第8章 

第206話 卒業の式典(1)

第8章 火の元の国と金色の竜


 ネモス小国とネメ共和国での戦争を経験してから3ヶ月が立った。

 この3ヶ月、僕たちはSランクパーティとして大活躍だった。

 

 今や誰もが一目置く冒険者パーティとなっている。

 僕たちに大きく変わった事は無いけど、しいて言えば、リディアとシエイラ、グレイスが冒険者登録をした事くらいかな。


 リディア達は三日後に卒業する。

 卒業後の進路は引く手あまただったらしいけど、並み居る教授達のスカウトや、貴族からの求婚なんかを退け、リディア達が選んだのは冒険者の道だった。

 これには周囲は驚いたらしい。

 公爵、伯爵なんていう大貴族の令嬢が、冒険者への道を選ぶなんて前代未聞だったからだ。


 当然反発もあったが、リディアはこう言い放ったらしい。


「私の道は私が決めます。文句がある方は私よりも強くなってから言いなさい。」


 既に教授たちよりも遥かに上にいるリディア達に、文句を言える人は学長を含めて

いなかったしい。


 求婚については、


「お慕いしている方がいます。その方は私達の師にあたり、私達よりも遥かに強いです。結婚したいと思う方はその方だけです。シエイラも同じでしょう。ですからお断りいたします。これはお父様も納得しているのでメイビス、テロア両家の意向と思っていただいて構いません。」


と切って捨てたらしい。


 自信満々だった家柄だけの求婚者達が、肩を落としてすごすご退散するのは面白かったとグレイスとルーさんが笑っていた。


 そんなリディア達は全員Bランクスタートとなった。

 例によって僕のつきそいで、ギルド本部に行ったんだけど、本部のギルマスが、


「どうせその娘たちもお前らに類する実力をもってるんだろう?試験なんか必要ないだろう。これ以上試験官の自信を喪失させるな。」


 と言って、即決してくれた。

 善き哉善き哉。


 僕たちシャノワールは、三日後の卒業の式典に参加する予定だ。

 アルザードさんとレイチェルさんとジラートさんと合流し、一緒に王都に行き、そこでリディアの寮の部屋の転移扉を撤去するつもり。

 帰りは王城のを使わせてもらう算段になっているしね。


 こっちの世界の卒業式はどんな感じなんだろう?

 今から興味津々です。


 僕たちの世界の仰げば尊しみたいなのあるのかな?

 

 

 そして、三日後。

 今日はリディア達の卒業式です。

 僕たちは今日の為に仕立てた服をそれぞれ来ている。


 僕は黒のタキシード風衣装。

 これは記憶にあるタキシードを、こちらの世界の仕立て屋さんにお願いして仕立てて貰ったんだ。

 本来は夜に着ると思うんだけど、こっちの世界の人は知らないだろうからいいかなと思ったんだ。


 これが中々好評。

 みんなから手放しで称賛されました。


 みんなもそれぞれドレスアップしている。

 全て僕の世界のデザインです。


 ふふふ・・・実は僕の母さんはデザイナーで、そこそこ名が売れているらしい。

 そんなお母さんに子供の頃から基礎を叩き込まれたので、僕にもそういう知識があるのですよ。


 もっとも将来の仕事にする気はなかったんだけどね。

 もとは忙しいお母さんを手伝いたいって子供心からの行動だったからね。

 お母さんもわかっていただろうし。


 さて、みんなの様子を発表します。


 アイシャは赤い色のワンショルダーのフィッシュテールドレス。

 丈は短めで長い足がとても良く映えている。

 メイちゃんは薄い水色のチャイナドレス。丈は膝丈くらい。

 だけどスリットはそこそこにしてもらった。

 とても可愛らしく似合っている。

 エルマは薄緑色のオフショルダーのマーメイドドレス。

 エルフである事も相まって幻想的な美しさだ。


 これも全て仕立て屋さんにお願いしてた。

 

 アルザードさん達も絶賛してくれたよ。

 ・・・にやけたアルザードさんの耳がレイチェルさんに引っ張られてたけど。

 そのせいで、レイチェルさんにも今度ドレスをデザインすることになった。


 仕立て屋さんにはお金はいらないので、今後このデザインで商品を作らせて欲しいと懇願されたから、快く了承しておいた。


 これで稼ぐ気はないけど、タダで仕立てて貰えたのは嬉しいね。


 今も会場の来賓席にいるんだけど、みんな凄く目を引いている。

 変なのに絡まれるかなと思ってたけど、近くに公爵のアルザードさんがいることもあって、遠巻きにチラチラ見られる位で済んだ。


 さて、まもなく卒業の式典が始まる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る