第201話 戦後処理

 僕は結局アイシャ達の方には行かなかった。

 アイシャたちを信じることにしたんだ。

 なんとなく気にかかることもあるから、後でアイシャ達に詳しく聞こう。


 僕はガーベラ達とネメ共和国指揮官の所まで行く。

 すでに痙攣は止まっており、普通に話せるようだ。


「この度は誠に申し訳なかった。どうか処刑は私だけにして頂きたい。」


 指揮官は頭を下げた。

 それを聞いたガーベラは、


「私はネモス小国第一王女のガーベラ・クレイ・ディア・ネモスよ。大丈夫。事情は大体把握しているわ。降伏するということで良いのよね?」

「ああ、こちらの負けで問題ない。」

「なら、あなたと幹部は王都まで来て。悪いようにはしないわ。女王を含め戦後のお話をさせて頂きます。それにネメ共和国も取り返さなきゃいけないしね。」

「・・・そこまで考えて頂けているとは・・・感謝の念に耐えません。」

「まずは王城へ行きましょう。」


 そうして僕たちは王城へ行くことになった。


 それにしても体がだるい・・・

 前みたいに寝込むほどじゃないにしろ、えらいのはえらいなぁ・・・

 でもこれで黒水晶3つ目だし良いペースなのかもね。


 アイシャ達は野営地を片付けてからこっちに来るようだ。

 

 僕はウルトと先に王城に向かう。

 謁見の間には女王様がいた。


「この度は我が国を救ってくださり感謝いたします。リョウマ様。お礼はまた後で。」


 そう言ってこっそりウィンクする女王様。

 似合うなぁ・・・イテッ!?

 見惚れていたらガーベラが蹴ってきた。

 お母さんに見惚れていたから怒ったのかな?

 大丈夫!取ったりしないよ!


 ネメ共和国の逃げてきていた重鎮も交えて、会議が行われる。

 これからの方針として、帝国に時間を与えること無く奪還に向かうことになった。

 僕たちもそれに付き合うと申告すると、ネメ共和国側からも感謝された。

 別に良いんだけどなぁ・・・


 出発は明後日。

 明日は休養日とすることになった。

 

 まあ、昨日の今日で行軍はきついよね。

 ここからネメ共和国の首都まではだいたい10日位らしい。

 

 ネモス小国側からはガーベラ率いる兵1万人が参加。

 僕たちもそこに所属することになった。


 会議を終えたぐらいの時に、アイシャたちが帰ってきた。

 僕たちは場所を変え、女王様とガーベラ、宰相さんと話し合うことになった。


「先にも言ったけど今回は本当にありがとうございました。ガーベラから聞いた話だとあなた達シャノワールとウルト様がいなければ負けてたと思うわ。この恩は絶対に忘れないわ。」


 女王様が頭を下げた。

 宰相さんとガーベラも頭を下げている。


「気にしないでください。僕のいた世界の格言で、困った時はお互い様ってのがあります。だからもし、僕が今後何か困っていたら助けてくれたらそれでいいですよ。」


 僕はにっこり笑ってそう伝えた。

 女王様は嬉しそうに笑って、


「リョウマくん本当にありがとうね。個人的なお礼として、今日の夜わたくしの部屋に来ないかしら?いっぱい奉仕するわよ?」

「行きません!!」

 

 また始まったと宰相さんとガーベラが顔を顰める。

 アイシャ達は苦笑している。


「あら・・・リョウマくんはわたくしじゃ不満かしら?」

「いや・・・女王様はお綺麗ですし、そういうことに興味もあるけど、僕には相手がいるからしません!」

「今ならガーベラもつけるわよ?」

「お母様!?何言ってるの!?」

「ガーベラいいかしら?男の人が頑張ったら癒やすのは女の役目なの。それはどんな立場の人でも同じ。だからあなたも覚悟を決めて・・・」

「ちょいちょいちょい!なんでするの前提で話し進めてんの!?しませんよ!?しーまーせーんー!!」

「・・・ケチ。」

「ケチじゃありません!」

「・・・ちょっと位迷ってもいいじゃない。」

「ガーベラも何言ってんの!?」


 はぁまったく・・・


『ほっほっほっ。リョウマよ。羨ましいのぅ。ネモス女王は諸国の王の憧れなのじゃぞ?そんな方に誘われるとはのぅ。流石じゃ。』


 うるさいエロジジイ!

 勿論、セレスティア国王も通信石で話し合いに参加しています。

 ・・・役に立ってないけどね。


 取り敢えず話を変えよう。


「アイシャ達勇者に会ったんだよね?どうだった?」

「そうだなぁ・・・魔狂薬を使われた時にはちょっと焦ったけど、それでもあたしの方が強かったぜ・・・今の所はだけどな。武器はリョウマの武器と同じ感じだった。技も近かった気がする。それに転移魔法で逃げたのには驚いた。完全にしてやられたぜ。」

『おそらく帝国の王女の一人じゃの。転移魔法が使える天才がいるという噂を聞いたことがある。』

「発動にかなり時間がかかってたけどな。」


 それにしても勇者か・・・


「強かったんだね。」

「見た目も凄く綺麗だったのです。リョウマお兄ちゃんみたいな黒髪で、身長はエルマお姉ちゃん位。髪の長さはガーベラさん位で後ろで結んでた。そしてお兄ちゃんみたいな刀を使ってたのです。」


 メイちゃんの言葉に少し考える。

 同郷の可能性が高まった、か。


「名前は?」

「それがさぁ、向こうが名前を言おうとした瞬間、転移が発動しちゃって聞こえなかったんだよな。でも性格は曲がった事が嫌いっぽくてカラッとしてたぜ!ズバズバ物を言うしあたしとは気が合いそうだったな。みんなとも仲良くなれそうだったぜ。」


 黒髪セミロングで身長160センチメートル位、美人で曲がったことが嫌いでズバズバ物を言う、そして刀使いで僕と似た技…

 ・・・まさか、ね。

 ないない。

 というか、あってほしくない。

 桜花がこっちに来てるなんて・・・ないよね?



 

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