第153話 昇格試験の行方
試験当日。
僕たちは王都のギルド本部に居た。
リディアに協力してもらって、昨日の内にこっそり転移門を使用して、王都入りして宿を取っていたんだよね。
目の前にはギルドの幹部達が並んでいる。
ほとんどが好意的だけど・・・一人だけ睨んでいるおっさんがいる。
この人は以前、僕がゲルムスを殺した事に腹を立てて文句を言ってきて、僕の冒険者資格を剥奪、罪人にしようとしたことがある。
この人の言い分では、ゲルムスよりも低ランクである僕がゲルムスを殺したのは、何か汚い手を使ったからだと言うもので、当然そんな根も葉もないものが通るわけもなく、本部のギルドマスター直々に訴えを取り下げ、謝罪された。
後からギルマスから事情を聞いた所、ゲルムスのSランク昇格の時に便宜を払った人らしくて、ゲルムスがSランクの力を持っていないのにこの人が不正でゴリ押ししたから昇格できたから、低ランクに倒されてSランクの称号に傷がついたという噂話が横行したため、僕を逆恨みしているらしい。
元々この人はお金を積めば便宜を図ってくれるという噂がある人だったらしくて、噂に歯止めがつかなかったらしく、それが耳に入ったこの人は大激怒。
自分の派閥のAランクを複数引っさげてアルメスのギルドまでやってきた。
文句言ってきたから調査もせずに文句を言うなと反論したら、Aランクをけしかけてきた。
当然軽く撃退したところに不在にしていたアルメスのギルマスが到着。
この人に厳重注意し、本部に苦情の申立てをしたところ、この人はやりすぎたと批判され、半年間の減給処分。
僕を恨んだまま今に至るというわけ。
知ったことではないけどね。
そんな事を思い返していると、本部ギルマスが代表で話をし始めた。
いよいよ試験内容が発表されるのかな。
「さて、よく来てくれた。それではシャノワールのリョウマとアイシャのAランク昇格試験と同じく、メイのBランク昇格試験の内容を発表する。」
「その前に少しよいでしょうか。」
・・・またこいつか。
「なんだ?」
「この冒険者はギルドに所属してから日が浅い。Aランク試験を受けさせるにはまだ早すぎるのではないでしょうか?資質があるとは思えません。ましてやこやつはSランクの殺害疑惑のある・・・」
鬱陶しいなあ・・・なんかずっとくっちゃべってる。
他の幹部の人達も顔を顰めて面倒臭そうにしている。
いいかげん頭に来るなぁ。
僕がそう思っていると、本部のギルマスが、まだくっちゃべっているこいつを手で止めた。
「その話はもう決着がついたはずだ。リョウマのシャノワールはこの数ヶ月で充分評価に値する結果を出している。お前以外の全員が受験に賛成しているだろう。いい加減にしないか。」
怒気をこめてそういうギルマスに、一瞬たじろぐもこいつはまだ噛み付く。
「しかし!今までの慣例上BランクからAランクの昇格には2年以内はいないはずでしょう!なんでこんな若造に試験資格を・・・」
「だから結果が全てだと言っているだろう!それともお前が自身の力で図ってみるか?元Aランクだろう?」
「い・いや、先程言ったとおりこいつにはSランクを卑怯な手で殺害した疑惑がお残っている!だからそれを晴らしてから進めたい!」
「ならばどうしろと言うのだ。」
ギルマスがそう言うと、こいつは顔を嫌らしく歪めて笑い、
「私の推薦するSランクと実際に戦わせて、相当の力があると証明させればいい。」
そう言った。
・・・もういい加減こいつの恨みに付き合うのも飽きたなぁ。
ここで終わらせよう。
「なんだと?しかしだな・・・」
ギルマスが反論しようとしたのを僕は挙手をして止めた。
全員が僕を見る。
「別にそれでいいですよ。戦えば良いんですよね?」
「・・・ああそれでいい。私はそれで納得する。」
「わかりました。ならそれでいいですよ。ただし僕にも条件がある。」
「条件だと?貴様そんなことを言える立場だと・・・」
こいつが身を乗り出して怒鳴ろうとしたところ、ギルマスが止めた。
「条件はなんだ。」
「ギルマス!?」
よし、こいつには退場してもらおう。
ギルマスが条件を飲もうとするのに驚いているこいつを放置して話を進めよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます