D.E.A.D. ～愛する人を失った男は、悪神が宿る魔剣を手に、人間を止めてでも世界に復讐する～

１５ 華麗なる翼

　メイケン達は強かった。

　力では俺が完全に上回っているのに、なかなか攻め切ることができない。

　技。経験。連携。

　力以外の全てが俺よりも上なのだろう。

「喰らえぇぇ！！」

　だけど、力は俺の方がはるかに上だった。

　メイケンの剣を雷鉄剣（スサノオ）で受け止める。

　雷鉄剣（スサノオ）の出力はかなり弱めているため、メイケンの剣を溶かすことはない。

「ちっ！」

　あまりにも簡単に俺が受けたことに、メイケンは舌打ちをして距離をとる。

　俺が追撃しようとすると──

「──敵穿つ炎槍（フレイム・ジャベリン）！」

　美女Ｂの遠距離魔法により、阻まれてしまう。

　メイケンを見れば、美女Ａから何か魔法を受けている。

　治療魔法、もしくは支援魔法だろう。

　主に近距離戦を得意とするメイケンを魔法で支える美女二人は、パーティー名の通り華麗な翼に見えた。

　凄い、凄い凄い！

　魔法だ！　本物の冒険者だ！

　俺は初めて見る魔法と、強い冒険者パーティーを見て興奮していた。

　雷鉄剣（スサノオ）の出力を上げて、直ぐに決着をつけないのはそのためだ。

　もっと、もっと彼らの戦いを見ていたいんだ。

「メイケン！　大丈夫！？」

「こいつ……危険ね」

　美女ＡとＢがメイケンの肩に寄り添う。

「あぁ……こいつの膂力、尋常じゃない……くそ、俺達相手に片手しか使わないなんて……舐めやがって」

　いやいや、そりゃ誤解だよ。

　舐めてるわけじゃないんだ。

　だけど、ルミスを地べたに置くわけにはいかないだろ。

　仕方ないじゃないか。

「バルタザール！　もう止めろ！　こんな戦いに意味はない！」

「何を言ってるんだメイケン。意味ならあるじゃないか」

　俺は雷鉄剣（スサノオ）を地面に刺し、ルミスの頭を撫でながら答えた。

「これは俺が犯罪者にならないための、大切な戦いだ。それに……メイケンが言ってたじゃないか。"Ｂランクを単独で撃破できる強さがあるならランクは上がる"って。俺は冒険者のランクを上げたいんだ。そしたら、蘇生方法の情報も多く入ってくるだろ？」

「ち、違う！　それは魔物が相手の話だ！　俺達を撃破してもランクは上がらない！」

「なんだ、これも嘘なのか。人間は本当に嘘つきだ」

『本当ねバアル。嘘がつけないように、早く首を落とさなきゃだね』

「あぁ、ルミス。嘘つきは許せない。首を落とそう。そしてその後、楽しもう」

　俺とルミスの会話に、メイケンが大声で割ってはいる。

「目を覚ませ、バルタザール！　その子は、そんなこと望んじゃいない！」

　あぁ、うるさい。

「その子は、ルミスは、人の首を落とすことを楽しんだりはしない！　そんなこと、お前が一番分かってるだろうが！」

　うるさい。うるさいうるさい。

　本当にうるさいやつだ。

　もう少し戦いを見ようと思ったけど、もういいや。

　煩わしい嘘つきは、早く殺さないと。

　俺は雷鉄剣（スサノオ）の出力を上げ、刀身を奴らに向ける。

　片翼を失っても、彼らは美しいままなのかな。

「力を貸せぇ！　雷鉄剣（スサノオ）ォォ！！」

「ごふっ！？」

　雷鉄剣（スサノオ）から放たれた雷は、美女Ａを貫いた。

　人間の体で受けきるには過大なエネルギーだったのだろう。美女Ａの下半身は消失していた。

「あ……あぁ……み、ミザリィィィィィ！！？」

「あぁぁぁ！！　お姉ちゃぁぁぁぁん！！！｜」

　メイケンと美女Ｂが取り乱している。

「お、おい雷鉄剣（スサノオ）……やり過ぎだろうが……」

　そして、俺もまた焦っていた。

「あれじゃぁ、棒を突っ込めないだろうが……勿体無い……」

　俺が反省していると、メイケンが俺に向かって駆け出した。

「バルタザァァァァァル！！　お前はぁぁ、殺すぅぅぅぅ！！」

　あぁ、やっぱり。

　さっきまでは支援魔法を受けていたんだ。

　──ヒュン──

　明らかに動きが遅くなったメイケン相手なら、首を落とすことは簡単だった。

　首を失ったメイケンの体は、糸が切れた人形のように倒れる。

　ふぅ、後は……

「ひっく……ひっく……うぅ……」

　美女Ｂは、現実を理解できてないのか、頭を抱えて泣くのみだった。

　少しだけ不憫に思った俺は、メイケンの太ももを引っこ抜き、肉を削ぐ。

　彼女も、突っ込まれるならただの棒より、メイケンのほうが嬉しいもんな。

「ぎゃぁぁぉ！？」

　美女Ａの足を軽く潰し、服を剥ぎ取る。

　そして、メイケンの太ももにあたる骨を、思いっきり尻に突っ込んだ。

「んぐうぅぅぅぅ！？　ひっ、ひぎぃぃぃぃ！！」

　うん？　これは……？

「あがっっ！　だれっか！　たす、だずっっ！！　あぁぁぁぁ！！」

　おかしい、前は何が楽しいのか分からなかったけど……

「あひぃぃっ、ひうぅぅっ！　じっ、ぬっ！　ひぎゃぁぁぁ！！」

　楽しい、楽しいぞこれは。

「あひっ、んんっ！　いぎぎぎぎっ、ひぃっ、ひぎぃぃぃぃ！！」」

　そうか、これは人間の女にすると、より楽しいのか。

　だからあいつらは、ルミス相手にこんなことを……ふざけやがって。

「いいぃぃぃいっっ！　ぎぃぃぃ、ひぃっ、くひぁぁっっ！」

　人間なんて、人間なんて、人間なんて、みんな死んじまえ。

「ぐぎぃぃっ、おごごごっっ、ふぎっっ！　ぎゃぉぁぁぁああぁおぁああぁ！！」

　思わず力が入ってしまい、女は直ぐに死んじまった。

　その間、やはりルミスは喋ることはなかった。