第158話 規格外2 sideフィル
私は絶望を覚えたまま訓練所中央に向かう。
このアイシャという子もあの男の子と同レベルの強さであれば、私では逆立ちしたって勝てない。
中央に着くと、アイシャさんが話しかけてきた。
「なんだか顔色悪いがどうしたんだ?」
「いや・・・君も彼と同じくらい強いのか?」
「いいや。あたしはリョウマ程強くねぇよ。なんだ、ビビったのか?安心しなよ。リョウマは優しいからちゃんと話をすれば戦わなくてもいいと思うぜ。それにあんたはさっき、リョウマがあたしを軽んじていると思って言ってくれたんだろ?そりゃ勘違いだぜ。あれはさっきのベンとか言う男に怒ってぶっ飛ばす為にあえてああ言っただけさ。本当のリョウマはとても優しいんだ。」
アイシャさんが嬉しそうに言う。
ああ、そうか。
この子はあのリョウマという子の事が好きなのだな。
なら、後であの子には謝るとして、まずはこの子に向き合おう。
「わかった。後であの子には謝ろう。そして君も相当強いのはわかる。全力でいかせもらう。」
「ああ、そうこなくっちゃな。」
そして試験が始まった。
ぶつかり合うとよくわかる。
強い・・・
それに、見たことないような技を使う。
魔力を攻撃に乗せて衝撃波として放ったり、空中で方向転換をするとは・・・
驚きの連続だった。
しかし私も伊達でSランクになった訳ではない。
なんとか食らいついていく。
何度か攻撃を受けたがどの攻撃も重い・・・
鎧の上から打撃を受けているが、ダメージは大きい。
逆にこちらの攻撃はかすりはするもののクリーンヒットは無い。
まあ、刃引きの訓練用の剣ではあるものの、切れなければ当たっても良いわけではないしな。
刃引きしていない剣と同様の剣として避けているようだ。
この子は間違いなく私よりも強い・・・
しかし、私もSランクとしての意地がある!
精神統一して私の最高の一撃を!
私は私の異名の元になった技を放つ。
『アマリリス』!
この技は火魔法の「フレイムボム」を遅延魔法を駆使し同時に五発放つもの。
繊細なコントロールと遅延魔法を高いレベルで習熟して作り出した技だ。
アイシャさんに向けてアマリリスが飛ぶ。
アイシャさんは・・・避けない!?
「正面からぶち破ってやるぜ!狼牙爆影脚!!」
アイシャさんがねじり込むように蹴りを放つと、その衝撃波はアマリリスを貫きながら私を飲み込んだ。
ああ・・・ここまでか・・・強かったなぁ・・・
私の意識はそのまま反転した。
気がつけば私は横たわっており目の前にはアイシャさんが。
身体は・・・痛くない?
「怪我はリョウマに治して貰ったぜ。良い勝負だった。また機会があったらやろうぜ!」
笑顔でアイシャさんが言う・・・完敗だ。
私が目でリョウマという冒険者を探すと、近くでギルマスと話していた。
私が顔を向けると、彼もこちらを向く。
「怪我は大丈夫ですか?治しておいたのですが・・・」
「ありがとう。もう大丈夫だ。それとさっきはすまなかった。アイシャさんから聞いたよ。誤解だとね。」
「いえ、こちらももう少し言い方を考えるべきでした。不快な思いをさせて申し訳ない。」
うん。
良い子だった。
私はアイシャさんとリョウマくんと友達になった。
ギルマス達は、リョウマくん達をSランクにするかどうかを考えているようだ。
私からも推薦しておこう・・・私やベンのような被害者をこれ以上ださないためにもね。
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