第154話 人を呪わば穴2つ

「僕の出す条件は2つ。僕とアイシャがそれぞれ指定するSランクと戦います。で、これを昇格試験そのものにして下さい。」

「馬鹿な!何故そうな・・」

「良いだろう。もう一つの条件はなんだ。」

「この人いい加減鬱陶しいんで僕が勝ったらギルドから除籍してくれません?そのかわり僕が負けたらその人のお望み通りギルドを辞めますし、卑怯な手を使ってゲルムスを殺したって証言してもいいですよ。処罰も受けましょう。」

「な・・・・」


 僕がそう言うとこいつは愕然としている。

 しかしギルマスは一つ頷くと、


「よかろう。俺はその条件を飲む。他の幹部で反対の奴はいるか?・・・いないな。おい、お前から言い出した事だ。いいな?」

「そんな・・・」


 こいつはギルマスの言葉に顔を青くして周りをキョロキョロするが、誰も味方しない。

 みんな僕と同じ様に辟易していたんだね。


「よし、それでは続いて冒険者メイのBランク試験の内容だが、Cランク級の魔物三体の単独討伐、もしくはBランク魔物1体の単独討伐をしてもらう。帯同はAランク二人が付く。今からの出発だが良いな?」

「はい。かまいません。お兄ちゃんお姉ちゃん頑張ってね。」


 メイちゃんはそう言って帯同の二人と出ていった。

 さあ、こっちもやろうか。


 Sランク冒険者は既に隣の部屋で待機しているらしい。

 職員が呼びに行くと、ガラの悪そうな大柄の男と、騎士然とした女性が現れた。


 男は僕を見ると、


「おいおい、こんな若造なのかよ。こりゃ簡単に終わっちゃいそうだな。ん?そっちの獣人は中々いい女じゃねぇか。こんなヒョロいガキと組むんじゃなくて俺と来ねぇか?気持ちいい思いもさせてやるぜ?」

「下品。あなたは黙っていろ。しかし、同意見。こんな若く細い子だとはは思わなかった。本当に戦うの?」


 男は遠慮いらなそうだ。

 女の人は心配そうにこっちを見ている。

 この人は良い人そうだ。


 すると、ギルマスが、


「このガラの悪い奴はベン。これでもSランクでゲルムスよリ強い。女の方はフィルという。この二人で試験をする。今からでもいいか?」


「いつでもどうぞ。」


 僕がそう言うと、男は僕を見て、


「へ〜・・・中々肝の座ったガキじゃねぇか。おいお前、もし俺が勝ったらこっちの女俺に譲れ。お前にはもったいない。」


 挑発してきた。

 なら僕も、


「いいですよ。じゃあ僕が勝ったら何してくれるんです?あなたはいらないし・・・そうだ!Bランクに負けました。負け犬ですみませんって書いた看板を首からぶら下げて、3日間位ギルドの入り口に立っててもらおうかな。」


 挑発仕返してやった。

 男は青筋を立ててこちらを睨み、


「・・・調子に乗ってんなぁ・・・軽く終わらせてやろうと思ってたが気が変わった。ボコボコにしてお前の目の前でこの女抱いてやる。指くわえて見てろ。」

「できるならね。そっちも泣かないでよ?大の男が泣くのはかっこ悪いから。」

「この野郎!!」

「やめないか!」


 僕に飛びかかってこようとしたベンをギルマスが叱責して止める。


「リョウマ、そう挑発するな。それにベン、元はお前が悪いんだぞ!もう少し考えろ。そんなんだからお前はSランクなのに評判が悪いんだ。」

「けっ。知らねぇよそんなこと。冒険者なんだから強さが全てだろ?おい、てめぇ逃げるなよ?訓練所で待ってるからよ。逃げてもどこまでも追いかけてやるからな。」


 こちらを睨みつけてから部屋から出ていくベン。

 すると、フィルと呼ばれた女性が、


「・・・ベンは短気だし下品だから嫌いだけど・・・あなたも好きじゃない。女性は物じゃないし景品でもない。あいつと戦って、私がこの獣人の子と戦った後は私も一戦して貰う。身の程を教えて上げる。」


 そう言って部屋から出ていった。

 あちゃー・・・怒らせちゃったか。

 確かに勝手に決めちゃったしあの言い方じゃそうとられるかもな。


「アイシャごめんね。勝手に決めちゃって。それにあの言い方じゃ気分が良くなかったかな?」

「いいぜ別に。どうせリョウマが負けるわけねぇし、あいつにもムカついてたからな。・・・そんかしメイが戻ってくるまでデートしてくれよな!」


 にししと笑うアイシャに苦笑する。

 じゃあ僕たちも訓練所に行きますかね。

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