第180話 ホームへの帰宅

 翌日、僕はホームに居た。

 転移扉を設置するため、僕一人で急いで帰ったのだ。

 何せ、当初の依頼終了予定は昨日だからね。

 アルザードさん達も心配しているだろうし。


 僕は庭の地下室で新たに転移扉を設置する。

 この扉も増えたな・・・

 今や、バルムス、王都、エルフの里で3つ目だ。


 感慨深くしていたけど、みんなが待っていることを思い出す。

 いかんいかん。

 

 扉を通って墓所に着くと、そこにはみんなが既にいた。

 どうやら、僕の到着時間を予想して、里から墓所まで来たようだ。


 そしてお別れの挨拶。

 僕とアイシャと、メイちゃん、アリオスさんにイリーナさんとケーラさん。

 そして・・・


 僕たちの対面にいるエルフの里のみんなから、エルマさんが出てくる。


「エルマ、頑張るのだぞ。リョウマ殿、エルマを頼みます。」

「エルマ、しっかりね。リョウマくん娘をよろしくね。お母さんもいる?失敗しちゃったら困るでしょ?練習しとく?ついて行こうか?」


 長老とセルマさんがエルマさんと僕に声をかける。

 ・・・セルマさん、ついでとばかりに何言ってるの?

 どこまで本気かわからないけど、巫女さん達がセルマさんの服をみんなで掴んでるの見ると・・・まさか本気か?


 僕が冷や汗を流していると、エルマさんが、プンプンしながら、


「お母さん!いいかげんにして!!リョウマくんが困ってるわ!それに巫女頭でしょ!みんなも困っているじゃない!!」


 セルマさんに怒った。


 それを見てセルマさんは渋々引き下がった。

 渋々かぁ・・・


「それでは僕たちは失礼します。この扉の使用方法は巫女さん達に伝えてありますので、何かあれば遠慮なく来て下さい。それに通信石もあるので緊急時はすぐに伝えて下さい。飛んできますから。」


 気を取り直して、長老にそう言うと、長老はにっこり笑った。


「その時はそうするよ。リョウマ殿も息災でな。」


 そう言って握手した。


「リョウマ殿、またな。そのうちまた稽古をつけてくれ。戦士一同訓練しながら待っている。」

「うん。里をよろしくね。」


 長老に続いて、ケヴィンさんが出てきて握手した。 


 そして、最後にセルマさんが出てきた。

 にっこにこだ・・・

 嫌な予感が・・・


「リョウマくん、そのうち遊びに行くわね。リョウマくんもムラムラしたら遠慮なく私の所に来てね。すっきりさせてあげるから。でもこの握手で私の方がムラムラしちゃったかも・・・やっぱりついて行こうかしら?」

「確保!!」


 長老の叫びで巫女さん達がセルマさんに飛びつく。


「もう!お母さんのバカ!!」


 エルマさんは恥ずかしそうにしている。


 セルマさんは抵抗しているが数が数だ。

 はぁ〜この人は・・・

 僕はそんなセルマさんに近づいて、


「セルマさん。大丈夫ですよ。エルマの事はしっかり見て行きます。まだ、恋愛的に好きだとは言えませんが、人柄的には好きですからしっかり守りますよ。安心して下さい。」


 それもこれもエルマさんが心配だからでしょ?

 セルマさんはそれを聞いて抵抗をやめ、苦笑いしながら、


「あはは・・・見抜かれちゃってたか。エルマをお願いね。大事な大事な娘なの。」


 そう言った。


「お母さん・・・」


 エルマさんはセルマさんの想いを聞いて涙目だ。

 

「はい。命に変えても守ります。」


 そう真剣に僕が言ったら、セルマさんは僕の手を取り、


「頼んだわね・・・これはお礼よ。」


 僕の頬にキスをした。

 キスをした!?


「「「あー!!!」」」


 アイシャとメイちゃんとエルマが叫ぶ。


「お母さん!!」


 エルマさんが怒って走ってくると、セルマさんは手を離して長老の後ろに隠れる。


「それじゃいってらっしゃい。」

「もう!!」


 本当にこの人にはかなわないな・・・


「「行ってきます!」」


 僕とエルマは苦笑して声を揃えてそう言った。


 みんなで扉を通る。

 地下室に着くと、アリオスさんとイリーナさん、ケーラさんは驚いていた。


「話には聞いていたけどこれは凄いな・・・」

「・・・ここはもうアルメスなのですの?驚きですわ・・・」

「お嬢様。私はもう常識が崩壊しそうです。」


 そんな三人に苦笑しつつも急いでアルザードさんの家に戻る。

 通信石で事情は説明していたとしても、心配なのは心配だろうからね。


 屋敷に着くとすぐに出迎えがあった。


「心配したぞ・・・とはいえリョウマがいるから安心もしていたが。」


 そう言って苦笑するアルザードさん。

 僕たちは、アリオスさんとイリーナさん、ケーラさんと別れの挨拶を済ます。


「リョウマ、今回は本当にありがとう。大変だったけど楽しかったよ。」

「リョウマさん。今回の旅は刺激的でしたわ。またお願い致しますわ。」

「お嬢様、少しは自重して下さい。リョウマ様、ほんとうにお世話になりました。」


 僕たちは挨拶を終え帰宅する。

 ああ、そうそう、明日冒険者ギルドに寄って、依頼の達成と報酬貰ってエルマの冒険者登録しなきゃ。

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