第202話 ネメ共和国の奪還

 決戦があった日の翌々日、僕たちはネメ共和国に向けて出発した。

 特筆すべきことは無い。

 旅は順調。

 行軍に乱れもない。

 ネメ共和国の軍も早く自分たちの国を取り戻したいんだろうね。


 ネメ共和国の軍とネモス小国の軍にわだかまりはないようだ。

 略奪を繰り広げていたのは主に帝国軍で、ネメ共和国軍は街を制圧後は外周警戒に回されていたらしい。

 多少思う所はあるんだろうけど、どちらかというと国を奪われ、いいように使われていた彼らに同情的なようだ。


 行軍には逃げ延びたネメ共和国のお偉いさん達も一緒にいる。

 どうも、次期大統領候補と言われていた人が、現大統領の命令で逃げ落ちていたらしい。

 二人はライバル関係だったようだけど、お互いに認めあっていたようで、責任を取るために大統領が残って、今後もし国を取り戻す事ができた時に、国を頼むと託されていたようだ。

 僕はそれを、涙ながらに語る次期大統領候補のセルヴァンさんから聞いた。

 セルヴァンさんからは、現大統領はおそらく処刑されていると聞いている。

 

 セルヴァンさんはっとてもいい人で、カリスマもあった。

 逃してくれた人達の意思を受け継ぎ、良い国を作れる手助けをしたくなっちゃったよ。


 行軍は進み、色々な街を巡ったけど、帝国兵は少数がいるだけで、すぐに奪還することが出来ていた。

 街の状態はどこも酷いもんだったよ。

 あいつら許せないな…


 現在は出発から12日が過ぎたところ、ついにネメ共和国首都が見えた。

 首都に着くとすぐに行動開始。


 友軍がなだれ込み制圧。

 どうも王都には、1000人程度の帝国兵しかいなかったようで、あっという間だった。

 

 制圧が終わった後、僕たちは主賓として迎賓館に泊めさせて頂くことになった。


 翌日。

 僕等は大統領府に招かれた。

 戦後処理の説明を受けるためだ。


「まずは、我が共和国を救って頂き感謝の念が絶えない。ネモス小国の軍、セレスティア王国代表ウルト殿、冒険者パーティシャノワールの諸君。本当にありがとう。」


 セルヴァンさんがそう言って頭を下げた。

 そして語る。

 聞き取り調査の結果、帝国の罪が色々明らかになった。

 

 セルヴァンさん達が逃げた後、大統領はすぐに処刑されたらしい。

 そして軍は帝国の管理下に置かれ、一般市民は帝国兵による理不尽な暴力と、辱めを受けたそうだ。


 大統領の妻と娘は暴行を受けた後共に自害。

 主な議員も大統領の処刑後すぐに後を追わされたらしい。

 

 帝国兵が常駐したのは3日程。

 すぐにネモス小国に兵を挙げた。


 衛兵も含め、全ての軍人は参加させられたため反乱は不可能。

 残った帝国兵は略奪の限りを尽くしたらしい。


 今回生き残っている帝国兵はおよそ300人。

 セルヴァンさんの言では、全て処刑されるそうだ。


 すでに魔狂薬の影響も無くなっているからね。

 それくらいの人数ならどうとでもなるのだろう。


 処刑される帝国兵には同情は無い。

 自業自得だろうしね。


 一般市民も参加して、恨みつらみを晴らすそうだ。

 

 とりあえず、ネモス小国とセレスティア王国からは復興支援が為されるそうだ。

 これはこっそり通信石を使用したウルトが確認し、セレスティア王の名代として宣言していた。

 今後は協力して帝国に対抗するんだって。


 その夜セルヴァンさんの館にシャノワールとウルト、ガーベラは招かれた。

 歓待を受けセルヴァンさんが労う。


 僕はセレスティア王と女王様から、セルヴァンさんは信用できると聞いていた。

 もともとセルヴァンさんは外交官として、諸国を巡っていたらしい。

 王様と女王様とは面識があるそうだ。


 だから僕は僕の事情を話すことにした。

 勿論通信石も使用して、王様と女王様にも参加してもらったよ。

 セルヴァンさんは驚きながらも、目を輝かせていた。


「僕は若い頃、英雄に憧れていたんだよ。残念ながら戦う才能に乏しかったから勉強を頑張ったんだけどね。君はまさに英雄だ!個人としても、国としても協力させて貰うよ!」


 セルヴァンさんは私的な場では「僕」というようだ。

 公の場では「私」だったけどね。

 僕もその方が気楽で良い。


 僕たちは意気投合して仲良くなった。

 

 僕たちはセルヴァンさんから小さい屋敷を一つ譲ってもらった。

 そこを共和国に来た時の拠点として、転移扉を設置する予定だ。

 

 同じ様にネモス小国からも屋敷を貰うことになった。

 これで、この三国は簡単に行き来できるようになったね。

 一番喜んでたのはガーベラだったけど。

 いつでも僕たちに会えるってね。

 

 いやいや、あなたは王女でしょ!

 自重してください。


 そうして楽しい夜は過ぎていったのだった。

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