第181話 それぞれの日常へ

side アリオス


 俺は今、父と母に今回の顛末を話している。


「そうか・・・では今後エルフ族との交易や文化交流があるのだな。・・・リョウマが来てから驚きの連続だ。まさかあの閉鎖的なエルフと交易することになるとは・・・」

「それどころかエルフの嫁候補を連れて来てるからね。リディアも大変だよ。」

「まったくだな。」

「でもリョウマちゃんなら仕方がないんじゃないかしらぁ?だってリョウマちゃんだもの。」

 

 そう言う母に俺も父も納得してしまった。


「エヴァンスの娘も満足したようだな。ずいぶん仲も良くなったように見えたが。」


 まあ、死線を一緒に乗り越えたからな。


「これでメイビスも安泰ねぇ・・・まったく、アゼルちゃんももう少し謙虚な一面があれば・・・」


 母が悲しそうに言う。

 兄貴・・・俺はメイビスを守るから安心しろよ。

 だから父や母に謝る言葉をしっかりと考えておけよ。


side メイ


『ってことで、また嫁候補が増えたぞ。』


 お姉ちゃんがリディアお姉ちゃんに報告中です。


『まったく・・・リョウマさんは少し目を離すと、女の子を引っ掛けて来るのですから・・・しかもあのエルフ族とは・・・もう少し自重してくれないかしら。』


 リディアお姉ちゃんが呆れてそう言う。


『しかし、エルフ族と仲良くなるとは流石リョウマだな。アイシャ、そのエルマという女は良い人か?』


 グレイスお姉さんがそう言うと、お姉ちゃんが、


『まあ、ぶっちゃけると良いやつだぜ。あたしは気に入った。筋も通すし心も強いからな!根性もあるし上手くやっていけそうだ・・・母親はくせもんだがな。』


 そうです。

 あの人はどさくさにまぎれてリョウマお兄ちゃんにキスしました。

 ずるいです!!


『でも、そのセルマさん?はリョウマさんにキスしたのですよね?今度お仕置きで上書きしなきゃ・・・』


 シエイラお姉ちゃん!?


『いえ、お嬢様、そこは使用人であるこのわたくしにおまかせ下さい。セルマという方を忘れさせるくらい頑張ってみせましょう。』


 ルーさん・・・ルーさんはセルマさんとおんなじ感じがするのです。


『ルーさん・・・駄目ですよ!あなたの目的はリョウマさんの身体でしょう!認められません!!』

『な・何故わかったのでしょうか!?』

『『わかるわ!!』』


 みんなの声を聞いていると楽しくなってくる。

 早くみんなでこのホームに住みたいなぁ・・・


『メイちゃんもなんとか言ってあげて下さい!!』


 そんなリディアお姉さんの声を聞きながらそう思うのでした。



side エルマ


「ここが冒険者ギルドだよ。」


 リョウマくんに連れられて冒険者ギルドに来ました。

 へぇ・・・ここが・・・


 何故二人で来たかというと、それは昨日に遡ります。

 昨日、アルメスに来てアリオス様達と別れた後、リョウマくん達の拠点のホームと呼ばれる所に来ました。


 珍しい建物で、木造な所はエルフである私には安らぎが持てます。

 一部屋頂いて、和室を選択して荷物を置いた後、一通り設備の説明を受け、その凄まじさに驚き疲れていた所、アイシャが、私とリョウマくんに冒険者ギルドに行きがてらデートするのを勧めてきました。

 理由は、リディアさん達への報告を引き受けてくれて、私の事を話して根回ししてくれるためでした。

 それに、街を案内してもらったらどうかとの提案も受けました。

 私は嬉しくなってアイシャに抱きつくと、アイシャは照れながら、


「まあ、仲間だからな。」


と言いました。


 この人達はみんな本当に優しい・・・来てよかった。


 という事があって二人で来たのです。


 室内は人族で溢れていました。

 みんなエルフ族である私をジロジロと見てくるわね。

 珍しいからね・・・でも嫌だわ・・・


 そう思っていたら、リョウマくんが突然魔力を高めて圧力をかけはじめました。

 なんだろうと思っていると、


「この人は僕の仲間だ。そんなに不躾に見るのは失礼だろ。僕は仲間が嫌な思いをするのは許せない。容赦もしない。敵対してもいい奴は好きにしろ。」


 そう言い放ちました。

 すると、ほとんどの人は目を逸らしました。


 はぁ・・・やっぱり優しい・・・私が嫌な気分になってるのに気づいてくれたんだ。

 好きだなぁ・・・


「リョウマ。その辺りにしてやってくれないか。お前たちもいい加減見るのをやめろ!失礼にもほどがあるぞ!」


 そうしていると、奥から一人の男の人が出てきました。

 リョウマさんがギルマスって言ってます。

 偉い人のようです。


「・・・てことで、メイちゃんと同じランクに出来ないですか?試験は受けますよ?」


 リョウマさんがそう言うと、ギルマスは、


「馬鹿言え。そこまでの権限は俺にはない。でも、お前の事だから無理なら王都のギルドに行くのだろう?ここでギルマスに断られたと言って。」

「そうですね。」

「はぁ〜・・・なら俺がやっておく。ただし、お前の時と同じBランクからだ。どうせその子も強いんだろう?」

「わかりました。ええ強いですよ。ありがとうございます。」

「かまわん。優秀な冒険者はいくら居ても構わないからな。お前のパーティーに入るのか?」

「ええ。」

「なら尚更だ。王都の本部もお前の実力はわかっている。敵対しようとする奴はもういないだろうからな。」


 そう言って苦笑して去っていった。


 「さて、じゃあ色々案内するから行こう!」


 リョウマくんが笑顔でそう言います。

 リョウマくん・・・私も頑張って強くなるからね!

 ずっと一緒にいられるよう頑張るから!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る