僕たちのパーティに入りたかったのであればこっそりおっしゃってくれたら良かったのに!」

「そうですよ。こんなひょろくて弱そうなヤツに勝てばだなんて・・・僕たちが負けるわけないじゃないですか!おい平民!今からで良いな?お前に拒否権は無い!」


 はぁ〜しょうがないなぁ。

 僕が答えようとすると、リディアが目配せしてきたので黙る。


「それではもう少し確実にしましょう。ここにいる全員で戦うというのはいかがでしょう?」

「え!?しかしそれではこの男が可哀想では?」

「別にかまわないでしょう?」


 そう言ってにっこり笑う。

 小悪魔の笑顔だ。


「そ、そうですね。それではそうしましょう!おい、お前らその場所からどけ!今から決闘を行う!」


 笑顔を見た公爵家次男とやらは嬉しそうに場所を開けさせた。

 やれやれ・・・


 そして僕たちは広場片側に公爵家次男チーム、もう片側に僕という配置についた。


「悪いが手加減はしてやれん。どうやらお前はリディア様に嫌われているようだな。」


 そりゃあんただよ。


「せめてもの情けとして速攻で終わらせてやろう。

「そりゃどーも。」

「・・・なるほど。格上に対する口の聞き方も知らぬ者か。リディアさんが怒る訳だ。」


 そして、リディアが軽い口調で


「それでは決闘を開始しますね。よろしいですか?」


 そう言って僕たちを見る。


「はい。リディアさん。この勝利をあなたに!」

「はい。俺はこの勝利をシエイラさんに捧げます!!」

「いいで〜す。」


 三者三様の僕たち。


「では、メイビス公爵家の家長たるこのアルザードと」

「テロア伯爵家の家長たるこのジラートが見届けよう。」


 見届人はしっかりできた。

 これで公式の決闘になったね。

 後から文句も言えないっと。


「それでは始め。」


 リディアが開始の合図を出す。


「いくぞ!へいみ・・・ん?ぐえっ!?」


 僕は一気に突っ込んで公爵家の次男とやらを殴りつける。


「な!?おのれ!火よ!燃え盛り我が・・・げふっ!?」


 そのまま伯爵家の長男とやらに弱めたウォーターシュートを腹にぶつけた。

 ふたりは転がって悶絶している。


「むむ、無詠唱だって!?」

「あの一瞬で!?」

「で、でも動きもはや・・・ぎゃ!」

「がっ!?」

「ぐふっ!?」


 おっそいなぁ・・・これで冒険者をやろうと思ってたの?

 隙だらけだし、連携もダメ、状況判断も鈍い。

 これじゃあね。


「お、おのれ平民が!不意打ちなどと卑怯な手を使いおって!目にものを見せてくれる!」


 お?公爵家の・・・めんどいなぁ、次男でいいや。

 次男が立ち上がって詠唱を開始した。

 ・・・実力差がわからないとは・・・


 この魔法は・・・ファイアランスか。


「火よ!燃え盛り二槍の槍と成れ!敵を撃ち抜け!二連『ファイアランス』!!」


 へぇ・・・途中の詠唱で「二槍」を挟んで二連にしたのか。

 魔力制御が甘いと失敗するんだよね。


「おお!流石です!!」

「あの無礼者に鉄槌を!!」

「これであいつも終わりだ!」


 何か取り巻きが口々に叫んでる。

 ギャラリーも感心しているようだ。

 ふむ。


「どうだ!平民!死んだら墓くらい立ててやるぞ!」


 槍が飛来中に次男が叫ぶ。

 ・・・というか、着弾するまでに叫べるってどんだけ遅いのさ。

 僕はため息をついて飛んできた二本の槍を魔力を纏わせた拳で地面に叩きつける。


「・・・は?」

「えっ!?」

「・・・うそだろ?」


 僕は呆れながら次男を見る。


「今のが切り札?もう終わらせていい?」

「な、何を言って・・・」


 僕は魔力を練る。


「こ、この魔力は・・・」

「なんて魔力だ・・・」

「逃げろー!」


「『ファイアランス』20連」


「「「「「「「「「「「「ぎゃあああぁっっぁぁぁぁっぁぁぁ」」」」」」」」」」」」

 

 僕は無詠唱で20連ファイアランスを放った。

 と言っても、直撃させずに近くで爆発させて余波でダメージを与えている。


 爆発がおさまった後、そこにはボロボロで倒れる次男達がいた。


「わざと外したんだけどまだやる?」

 

 そう聞くと、次男は、


「降参!降参だ!この化け物め!!」


と言って後ずさっていた。


 そこでリディアがアルザードさんとジラートさんを向く。

 

「ふむ。それではこの決闘は冒険者リョウマの勝ちだ。ジラート殿よろしいかな?」

「もちろんですとも。」


 二人は頷きあっている。

 

「はい、残念でした☆」


 リディアがめっちゃいい笑顔で次男たちを見た。

 次男はこちらを見て、


「公爵家を敵に回したな。覚えておれよ。」

 

 そう呟いた。

 すると、それを聞いていたアルザードさんが、


「・・・若いな・・・君。家に帰ったらご当主に聞いてみると良い。『黒衣の天災』本人に決闘をしかけたが、大勢の前で負けてしまった。恥をかかされたので仕返しをしてくれ、とな。」


 そう言った瞬間、周りは息を飲んだ。


「『黒衣の天災』本人・・・」


 次男が呟く。

 取り巻きも同じ様に驚いていた。


「それぞれ自宅に帰ったら同じ様にすると良い。君たちが誰に喧嘩を売ったのかよくわかるぞ。多分な。そしてごまかしは許さない。私とジラート殿でしっかり見届けているからな。」


 アルザードさんがそういうと、次男達はこちらを睨みながら立ち去っていった。


 僕はリディア達やアイシャ達にもみくちゃにされる。

 ってちょっと!誰だ今変なところ触ったのは!!

 うぷっ!?胸に顔が・・・この感触は・・・アイシャか!?息が!!


 きゃいきゃいしているみんなと、顔を胸に押し付けられ息が吸えないため命の危険を感じる僕。

 周りからは嫉妬の感情が凄く伝わってくる。


 アルザードさん達は苦笑中だ。

 とりあえず移動しようよ!


 僕たちは王城に移動するのだった。


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切りがいいとこまでと思ったのでちょっと長くなっちゃいました。

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