第34話 廻里 桜花 (10)
廻里さんは、僕の目をじっと見ながら、動きを止めている。
どれくらい経っただろうか・・・廻里さんがぽつりと、
「私が強くなりたいと思ったのは、最初はお父さんに憧れて・・そして物心ついてからは・・・間違ったことは間違っていると言える強さが欲しかったから・・・」
「そう。それはとても良いと思うよ。僕はね、自分で考えたことを貫き通したいから強くなろうと思ったんだ。人からの意見は勿論聞くよ。でも強制されたり自分を曲げてまで、他人に合わせたりはしたくない。僕から見ても君は強いよ。でもね、今、君が振るってる竹刀に君の信念は乗ってるの?」
「・・・そっか。そうだね。私は今むしゃくしゃしたまま竹刀を振るってただけ。ただの八つ当たりだ。こんな剣じゃしっかりと信念持って戦っているあなたには当たらないよね。・・・やっとわかった。」
そう言うと、廻里さんは、親父さんと向き合い礼をしながら、
「お父さんは初めから・・・そう、最初に私が自分から逃げた日から、ずっと私に自分と向き合えって教えてくれてた。他に何も言わずにずっと正解だけ教えてくれてた。・・・ごめんなさい。こんなに時間かかっちゃって。ようやく理解できた。私逃げてたんだって。」
そう言われた親父さんは、初めて廻里さんに笑顔を向けて、
「よし。気づけたならそれでよい。その気持ちを忘れないように。人間は必ず間違える。それは仕方がないことだ。だが、その後間違いを正さなければ、また繰り返す。今の桜花ならわかるな?」
「はい。私が間違っていました。認めたくなくて人のせいにして・・・目が曇っていました。信じるのは自分の目で見たこと、経験したこと、そして・・・ちゃんと相手を見ること。」
礼をときなら、廻里さんはそう言うと、こちらに向き直って頭を下げながら、
「私が間違っていました。あなたの言うこともきちんと聞くべきでした。先日の件も含めて謝ります。ごめんなさい。」
と言った。
僕は、
「いいよ。僕も腹が立って嫌味を言っちゃったからね。ごめんなさい。」
と頭を下げた。
すると彼女は、
「はい。謝罪を受け取りました。じゃあ続きをやろうか。」
と笑顔で言った。
え!?
まだやるの?
僕もう疲れたんだけど・・
「勿論。ずっと負け続けで悔しいじゃない。一本取るまでやめないよ?女の子をこれだけボコボコにしたんだから当然聞いてくれるよね」
と凄くいい笑顔でそういった。
くっ!!それを言われると・・・・
「さあ!一本取るよ!!」
そう言って構えをとる廻里さん。
うわっ・・・隙がなくなってる・・こりゃきついなあ
そこから一本取られるのには、そう時間はかかりませんでした・・・やっぱ強いやこの子。
「もう一本!!」
その後何度も道場の中に竹刀の音が響き渡りましたとさ・・・・とほほ
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