第87話 冒険者ギルド(4)

「わかりました。」

「わかっていただけましたか!?」


 リディアの返事にギルマスは身を乗り出した。


「ええ、あなたの立場はわかりました。それでは試験をすると言うのはどうでしょう?と、言っても私達にもそれほど時間に余裕がありません。ですので・・・このギルドで、一番強い者と戦って力量を見るというのはいかがですか?」


 そうリディアが言った瞬間、ギルマスが、笑顔で、


「はい、はい!それで行きましょう!話がわかる方で良かった!では、明らかに力量が満たないとギルドが判断した場合は、申し訳ありませんが見合わせということで!」


 明らかにホッとしてそう言う。

 これ絶対そうだ・・・面倒くさいだけだ。


「・・・ところで、そちらの要求を飲んだのですから、こちらの要求も飲んで頂けるのですよね?」


 リディアがそう言うと、ギルマスは首を傾げながら、


「と、言われますと?」


「本来必要の無い試験をする上に、形上、私達の見る目が無いという事に成っています。」


「そ・・・それは・・・」

 

「しかし、それはあなたの立場も考慮して、こちらが譲歩し、異議申し立てもしないと言っています。」


「は・・・はい・・・」


「ですから、もし、その試験官にリョウマさんが勝った時には、ランクをCランクにして下さい。たしか、ギルドマスター権限で、Cランクまでの昇格、は認められているのでしたよね?」


 リディアがそう言うと、ギルマスは顔を青くして、


「・・・はい。可能ではあります。ありますが・・・」


「であれば問題ないでしょう。先程も言いましたがこれはあくまでも、【勝てば】の話ですよ。それもこのギルドで一番強い者に。普通に考えて、新人が勝てるものなのでしょうか?」


「いえ、それは無理だと思います。」


「でしょう!であれば、万が一勝った時のご褒美としてそれくらいはなければ・・・先にも申し上げたとおり、本来はやらなくても良いことなのですから。」


 ギルマスはそう言われ、何かを考えていたが、おずおずと、


「ちなみに「ちなみに!」」


 何かを言いかけたけど、被せ気味にリディアが、


「ちなみに、もし要求を飲めないのであれば、私は正式にギルド本部に苦情を申し立てます。試験をしなくてもそれは同じです。」


「そんな!!」


「勘違いなさらないで下さい。先程も言いましたが、本来必要の無いことを強要しようとしたのです。それも、公爵家と伯爵家の推薦がある者の見極めを。非がどちらにあるか・・・本部に問い合わせてみましょうか?」


「いえ!・・・わかりました・・・」


 ギルマスは既に顔面蒼白である。

  

 リディアはこちらを向いてぺろりと舌を出してウィンクしてきた。


 あら可愛い・・・そして怖っわー。

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