28 白い少女
生き返らせる方法を知っている?
これから情報を集めようと思ってたけど、いきなりとんでもない当たりが飛び込んできた。
なんて幸運だ! ありがとうクロエさん! ありがとう王都!
やっぱり俺達が、世界の、物語の中心だ!
俺達のハッピーエンドは、約束されたものなんだ!
「ほ、本当!? どうやったら!? どこで、ルミスを生き返らせることができるんだ!?」
俺は慌てて少女の肩を掴む。
興奮して少し力を入れてしまったが、特に痛みは感じていないようだ。
「えぇ、勿論教えてあげるわ。でもその前に、ルミスさんを少しだけ私に貸してちょうだい?」
普通ならルミスは絶対に他人に渡さない。
だけど、早く情報が欲しかったのと、先ほどまでのやり取りで少女を信頼していたことから、迷いながらも
何かルミスが嫌がることをしたら、即刻首を刎ねる。
そう思って
「え!?」
少女が、ルミスを抱きしめたのだ。
愛おしそうに、少女がルミスの髪を撫でる姿は、なんだかいけないものを見ている気分になった。
こ、これは……まさかっ!
あれか……? ゆ、百合?
俺は自分の顔が赤くなってるのが分かり、なんとか心臓を落ち着けようとする。
「あら? 魂はまだ消えていない……凄いわ、よっぽど未練があったのかしら。いえ、これは……そうね、うふふふ。どうやら無理やりに縛られているのね。あぁ、愛の力って本当に素晴らしいわ。でも流石に時間が経ちすぎて……大分弱っているわね」
少女が何か言っているが、いまいち耳に入ってこない。
俺が落ち着く前に、少女は
「うふふ、どうぞ。あのね、生き返らせるの、少し急いだほうがいいと思うわ。じゃないと、流石にルミスさんの魂が消えちゃいそう……一度魂が消えるとね、永遠に生き返らないの」
”永遠に生き返らない”
その言葉に焦った俺は、再度少女に詰め寄る。
「な、なら早く! 早く方法を教えてくれよ!」
特に隠す情報でも無かったのか、少女は簡単に教えてくれた。
「うふふ、”不思議なダンジョン”に行ってみるといいわ。あそこの最深部にね、あるのよ、”復活の神薬”が」
「復活の神薬って、本物? 前、偽物を掴まされた……というか、掴んだ時があって……」
「えぇ、本物よ。間違いなく、神様が作った本物のスクロール。でも大丈夫? 不思議なダンジョンはアフラシア最難関のダンジョンよ。その最深部は未踏の地。あなた、たどり着けるかしら?」
「あぁ、問題ないよ。俺、自分の力にだけは自信があるから。情報、本当にありがとう。仲間と合流したら、そのダンジョンに行ってみるよ」
最悪
早く、早くいきたい。ヘドロ、早く戻ってこい。
「うふふ、それなら良かったわ。でも、不思議なダンジョンに行くのは明日にしなさい。今日はぐっすり休んで、体調を整えるといいわ」
俺が何日も寝ていないことが分かったんだろうか。
優しい少女の提案に、俺は首を横に振る。
本物の神薬の在処が分かった今、興奮して眠ることなんてできやしない。
「折角だけど、今日からダンジョンに行ってみるよ。俺はルミスのためなら、何年もぶっ通しで戦える」
これに、少女は初めて驚いた顔を見せた。
「……え? あれ? ……うふ、うふふ、あなた、本当に面白いわね……あら、来たわね」
すぐに笑みを浮かべた少女の言葉に釣られ後ろを振り返ると、一人の男がルミスの気になっていた飲み物を持って歩いてきていた。
そいつは、少し不気味な男だった。
口を変な金具で塞がれており、言葉を喋ることはできなさそうだ。
ずっと目をつむっているのに、周りが見えているように振舞っている。
そしてもう一つ分かることがある。
こいつは、強い。
少し見ただけで、その立ち振る舞いから全く隙がないことが分かる。
メイケン達とは文字通りレベルが違うってやつだろう。
流石に
「ありがとう、随分と行列ができていたわね。うふふ、私もね、タピオカ、大好きなの。知ってる? これ、最近とても人気なのよ。当然よね、あのお店のオーナーは
少女は楽しそうに話しているが、俺には少し気になることがあった。
「なぁ、そこの男、冒険者ランクはどれぐらいなんだ?」
メイケン達”華麗なる翼”はBランクだったけど、その割には弱すぎた。
オルゴンの町と王都では、冒険者のレベルが全く違うのかと思ったんだ。
オルゴンの町で考えると、この男はAランクか、もしかするとSランクの強さかもしれない。
だが、俺の予測は大きく外れていた。
「うふふ、彼はね、ただの奴隷なの。だからね、冒険者登録はしていないから、ランクなんてないわ」
おぉい、まじかよ。
Sランクどころか冒険者ですらないのかよ。
王都レベル高過ぎじゃねぇか。
俺が驚いていると、少女は立ち上がる。
「じゃぁ、頑張ってね。バアルさんが生きて、また会えるのを楽しみにしてるわ。あぁ、今度会う時はルミスさんとも話せるかもね。それは楽しみね。うふふ、えぇ、本当に楽しみにしているわ」
鼻歌を歌いながら去っていく少女と男を見ながら、俺はふと思う。
「……あれ? 俺、あの子に名乗ったっけ?」
なんというか、とても不思議な女の子だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます