（本編完結済）勇者ではありませんただの迷子です

第１８６話 結末と食えない王様

「あなたは？」

　僕は更に他の人に話を振る。

「･･･私も同意見よ。あの方は自分の領内でも評判最悪だから。」

「ふむふむ。」

「他の皆さんはどう思うの？」

　僕は見回す。

　すると、

「そ・そうだ！ゼンク公爵はいつもそうだ！」

「横暴だったぞ！間違いない！」

「自分の意見が通らなかったらすぐに叩き潰していたからなぁ。」

「儂も以前痛い目にあわされた･･･。」

　最初の一人を皮切りに、怒声が飛び交いはじめた。

　一通り出揃ったところで、僕は柏手を打つ。

　すると、謁見の間はシーンとなった。

「なるほど･･･この人の暴走でこうなったのか。そんなんで他国に行って敵として戦うのもなんだなぁ。この王国に仲の良い人達もいるし出ていくのもねぇ。じゃあ、このゼンクとかいう人が責任を取ってくれたら、僕は今回の件を水に流してもいいよ。勿論守秘義務も守ろう。どうする？」

　僕がそう言うと、貴族たちは一斉に、

「ゼンク公爵は責任を取れ！！」

「そうだ！このまま敵対されたらたまったもんじゃない！！」

「貴族として王に具申しましょう。責任を取らせる方向で。」

「そうだそれがいい！」

「王よ！」

　そう賛成して王様を見る。

　王様はため息をついて、貴族を見回してから僕を見て、

「恐ろしい男よのう･･･力だけでなく知恵もあるとは･･･試すために放っておいたが試すんじゃなかったわい。お主も試されているのは気づいておったのじゃろう？」

「勿論ですよ。とはいえ、彼はやりすぎた。僕は僕の仲間に手出しされるのであれば国であろうが神であろうが容赦はしませんよ。」

「言うのう。だがそれだけの強さは見せてもらった。五剣姫を赤子扱いとはの。ゼンクとお主なら比べ物にならぬくらい価値が違うの。お主の要望通りとしよう。ゼンクは伯爵に降格。これでどうじゃ？」

「ぬるいですね。彼のような相手は仕返しを必ずしてくるでしょう。その時は僕はどこであろうが誰であろうが容赦しませんよ。」

「はぁ･･･わかったわかった。ならゼンクは爵位の取り上げと、有益な高ランク冒険者を他国に放逐しようとしたとして犯罪奴隷とする。これでどうじゃ？」

「それで結構です。」

　僕と王様が合意すると、ゼンクは号泣しながら王様を見て、懇願する。

「王よ！このような冒険者と私とでは王国に対する貢献が･･･」

　しかし、王様はその申し入れを切って捨てた。

「ゼンク。お前が立場を利用して私腹を肥やしていた事をこの儂が知らぬと思っておったのか？儂は全て知っておる。じゃが、今まで王国に貢献をしておったのも事実。じゃから見逃しておったのじゃ。」

　そう王様が言うと、ゼンクは息を飲む。

「じゃが、今回の件は流石にどうしようもない。本望じゃろお主も。今まで自分がやって来たことを、自分がやられただけじゃ。力で叩き潰すというな。ただ、お主と違い、地位としての力では無く、それが莫大な力を持つ個人というだけじゃ。諦めよ。」

「そんな･･･王よ！王よ！！」

「連れて行け。」

　ゼンクは起き上がった騎士達に連れて行かれた。

　そして王様は僕を見て。

「暴れまわったのう。喉が渇いたじゃろ？奥で茶でも飲むとしようかのう。お主もそれで良いか？」

「僕はそれでも良いですが･･･仲間も一緒でお願いしますよ？」

「うむ。儂も見目麗しい女性が居たほうが嬉しいからのう！」

　エロジジイめ。

　しかし、玉座の横にいた人に王様は止められた。

「王よ！なりません。供回りもつけずに茶会など･･･」

「阿呆。こやつの力を見ておったじゃろう？五剣姫であろうとあの様じゃ。何人連れて行こうが、こやつがその気になったら儂の命はないじゃろうの。ならば、少しでも誠意を見せた方がよかろう。のう？お主もそう思うじゃろ？」

　それを僕に聞くんだもんなぁ･･･

　僕は苦笑して頷く。

「それに儂の勘じゃが、こやつは金や権力では動かぬ男よ。おそらく仁義か･･･弱き者の願いか、そう言ったものでなければな。そうじゃなきゃこんな良い女ばかりが近くにはおるまいよ。」

　王様は大笑いしながら言う。

　みんなもまんざらでは無いみたいだ。

「しかし納得行かぬ者もおるか。ならば･･･皆の者！今から儂はこやつと茶会をする！こやつが儂の命を狙った時に守れると言い切れるもの！誰ぞあるか！！」

「「「「「「「「「「「「「「「「お供します」」」」」」」」」」」」」」」」」

　近衛兵が一斉に挙手をする。

　しかし、王様は、首を振り、

「儂は守りきれるものと言ったぞ。お主らはこやつに一撃でのされておったじゃろう？儂に虚偽申告するのか？」

　そう言うと、みな手を下げバツが悪い顔をした。

「ということじゃ宰相。どうしてもというのならばお主と、ウルトだけにしておけ。但し！余計な発言と茶々は入れるなよ。相手は自分よりも強者という事を忘れるな。敬意を持てぬのであれば来てはならぬ。」

「･･･肝に命じまする。」

「御意」

　宰相さんと気絶から回復して立ち上がっているウルトさんが頭を下げた。

　王様は僕を見て、

「あーいつまでもこやつじゃいかんのう。お主名前は･･･確かリョウマと言ったかの？リョウマ、言葉遣いは気にするな。普通にしておりゃよいぞ。他の誰にも文句は言わせぬ。良いな皆の者！リョウマに対する一切の手出しを禁ずる！破ったものは極刑に処す！」

「「「「「「「「「「「「「「「「はは！」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

これにて一件落着ってね。