第54話 ゾルディア商会での攻防(3)side リディア


 今、リョウマさんからの合図と念話がありました。


 私とジラート卿の領軍兵が、リョウマさんの開けた横穴から突入します。


 私とグレイスは、正面出入口を固めていました。


 まずは、領軍兵が内部の敵を削る、そうすると、おそらく魔狂薬を使用した敵が出てくるはずです。


 領軍兵は、魔狂薬を使用の敵が来たら、撤退する指示が出ています。


 リョウマさんの予想が正しければ、ゾルドは自己顕示欲が強い下衆なので、優勢であれば姿を現し、こちらを見下してくるはずだと言っていました。


 私達の仕事はそれからです。


 少しすると、領軍兵が押されて建物から出てきました。


 その後からは、様子がおかしい男達が何人も出てきます。


 その様子は皆、目は釣り上がり、獣のように唸り声を上げ、よだれを垂らしています。


 ・・・おそらく中毒の末期なのでしょう。


 領軍兵と交戦していますが、動きが早く、突き出してきた槍を掴んで、領軍兵の体ごと振り回したりしています。


 おそろしい・・・私は体の震えが止められませんでした。


 その時、グレイスが、私の前に出て振り返り、笑顔で、


「姫様、今のお気持ちを忘れずに。そして、リョウマから教わった魔力の運用法を思い出して下さい。大丈夫。あなたは強い。それに私もいます。そして・・・リョウマと共にいようと決意したのでしょう?この程度で怖気づいてはいけません。彼の隣にいるつもりなら。この程度の苦難は軽々と乗り越えて、今のお気持ちを思い出してください。きっと今よりも強くなったと実感できるでしょう。」


 と言った。


 ふう・・・流石お姉ちゃんです。


 そうですね。私は決めたのです。


 彼と共に未来を歩くと。


 ここでへこたれていては、大きな使命を持った、彼と共に歩む資格はありません。


 気合づけにパン!!と両頬に平手打ちをします。


「そうですね。これくらいは危機でもなんでもありません。打ち払ってみせましょう。」


 そう声に出して勇気づけます。


 すると、魔狂薬を使用した者・・・魔狂兵とでもいいましょうか。


 魔狂兵が一人が、こちらに飛びかかって来ようとしました。


 私はすかさず、


 『巨石よ、我が敵を打ち倒せ、ロックシュート』


土魔法ロックシュートを唱えます。


 本来、このロックシュートは、私が両手で抱えられるくらい・・・リョウマさんは直径?30センチくらい?と言っていましたが、それくらいの石の塊を飛ばす魔法です。


 しかし、リョウマさんから指南を受けた今、大きさが私の半身・・・倍以上の大きさの岩を飛ばせるようになりました。


 私の魔法が直撃した魔狂兵は、吹っ飛んでいきました。


 意識があるようで、起き上がろうとしていましたが、全身の骨が砕けているのか、立ち上がれないようでした。


 よし、私も戦える!もう足手まといにはならない!


 私は自分の力を確認して、次の敵に向けて魔法を詠唱するのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る