第179話 新たな仲間(嫁候補)

 僕達は里に戻ってからまた歓待を受けた。

 そして明日帰る事を伝えると、悲しい顔をされた。

 とはいえ、予定日数ギリギリだからね。

 そろそろ戻らないとヤバいでしょう。


 宴の最中、僕は少し疲れたので、こっそり離れた。

 大騒ぎしているエルフの人達がよく見える場所に移動して座る。


 ケヴィンさんと飲み比べしているアイシャ。

 巫女さん達と嬉しそうに話しているメイちゃん。

 長老達やセルマさんと今後の交易ついて話しているアリオスさん達。


 そんな彼らを見ていると、守れて良かったと心から思える。


 そうしていると、僕に近づいてくる足音が聞こえてきた。

 エルマさんだ。

 

 エルマさんはそのまま僕の横に腰を下ろす。

 エルマさんも同様に宴の様子を見ていた。

 その横顔は篝火に照らされて凄くきれいだった。


「リョウマ様、私達を・・・私を救って頂き本当にありがとうございました。」

「いいよ。したいからしただけだから。」

「うふふ。リョウマ様は本当に・・・」


 エルマさんはそう言って僕の肩にもたれかかって頭を乗せる。

 僕は固まってしまった。


「リョウマ様・・・聞きましたよ。リョウマ様にはお相手がいらっしゃると。」


 桜花の事かな?


「いいえ、リディアさん達の事です。」


 そっちか!!


 エルマさんはそのままこちらを向いて目を合わせて来る。

 顔近い!!

 僕が目を逸らそうとすると、エルマさんは僕の頬に手を当て自分の方を向かせた。


「リョウマ様。好きです。愛しています。どうか私もあなたのお側にいさせて下さい。」

「・・・」

「リョウマ様にお相手の・・・オウカ様?がいらっしゃるのは知っています。でも私もどうしても諦められないのです。アイシャ達と同じで。どうかお認めになって下さい。どうか・・・」


 僕は正直・・・エルマさんが嫌いではない。

 むしろ好きだと思う。

 でも疑問に思っていることもある。


「一つ聞いてもいい?僕はエルマさんの事好きだよ。でもそれは友人としてだと思う。恋愛的に見るには時間が少なすぎる。でも、エルマさんは結婚しても良いと思えるくらい僕の事好きなんでしょう?なんで?どこが良かったの?」


 僕がそう言うと、エルマさんは笑顔で、


「リョウマ様、エルフ族の巫女が精霊と対話できるのはもうお話しましたね?で、精霊は心がきれいな優しい人にしか懐きません。そんな精霊にリョウマさんは愛されています。懐くなんてレベルじゃありません。そして・・・エルフの巫女はそう言った人に惹かれます。私の亡くなった父も精霊に好かれる人でした。私や里を助けてくれた心のきれいな優しい人・・・これで好きになるなという方が無理ですよ。出会ってからの期間は問題じゃありません。」


 そう言った。


 そうか〜僕には精霊全然見えないけど愛されてるのか〜。

 僕にも見えればいいのにね〜。

 見えないんじゃ実感わかないっていうか〜。


 ・・・現実逃避はこのへんにしとこう。

 

「・・・エルマさん。僕はね。仁義にもとる事はしたくない。でもね、リディア達やリディア達のお父さんの想いを聞いたんだ。こんな僕でも好きになってくれるって、大切にしてあげてほしいって。だから、逃げないよ。結婚する約束はできないし、そういう行為もしない。エルマさんの事を恋愛的に好きになるって確約もできない。でもみんなのように桜花に直談判したいってのがエルマさんのしたいことなら僕はもう止めない。・・・最悪、僕が桜花に叱られるか愛想をつかれるだけで済むからね。それでも良いなら・・・」


 僕がそこまで言った所でエルマさんは飛びついてきた


「リョウマ様ありがとうございます。嬉しいです。きっと好きにさせて見せます。オウカ様に認められるよう頑張ります。これからも一緒にいさせて下さいね。」


 ん?これからも?


「はい。私は里を出ます。母も長老からも許可を頂いています。アイシャ達も了承してくれました。仲間にして下さい。」


 ・・・そこまで根回ししてたのか。

 僕は苦笑してエルマさんの頭をポンポンする。


「・・・なら、最初にするのは僕の名前を様付け無しで呼んで、普通に話すことだね。」


 そう言うと、エルマさんは嬉しそうに笑って、その後少し考えてから、


「わかりました。・・・いえ、わかったわ。これからはリョウマくんって呼ぶわね。私の事も呼び捨てで。よろしくねリョウマくん。」


 そう言ってまた抱きついてきた。

 ・・・はぁ。

 ごめん桜花・・・僕多分君に殺される気がする・・・

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