第89話 冒険者ギルド(7)

 試験官の人は木剣を振りかぶってきた。

 え〜、隙だらけじゃん。


「隙だらけですよ。」


 本気見てみたいし、まずは手加減。


 僕は両手で双掌打を打つ。

 どちらかというと、ダメージよりも飛ばすの重視で。


 試験官は5メートル位吹っ飛んだ。


 そして、すぐに立ち上がる。

 まあそりゃそうだよね。

 ダメージ少なくなるように打ったし。


 試験官は、ようやく顔を引き締めた。

 やれやれ、ようやく本気かな。


 僕は、木剣を構える。


 正眼の構え。


 相手はジリジリと近寄って来た。

 そして、大剣の間合いに入った瞬間、一歩踏み込んで、左から右に横薙ぎにしてきた。


 僕は一歩下がってそれを空振りさせる。


 そして、振り終わりに、さらに試験官に一歩大きく踏み込んで、懐に飛び込みそのまま突きを放つ。

 試験官は、胸に放たれた突きを身体を捻って躱そうとした。


 甘い。


 廻里流剣術の突きは拳一個分伸びる。

 特殊な捻りを加えた突きが、試験官の左肩付け根くらいに当たった。


 試験官は、顔を顰めながらも、右手に持った大剣を切り返して、今度は右から左に横薙ぎにしてくる。


 僕は自分の左手側からくる大剣を、切上げで跳ね上げた。

 そして返しざまに切り下ろし。


 これも相手の肩にヒットした。


 すると、相手は歯を食いしばった状態で、痛みに耐えながら、右足で前蹴りを放ってきた。


 ふーん、流石は高ランク。

 結構痛いと思うけど、これくらいじゃ攻めは切れないか。


 廻里流剣術『刃流し』


 僕は前蹴りを剣に見立てて、蹴り足の下を、木剣を横に滑らせながらくぐるように接近し、逆側の足の脛をすれ違いざまに横薙ぎにした。


「ぐあっ!?」 


 試験官は、前のめりになったが耐えている。

 当たった感触的に脚甲か何かしているんだろ。


 僕はまた正眼に構える。


「お前・・・何者だ?本当に新人なのか?」


 試験官がそう言う。


「そうですよ。」

 

 それを聞いて、試験官は汗を額から流しながら、


「本当かよ・・・こりゃ、きつい。」


 そう呟いた。


 すると、ギルマスが、


「何をやっているんだ!冗談じゃないぞ!!ドレン!魔法を使え!!」


 何やら喚いている。


 うるさいなあ・・・ごちゃごちゃ言うくらいなら自分が戦えばいいのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る