第110話 朝が来て(1)
日の出を迎えてホッと一息。
夜間中、気配察知に二回くらい引っかかった、レッドボアという猪形の魔物を倒した位で他には何もなかった。
当然、みんなに気づかれないよう、離れている間に忍び寄って、こっそりと倒したんだけど、流石に捌くと血の匂いで他の魔物が寄ってくる可能性があったので、ストレージに入れておいた。
これは今日の夕飯にしよう。
僕は例によってストレージから水瓶を出しておく。
そして、先に顔を洗わせて貰って、うがいをしていると、アイシャが起きてきた。
「おはよう。」
「おう、リョウマもおはようさん。」
挨拶を返してくれたアイシャに水瓶があるよと教えてあげると、首を傾げている。
ああ、リディア達と一緒か。
僕は、メイちゃんが起きてくるのを待って、ストレージの事を教えると説明した。
全員起きてきて、朝食を取る。
「メイちゃん、もう体調はいいかな?」
「はい!病気にかかってから一番良いです!」
うんうん、笑顔が輝いてるね。
「それで、リョウマ、昨日の続きだけどよ・・・」
「そうですね。私も気になっていました。」
アイシャとリディアが聞いてくる。
ふむ。
僕は気配察知で周囲に人が居ないか確認した。
よし、半径100メートル以内には人はいないな。
動物なんかもOKだね。
「その前に、アイシャ、昨日言ってたことなんだけど、覚悟はどう?」
僕がそう言うと、アイシャは、
「そうだった。確認だが、リディアとグレイスは知ってんのか?」
「いいえ、昨日の内容は知りません。ですが、私達はリョウマさんの事情を知っていますので、なんとなく想像は付きます。」
「そうだな。」
アイシャの問いにリディアとグレイスが答える。
「そうか・・・じゃあメイ、昨日リョウマがお前の症状を押さえてくれたのは覚えてっか?」
アイシャがメイちゃんにそう聞くと、メイちゃんは、
「うん・・・なんとなくだけど覚えている・・・と思う。メイが薬を割っちゃったんだよね?あれ?じゃあどうやってリョウマお兄さんは症状を押さえてくれたの?」
不思議そうにしている。
「今からそれについて教えてくれんだけどよ、リョウマは病気の事で、なにかに気づいたらしくてな。でも、その事について知るのは危険なんだとよ。だから、全部を知りてえなら、覚悟を決める必要がある。命を狙われる覚悟を。」
アイシャは真剣な顔をしてメイちゃんに聞く。
「メイ。あたしは知りたいと思ってる。でも、知ることでお前にまで危険な目に逢わせたくないとも思ってんだ。だから・・・お前がどうしたいかで決めるつもりだ。」
メイちゃんは少しの間アイシャの顔をじっと見つめていた。
そして・・・
「お姉ちゃん。メイはね、この病気の事でずっとお姉ちゃんに迷惑をかけてきた。バルムスでも、お姉ちゃんに身体まで張らせそうにそうになった。でもね、もうそんなの嫌だし・・・お姉ちゃんの負担になりたくない!!だから知りたい!たとえ命を失っても!」
涙ながらに叫んだ。
うん、良い覚悟だね。
なら教えようかな・・・もう心配する必要も無いことも合わせてね。
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