閑話 その頃の桜花(11)

 あれから1ヶ月が立った。

 私は全てを思い出した。

 勿論まだレーナには話していない。

 盗聴されているからね。


 私はあの後、意識を取り戻してから、異常は無いと言って部屋に戻り、枕に顔を押し付けて声を殺しながら泣いた。

 涙が止まらなかった。

 

 それはまた龍馬に会えると思ったからだ。

 セレス様の言ったことは本当だった。

 だとすると、まだ脱出は時期尚早という事になる。


 セレス様の話だと、思い出してもすぐに動くなという事だった。

 だから、最初に言われたとおり一年はこの国に居ようと思う。


 寂しいけど仕方がないわね。

 自分の身を守るためだもの。

 それにレーナも守りたい。


 やはりこの帝国は酷い国だった。

 何せ女神様のお墨付きなんだもの。


 それまでうまくやって、召喚されて一年立ったら脱出する・・・レーナを連れて。

 

 龍馬は強くなってるみたい。

 あのいけすかない帝国の剣の、薬ブースト状態を倒せる位に。

 流石は私の龍馬だわ!

 

 そうやって龍馬との思い出に浸っていた私だったけど、ふと、考えた。

 

 あれ?あの龍馬の名前を出していた子たち、皆凄く美人だったわよね?

 なんかすっごく信頼しているようだったけど・・・信頼だけよね?そうよね・・・まさか浮気なんかしていないわよね・・・龍馬?


 その瞬間何故か凄くイラッと来た。

 なんだろう?龍馬が鼻の下を伸ばしている気配を感じたような・・・

 う〜ん?

 あいつ普段なんでもないような顔して、可愛い子に褒められたりすると結構デレデレしてることがあるのよね。

 そう言う時はO・HA・NA・SHIして、誰が彼女か思い知らせていたけど・・・やっぱり今から行こうかしら?

 

 正直、龍馬が浮気しているとは思っていない。

 むしろ、詰め寄られて困惑していそう。

 そう、実は龍馬はモテるのだ。

 本人は気づいていないけどね。

 

 他の女の子から・・・それも可愛い子たちから、結構アプローチされているのに、本人は自分がモテていると思っていないから気づいてないのだ。

 本人は、自分をどこにでもいる平凡な高校生だと思っている。

 そんなわけないのに。


 男に絡まれている女の子を助けたり、重いものを持っている子を手伝ってあげたり、困っているおばあさん達を助けてあげたり、迷子を見つけると一緒に親を探してあげたり・・・モテないわけがないのだ。


 見ている子はちゃんと見ているし、優しく強いところも気づいている。

 見たくれだけで判断している軽い女子や、男子達とは違うのだ。 


 私にしてみれば、彼女の私がいるにも関わらず、アプローチされているという事で、自分がモテるのだという事に気づいて欲しい。

 いつもヒヤヒヤしているのだ。


 思い返してモヤモヤしていたら、レーナが本を持って部屋に入ってきた。

 今日もおすすめの本を持ってきてくれたらしい。


 本・・・か。

 龍馬も本が好きだったわね、そういえば。

 ラノベや漫画が多かったけど。


 ファンタジーが好きだとか言ってたけど、実はラブコメも好きなのよねあいつ。


 うまく隠しているつもりだろうけど、お見通し。

 隠している場所も知っているもの。


 どんな女の子が好きなのかの参考に、たまにこっそり借りて読んでいたからね。


 お隣の天使様にダメ人間にされるのとか

 美少女と距離おいたりするやつとか

 家に学園の女神が来たりするやつとか

 諦めない元許嫁のやつとか

 他にもいっぱいある。


 あれ?私に似てないヒロインのやつばっかりじゃない?

 気のせいかしら・・・龍馬に問いたださないとね。

 それとさりげなく、剣道のラノベのつるぎのなんとかの吹雪ちゃんとか実力至上主義の堀北ちゃんについてどう思うか聞いてみよう。

 見た目は似てるかわからないけど、性格は誰とは言わないけど素直になれないところなんか似てる気がするし…誰とは言わないったら言わないけど。

 もし、趣味じゃないって言ったら奴の持ってるラブコメを焚書坑儒の刑にすることも視野に入れなければ…


 それにちょっとえっちぃヤツもよく読んでいるみたい。


 高値の花の先生と恋愛したりするやつとか

 出会うって一突で除霊しちゃうやつとか

 パンツをプレゼントするような変態妹の奴とか

 三姉妹の家庭教師になるやつとか

 彼女がエロゲの真似したりするやつとか

 人間の魔王候補のやつとか

 これも他にもいっぱいある。


 意外に龍馬イヤラシイからなぁ・・・私の前ではすっごい我慢してそう言う面を見せないけど。

 高校生だし少しくらい見せてくれてもいいと思うんだけどね。

 キスはもうしてるけど・・・それも数える程だし。

 そろそろもうちょっと進んでも・・・

 

 でも、ここは異世界だもの。

 油断できないわ!!

 龍馬を狙う猛獣達から守りきらなければ!!


 ・・・流石に人妻や未亡人なんかには興味がないと思うけれど・・・大丈夫よね?

 性癖変わってないわよね?

 年上お姉さんとかにたらし込まれていないかしら?


 あああ・・・心配になってきたわ・・・


「オウカ?様子がおかしいですよ?どうかしたのですか?」

「い・いえ、なんでもないわ。ちょっと考え事をしていたのよ。」

「その割には殺気が出ていたり焦ったり、表情がコロコロ変わったりしていましたが・・・」

「・・・気にしないで、いえ、気のせいよ。」

「?」


 不思議そうにしているレーナ。

 そうねこういうの誤魔化す時は、


「そういえばレーナは好きな人はいないの?」


 恋バナ(他人の)に限るわね。


「うぇ!?な・なにをいきなり・・・」


 レーナからお姫様が出しちゃいけない声が出たわね。


「いいじゃない。どんな男が好みか教えてよ。」

「・・・ううう・・・オウカも教えて下さいよ?」

「私は記憶を失っているもの。よくわからないわ。」

「ずるいです!!」


 さて、きゃいきゃい騒ぐレーナを尻目に私は考える。

 今龍馬がどんな境遇に置かれているかわからないけど・・・必ず合流して見せる!!

 

 だからそれまで・・・浮気すんじゃないわよ!龍馬!!

 してたら別れる・・・のは多分無理だから折檻だからね!!

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