第156話 規格外 sideフィル
私の名前はフィル。
私の生まれは貴族で、男爵位の父を持つ。
父は厳しい人で、子供は男女問わず剣を教え込まれた。
幸い、私には剣の才能があったようで、父は喜んでいたが、とある貴族に嵌められ、家を取り潰しになることになった。
父は責任を感じてか思い悩みすぎ、心の病を発症させ自殺してしまった。
母はそのこともあってか、病気がちになり、病死してしまった。
兄弟たちはそれぞれバラバラになり、私は生活の為に14歳で冒険者をすることになった。
私は実力もそこそこあったようで、少しずつランクを上げていき、2年前にSランクまで上り詰めた。
仲間にも恵まれて、リーダーの私がSランク、他は皆Aランクで、花弁騎士団というパーティ名は王都では有名になっている。
このパーティ名は、私の異名である『アマリリス』から皆で考えたものだ。
今回、ギルドの幹部の一人が、Sランクを卑怯な手で殺した疑いのある冒険者を、制裁してほしいと依頼をしてきたことから始まった。
このギルド幹部は元々、不正昇格させる噂がある者で、私は好きではないのだが、もし、こいつの言うことが本当であれば許せる話ではない。
見極めるために依頼を受け、ギルドの部屋に来てみると、
「おお?なんだ。アマリリスちゃんじゃないの。相変わらず凛々しいねぇ。」
私の嫌いなSランクの一人である、『格闘王』ベンがいた。
こいつは本当に軽薄で、嫌われ者だ。
だが実力は確かで、私も相対したら必ず勝てるとは言い切れない。
「どう?この後ちょっとお茶でも。なんならお互いスッキリしにいかないか?俺中々うまいぜ?」
「寝言は寝て言え。」
「おおこわ!相変わらずきっついねえ。」
しかし、嫌いなものは嫌いだ。
女性を軽視している男を見ると虫唾が走る。
その後、話しかけてくるベンを無視していると、職員が呼びに来た。
部屋を移動すると、ギルマスと他のギルド幹部がいた。
後、15,6の黒髪の少年と同じ歳ぐらいの獣人の女性がいた。
この子たちが・・・ほんとにゲルムスを倒したのだろうか?
私に依頼した幹部を見ると、明らかに立腹しており、目が血走っている。
何かあったのか?
ベンが何か下品な事を言っている。
私はこの子とベンを戦わせるのは良くないのではと思い、心配して声をかけた。
悪い子達には見えないし。
しかし、ベンの挑発で言った・・・半分は本気だろうが、女の子をよこせというものに対し、この男の子は場合によっては応じるという。
・・・この子も女性を物扱いするのか・・・
私は許せなくなって、私が相対する女の子との戦いの後、ちょっと懲らしめてやろうと思った。
そして、戦いが始まった。
その内容は驚愕だった。
始まってすぐに殴りかかったベンをカウンターで殴り倒す。
ベンの連撃を一撃も当てられず捌き続ける。
「・・・一歩も動いていない・・・?」
私はその事実に気づき恐怖を感じる。
格闘王の異名を持つベンを圧倒する技量。
呆然としていると、男の子と目があった。
・・・目が合う?そんな馬鹿な。
あの子は今戦っている最中なのに・・・よそ見をしながら戦う余裕があるのか!?
ベンが本気をだしていないのかとも一瞬思ったが、ベンの焦りに満ちた表情がそれを否定する。
嘘でしょ・・?
次の瞬間ベンが踵落としを放った。
これは当たる!
そう思った瞬間男の子は躱しざま逆に踵落としを放っていた。
ベンが直撃を受け倒れ込み動かなくなる。
私が呆然としていると男の子はこちらに来た。
そして私を見て、
「じゃあこの後戦うの楽しみにしてますね。」
勝てるわけがない!
私は絶望を感じ震えが止まらなくなった。
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