第35話 廻里 桜花 (11)

「いてて・・・」

   

 僕がそうつぶやきながら玄関から出ようとすると、

  

「何よ・・・私だって痛いんだからね。」

   

と廻里さん。


 そりゃそうだろうけどさ。

   

 まあ、そんな腫れが残るような打ち方はしなかったからいいと思うけど・・

   

「女の子の顔を遠慮なく撃ち抜けるとかどんな外道よ。」

   

 だから撃ち抜いてはいないってば。

   

「ふふ・・わかってるわよ。それよりごめんね色々と。許してくれる?」

   

「いいよ。気にしてないから。それより明日から学校おいでよ。みんな心配してると思うよ。」

   

「心配・・・ね。まあそれはいいわ。そうね明日からは通学するわ。」

   

 ふう・・これでひとまず元通りかな。


 そう思っていると、

   

「そうそう、私も顔を殴られた事を許してあげるから、一つ言うこと聞いてくれる?」

    

 だから殴ってはないって・・・ないよね?にしても言うこと聞く・・出来ることなら、うん・・・

   

「そんなに心配そうな顔しなくても無茶は言わないわよ。私と友達になってほしいの。」

    

 友達ですと?・・・別にいいけど。

   

「よし!言質とった!!これで遠慮なく注意できるわね!!」

    

 !?

 なんですと!?

   

「ふふふ・・品行方正にしてなかったら、遠慮なく正してあげるから、感謝しなさい!」    

    

 まじか・・・

   

「なんで嫌そうな顔してるのよ。いいじゃないこんな可愛い女の子に構ってもらえるんだから。」

   

「そりゃ廻里さんが可愛いのは認めるけどさぁ・・素直に喜べない。」

    

 僕がそういうと、廻里さんは顔を真っ赤にして、

   

「!?認めるってあなた・・・はぁまあいいわ。それから友達になったのなら私のことは桜花って呼びなさい。仲のいい子はみんなそう呼んでいるから。」

   

「え!?・・・桜花・・さん「桜花!」」

   

「・・桜花ちゃん「桜花!」勘弁して!いきなり呼び捨てはハードル高い!」

   

「仕方がないわね。ちゃん付けで許してあげるわ。私も龍馬くんって呼ぶね。」

  

 ・・・はあ。まあいいか。

   

 僕は親父さんに向き直って、頭を下げながら、

   

「本日は娘さんに痛い思いをさせて、申し訳ありませんでした。」

   

と謝罪した。

  

 すると親父さんは、

   

「気にしなくて良いよ。桜花の迷いも晴れたようだしな。これからも遊びに来ると良い。」

  

と言ってくれた。

   

「そうね。遊びにいらっしゃい。」

   

 母親のすみれさんもそう言ってくれたので一安心だ。

   

「それじゃ帰宅します。失礼します。」

  

 そう言って背を向けると、桜花ちゃんが、

   

「また明日学校でね!」

   

と言ってくれた。


 うん、また明日!

   

 そうして僕は桜花ちゃんちを後にした。





その後の廻里邸での会話

父「中々しっかりとした男の子じゃないか。」

母「そうね。それに被害者なのに、桜花が立ち直るまで付き合ってくれたし、とても 優しい子よ。桜花、龍馬くんと付き合うの?」

娘「!?何言ってんのお母さん!今日友達になったばかりよ!まだ早いし」

父「まだ・・・か。彼ならまあ認めよう。」

娘「お父さんまで!?」

母「だってあの子絶対モテるわよ?子供にはわかりにくいけどとても良い物件ね。早いところで唾つけとかないと。大人になるにつれて周りに女の子が増えていくわ。多分ね。実際桜花だって嫌いだったらしいけど今は好きでしょ?」

娘「まだ好きじゃない!!・・・と思う。多分もう嫌えないけど。」

母「そりゃそうよ。他の子みたいに口だけじゃないもの。それに、自分が嫌われてるのがわかっている相手のところまで来て、立ち直る手伝いまでしてくれたのよ?体まで張って。凄く優しい子。」

父「なかなかできることじゃない。それに、あそこまで強くなるのには、ひたむきな努力が必要だ。心も強いだろう。もし不測の事態が起きた時でも、彼はしっかりと受け止め生きるための努力ができるだろうな。あれでまだ中2なのだろう?たいしたものだ」

娘「・・・・わかってるもん。優しいのくらい。心の強さもまあ・・・今日よくわかったから」

母「それに可愛いし」

娘「それは納得できない!!」

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