09 復活の誓い

「じゃあな、コリン村」


『バアル、本当にいいの?』


 ルミスが心配してくれたのか、声をかけてくる。


「あぁ、いいんだ。こんな村、なんにも未練はありゃしないよ」


 ルミスに優しく答えた。

 そう、爺ちゃんも過去に囚われるなって言ってた。

 こんな村に囚われちゃいけないんだ。


 俺はルミスと、未来を生きていく。

 そのためにルミスを蘇生させるんだ。

 だからこんな村、もういらない。


 俺は生首ルミスを左手で抱えたまま、右手に握った雷鉄剣スサノオを天高く掲げる。


雷鉄剣スサノオォォォォ! お前の怒りを見せてやれぇぇぇ!!」


 瞬間、空は快晴だというのに、雷鳴が響き渡る。

 落ちてきた雷は、コリン村の中心に炸裂した。


 その純粋な衝撃により、村の建物は崩壊する。

 そして、どこかで火の手が上がったかと思えば、見る見るうちに村全体に燃え広がっていった。


 この村の住人は俺が全部殺した。

 この村の建物は俺が全部壊した。

 この村は、死んだのだ。


 この村への復讐は終わった。


 次は、世界への復讐だ。

 見てろよ神様。あんたが作ったふざけたルールに復讐してやる。

 俺は、俺は──


「──絶対にルミスを生き返らせてやる」


『えぇ、嬉しいわバアル。私、その時までゆっくりと待っているわね』


「あぁ、待ってろルミス。絶対に……絶対にお前を生き返らせて──」


 俺は左手で抱えた生首ルミスに返事をする。

 死後硬直しており、ルミスの表情は悲痛そのものではあるが、魂から聞こえてくる声はそよ風のように心地いい。


 炎と血で真っ赤に染まった世界の中で、唯一ルミスだけは俺を癒してくれる。


「──ルミス、お前を幸せにしてやる!」


『嬉しいわバアル。今でも十分幸せだけど、私、待ってる。バアルが生き返らせてくれるのを、ずっと待ってる』


 二本の魔剣を腰に携え、俺は元コリン村を後にする。


『それで、どうするのバアル。どうやって私を生き返らせるの?』


 正直あてなどない。

 だけど、ルミスを安心させるために、俺は自信満々な表情を繕う。


「町に出て、冒険者になろうと思うんだ。ルミスが昔話してくれたように、都会だと凄い魔法使いがいたり、凄い薬がありそうだし」


『なるほど……いい考えね! なんだかキラキラしてそうで、楽しそう!』


 前途多難な冒険も、ルミスが一緒なら楽しい旅行のようにも感じられる。

 こうして、俺達は歩き出したんだ。

 アフラシア王国の中心に向かって。



★★後書き★★

以上で一章完結となります。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


本作品で初めましての方がいらっしゃましたら、自作「タナトフォビア」もお読み頂けたら更にお楽しみいただけるかもしれません。

それでは引き続き、バアルとルミスの旅をお楽しみください。

★★★★★★★

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