12 友達
「えっと……あなたは?」
俺は、クロエさんとの間に割り込んできた男に質問する。
その男はかなりのイケメンだった。同性であればどうしても嫉妬してしまう程に。
いや、俺はしないか。今は男……っていうか、人間じゃないし。肌は青いし。体は大きいし。
あれ? 俺ってみんなにどう思われてるんだろう。
少し不安になっていると、イケメンが笑いながら声をかけてくる。
「まぁ、そんなに警戒すんなよ。お前はどうしてもこの依頼を受けたいんだろ? なら、俺達が一緒にその依頼を受けてやるよ。それならいいだろ?」
なんだこいつ。イケメンかよ。
顔の綺麗さと心の綺麗さは比例するのか?
あぁ、だからルミスは天使なのか。
『えへへ、なによそれ』
「ちょっ!? 心を読むなよルミス!」
あ、いかんいかん。
俺は今イケメンと話してたんだ。
いきなり叫んだ俺を見て、イケメンの顔は引きつっていた。
「ご、ごめん、気にしないで。俺の名前はバルタザール。こっちの子はルミス。正直助かるよ。俺はその依頼を受けたかったんだ。その依頼を受けることは運命だからね」
「……えっと……俺はメイケン。後ろの奴らと"華麗なる翼"ってパーティーを組んでるんだ。一応Bランクだぜ、よろしくな」
イケメンのメイケン。ややこしい奴だ。
メイケンの後ろには、整った顔の女が二人並んでいた。
美女と言ってもいいだろう。ルミスには劣るがな。
二人とも、それを自覚しているのか、ルミスからは目をそらしている。
名前は……教えてくれないのか。どうせ今回の依頼だけの絡みだ。美女A、美女Bと呼ぼう。
「メイケンさん……ありがとうございます……」
「なぁに、クロエが今度ご飯でも付き合ってくれればいいさ、なんてな。後は俺に任せとけ」
メイケンと受付嬢のクロエさんが何か話している。
他人の会話に聞き耳を立てるつもりはないが、彼女の乙女な表情を見れば、ただの冒険者と受付嬢の関係ではないのかもと邪推してしまう。
「待たせたなバルタザール、今からいくかい?」
「はい、もう四日も寝てないので早めに行きましょう」
「なんだそりゃ? その首といい、お前は冗談が下手すぎるぜ」
組合から出るときも、メイケンがクロエさんとアイコンタクトを取っていたのが気になるが、とにかく俺は運命の依頼を受けることができた。
依頼の内容は、近くの山脈に住み着いたサラマンダーという魔物の退治だ。
サラマンダーはBランク指定の魔物で、組合が安心して任せられるパーティーは、オルゴンにはメイケン達”華麗なる翼”しかいなかったらしい。
「とすると、そいつを倒せば俺がBランクと認められるのか……?」
俺の呟きに、隣を歩くメイケンが反応する。
「すげぇ自信だな。まぁ、もしサラマンダーを単独で撃破しても、すぐにBランクに上がれるわけじゃねぇよ。依頼達成の積み重ねや、日頃の素行とかも重要だからな。まぁ、確かにBランクを単独で撃破できる強さがあるなら、ランクは直ぐに上がるかもな」
オルゴンの町から目的の山脈まで、俺達は徒歩で移動していた。
馬車を使えばもっと早かったが、なぜか俺が乗車拒否されてしまい、歩くことになってしまったのだ。
そのことで美女AとBは俺を恨んでいるのか、一切話しかけてくれなかった。
道中、俺はルミスとお喋りを楽しもうと思ったが、メイケンがやたら話しかけてくる。
思えば、コリン村では同年代で仲がいい同性はいなかったしな。
……まぁ、悪くない。
あぁ、そうか、これが──
「──友達」
「……え?」
思わず出てしまった言葉に、メイケンは反応する。
……恥ずかしい。でもこういう時は伝えてしまったほうがいいと、過去の経験が教えてくれた。
「俺とメイケンは、友達だよな?」
一瞬の沈黙。
「…………あ、あぁ。俺たちはもう友達、だな」
そして聞こえてくる肯定の言葉。
嬉しい。
『えへへ、良かったねバアル。友達ができたね』
「あぁ、良かったよルミス。こんな可愛い
更なる幸せを求めようと、美女達とも友達になろうと後ろを振り返る。
「…………」
「…………」
だけどそこには、なにか汚物でも見るかのような表情で、俺と距離をとっている二人がいた。
……まぁ、友達は一日一人までだよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます