第53話 ゾルディア商会での攻防(2)


 いい加減、我慢の限界だ。

 

 僕は遠隔で、侵入した時の壁に、仕込んだ爆発魔法:ボムを発動させた。


 威力はだいぶ落ちるけど、侵入経路確保のために、壁に穴を空ける程度なら問題ない。


 すると、次の瞬間、轟音が鳴り響いた。


「なんだ!?」

「む!?」


 ゾルドとフェイルが叫ぶ。


 騎士二人とゾルドの護衛が、警戒して剣を抜いた。


 すると、男が飛び込んできて、


「ゾルド様!敵襲です!ジラートと五剣姫達が襲撃してきました!」


と、叫んだ。


 それを聞いた二人は、驚愕して、狼狽している。


 そりゃそうだろうね。


 何せ、絶対に逆らえないはずの伯爵が、絶対に解けないはずの洗脳を解かない限り、襲撃してくることはありえないはずだったのだから。


「何!?そんな馬鹿な!?ジラートは指輪をしているはずだし、あの指輪は外せないはずだ!フェイル司教!どうなっているのですか!?」


「わからん!あの指輪には、我らが神の祝福がかけられているはずだ!今まで一度だって正気に戻った者はいない!」


「しかし、現に攻めてきておりますぞ!どうしますか!?」


「どうするもこうするもない!襲撃者はすべて消せ!!薬を投与した者を前線にだせばどうということはないはずだ!私達の存在が明るみに出ることはまずい。まずは教会に避難する!」


「わかりました!」


 そう言って、フェイル達は隠し通路を起動させ、教会に戻っていった。


 僕も一緒にね。


 逃がすわけがない。


 ゾルドは、もう少しこの部屋に残るようだ。


 みんな、ゾルドはまかせたよ。


 リディアと、グレイスは、教えた事をしっかり思い出せば、負けることはないはずだ。


 頑張ってね。

 

 僕は、念話で状況を簡潔にリディアに伝えた後、気合を入れる。


 こっちは・・・きっちり地獄を見せてやる!

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