第142話 誤算
ふぅ、なんとか封印解除せずに倒れた。
それに、一つ思いついた事もあったしまだ強くなれそうだ。
僕は、大きく息を吐いて脱力する。
ゲルムスは見るまでも無く絶命している。
「なに・・・?何をしている・・・ゲルムス!!早く立て!立たないか!!」
カワキは先ほどとは一転して焦り始めていた。
「もう死んでいるよ。次はあんたの番だ。」
「馬鹿な・・・おのれ!!」
そう言ってカワキは僕に何かを投げつけてきた。
僕はそれを手で振り払おうとして・・・嫌な予感がしたので躱す事にした。
「くそ!それに触っていれば動きを止められたものを!!」
危ない危ない。
宝石の様なそれは、そのままアゼルの気絶している所に転がり落ちた。
「ふーん。なら拾えばいいじゃないか。」
「ふん。そんな暇はない。それに、それには魔力を込めなければ効果はでない。貴様がそんな隙を見せるはずがない。」
まあそりゃそうだよね。
「いい機会だから聞いておく。あんたがメイビスを落とそうとしたのは教会の意向なんだろう?うまくアゼル以外のメイビスを排除してどうするつもりだったんだ?」
すると、カワキは憎々しげに、
「そんなもの決まっているだろう。内心を読み取る危険な『眼』を遠ざけ、現当主とアゼル以外の者を処分すれば、後は、アゼルの思いのままだ。そうすればアゼルは俺をもっと重宝するから、それを上手くコントロールし、教会の意のままにするつもりだった。欲しい物も、女も、権力も、好きに手に入っただろうよ。」
と言った。
ゲスいなぁ・・・こいつはフェイルと違って欲望を増幅されてるわけじゃなさそうだ。
自分で欲深いって言ってたし。
「だが、それも貴様のせいでご破算だ。クソ!どこで狂ったんだ!」
カワキは懐から瓶を取り出した。
「あんたが魔狂薬を飲んでも俺には届かないよ。」
「そんなことはわかっている。だが、飲まなきゃ抵抗すらできないだろう。」
ぐいっとあおって瓶を空にしたカワキから魔力が吹き出す。
「火よ!燃え盛り我が敵を撃ち抜け!『ファイアボール』!」
50センチメートル位の火の玉が僕に飛んできた。
僕は一足飛びで躱した。
足元ではアゼルが倒れ込んでいる。
一応人質に取られたりしないように敢えてそちらに近寄りながら避けたんだ。
まあ、せっかく命を助けたのに、あいつの魔法で巻き込まれて死んだら、アルザードさん達が可哀想だしね。
「そんな程度の魔法で僕に勝てるつもりなの?フェイル司教はもっと強かったよ?」
すると、カワキは目を見開いて、
「フェイルだと?何故貴様が知っている!?奴は、真神を崇める司教の中でも指折りの強さのはずだ!!まさか!?」
「多分そのまさかだよ。だからこそあなたでは届かない。」
カワキはやけくそ気味にファイアボールを連発してきた。
僕は、魔法障壁で魔法を防ぐ。
当然無傷だ。
「クソ!!」
カワキが歯ぎしりしている。
このまま魔力切れを狙って無力化するか。
魔力を練られなくなる封印をしてから尋問するのもありかな。
しかし、その時、その場の誰も予期していない事が起こった。
アゼルが僕にしがみついてきたんだ。
なんだ!?魔力が練れない?
「今だー!!カワキ!!大きいのでこいつを殺せー!!今こいつは動けないんだろ!?」
アゼルの手を見ると、カワキが投げた宝石が!
しまった!!
それを見てカワキはニタリと笑って、魔力を大きく練り込み始めた。
まずい!
「大いなる風の刃よ!我が敵を切り裂きその力を我が眼前に示せ!!・・・・ククク、アゼルありがとよ。お前は最後の最後まで役に立ってくれそうだ。感謝するよ・・・安心しろ。メイビスの名はうまく使ってやる。」
詠唱を終えたカワキが大きく腕を振りかぶる。
くっ!?これはヤバい!!
「何を言って・・・」
アゼルがきょとんとしている。
カワキはそのまま腕を振り下ろした。
「『エアスラッシュ』」
風の刃が僕たちに放たれた。
その軌道上にはアゼルも・・・
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