第38話 廻里 桜花 (13)

「龍馬くんを悪くいわないで」


 そう、桜花ちゃんがきつめに言うと、最初は呆然としていた例の男どもの一人が、


「俺たちを殴った三上と友達になるなんて信じられねぇ。俺達とどっちが大事なんだ!!」


と叫んだ。


 便乗して、同じグループの奴らも言ってる。

    

 おい、こっちはお前らが殴りかかってきて、やめないから仕方なくやったんだぞ、と思っていると桜花は、

   

   ダン!!

 

と足を踏み鳴らし、周りが静かになったあと、


「あなた達、私の友達だという割に、お見舞いの一つも来なかったじゃないの。それに、肝心の事件の時に、先に手を出してたのはあなた達のほうでしょう?それなのに嘘をついて、私を騙して謝罪もない。それに比べて、嫌われてるはずの相手の家まで来て、被害者なのにきちんと謝罪をした上で、お見舞いをしてくれた龍馬くんと、どちらを大切に扱えと言ったの!ふざけないで!!」


と凄んだ。

   

 そうまさに凄んだのだ。

    

 その眼力に射貫かれた人達が、その迫力で口が開けなくなるくらいに。

   

「今はあなたたちはまだ敵じゃない、と私は思っている。でも、もし今後も龍馬くんにちょっかいかけたり、悪く言ってるのが聞こえてきたら・・・私はあなたたちの敵になる。一応言っておくけど、私は昨日、龍馬くんとわだかまりを無くすために試合をしたわ。強さとしては私と龍馬くんは同じくらいよ。もし、狙ってくるなら容赦は一切しない。肝に銘じておきなさい。」


 そう言ってこちらに向き直った。

 ウヒー怖えー。

   

 いてっ!?

 小突かれた!?


「あなた何他人事みたいな顔してるのよ。

 あなたの友達に何かあったら、あなたはどうするの?」

   

 そんなの決まっている。

   

「千倍返し」

   

と言いながら奴らを睨むと、奴らは目を伏せ震え上がっていた。


「よく出来ました。」


と言って頭を撫でられる。


 だから子供か!!


「ということよ。わかった?龍馬くんにも私にもいらぬちょっかいかけないようにね・・お互いのためにも。」


 そう言ってこちらに完全に意識を向けた。


 僕の視界には、バツが悪そうに、桜花ちゃんの席から離れる元友達たち。


「さて龍馬くん。」

   

「ん?何」

 

 桜花ちゃんは笑顔で僕にこう言った。


「プリントにあった、今日の一時間目の宿題はやってきたかな?」


 僕はビシッと固まった・・・やってない・・・忘れてた。


 それを聞いた桜花ちゃんは、一瞬で目を吊り上げて、

  

「ちゃんとやりなさい!ほらさっさとやる!」


と耳を引っ張ってきた。


 ううう・・前より酷いかも・・・


「何か言った?前より酷いと聞こえた気がしたけど」


 いいえ言ってません。

 思っただけです。

 なんでわかるの・・・


「それと、お父さんがあなたのこと凄く気に入ったみたい。うちで剣術やってみない?昨日の動きだときっと剣も強くなれるわ。」


「いっ!?いや〜それはちょっと・・・」


 すると、桜花ちゃんは顔をさすり、

「あ〜、昨日お風呂入る時、腫れたところしみて痛かったな〜」


「ううう・・・わかったよ。親に相談してみる・・・・」

  

というと桜花ちゃんは「よし!!さあ宿題やるわよ!!」と超いい笑顔で言った。

  

 とほほ・・・


 こうして、僕と桜花ちゃんはその後一緒に過ごしていき・・・高校に入学をして・・・少ししてから付き合うことになったんだ。

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