第208話 卒業の式典(3)

「…いまなんとおっしゃいました?」


 リディアです。

 めっちゃ切れてます。

 しかし、馬鹿な男たちは気づくこと無く言葉を続け、


「おや、ご興味を持って下さいましたか。考えなおして頂けましたかね?それでは話が早い!本日からパーティとして登録しましょう!この後打ち合わせがてら打ち上げをする予定です。ご参加下さい。大丈夫!会場は既に押さえ「ふざけないで下さい。」て・・・え?」


 男はそこでようやくリディアがキレていることに気づきました。

 

「あなた方のような方が組むパーティに入れと?馬鹿も休み休みにして言って下さい。正直に申し上げて、私やシエイラ、グレイスにも勝てないあなた方のパーディに入るメリットはこちらには一切ありません。」

「なっ・・・!」

「ましてや汚い手でのし上がったですって?そんなわけないでしょう!はっきり言っておきますが、私とシエイラ、グレイスは『黒衣の天災』の二つ名を持つパーティリーダーの弟子です。そんな侮辱をされて黙っていることは出来ません。」


 リディアがそう言って男たちを睨む。

 シエイラとグレイスも睨んでいる。

 ルーさんはすまし顔だ・・・流石ルーさん。


 しかし、男たちは諦めない。


「し、しかし平民なのでしょう?あなた方のような爵位を持つ方々にはそれなりの身分を持つものと付き合う義務があるはずです!」

「それは誰が決めたのですか?」

「だ、誰?」

「ええ、それを決めた人を私の前に連れてきて下さい。」

「いや・・・しかし慣習として・・・」

「そんなものは、貴族で偉そうにしている人が勝手に言っているだけでしょう?私が付き合う人は私が決めます。そうですねお父様?」


 そこでリディアは視線をアルザードさんに向けた。

 男たちはそこに希望を見出したのか説得しようとした。


「高貴なる身分である公爵家と伯爵家のご頭首ならわかっていただけるはずですよね!?娘さん方を説得して下さい!娘さんたちは下賤な平民に騙されていると!」


 アルザードさんはため息をついてから口を開いた。


「君達の名前は?」

「は、はい!セプテス公爵家の次男です!」

「私はエイトマ伯爵家の長男でございます。!」

「君たちの親御殿は今いるかね?」

「いえ、既に帰りました。私は打ち上げがあるので遅くなるので。」

「同じです。」

「そうか・・・ならばお父上にお伝えして欲しい。我がメイビスはセプテス公爵家とエイトマ伯爵家と縁を切らせて貰う。」

「「えっ!?」」


 二人は呆然としている。

 

「君たちは知らないのかね?『黒衣の天災』が何をしたのか。そして何故そのような二つ名を持つに到ったのか?」

「いえ・・・。」

「・・・存じません。」

「ならばお父上に聞いてみるといい。ご当主殿ならば知っておられよう。そして私は『黒衣の天災』と縁を結ばせて貰っている。それも親しくな。ジラート殿もだ。」


 そういってアルザードさんはジラードさんを見る。

 ジラードさんは厳しい顔で頷いた。


「私達は『黒衣の天災』を直接見知っている。そして娘を預けられると思ってお願いしているのだ。それをそのような言い方をされては不快だな。」

「勿論私もです。この件はご実家に厳重に抗議させて頂く。」

「そうだな、メイビス、テロアの連名で出しましょうか。」

「そうしましょう。」


 アルザードさん達の言葉に二人の男や取り巻きが動揺している。


「ま、待って下さい!」

「なんだね?」

「何故冒険者風情の為にそこまでされるのです?」

「君は友人が貶されたら憤慨しないのかね?」

「ゆ、友人?」

「そうだ。私もジラート殿も『黒衣の天災』とは友人関係に有る。」

「そ、そんな・・・ありえない・・・平民の友人?」

「何かおかしいかね?」

「だって・・・貴族なのに・・・」

「君は貴族を勘違いしているな。貴族の義務は民を守り国に尽くすことだ。断じてその身分を振りかざし偉ぶるためではないし、身分で見下すものでもない。それがわからない家と交友を結ぼうとは思えない。」


 アルザードさんの言葉にわなわなと震える二人。

 爆発するかな?


「お待ち下さいお父様。」

 

 そこにリディアの制止が入った。

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