押井守総監督『ぶらどらぶ』を見た パート2

 前回、3話までを観た時点で『ぶらどらぶ』の感想を書いた。今回、私は現在視聴可能な6話と関係者インタビューをいくつか見て、前回の感想で見当違いだったこと、あながち間違いではなかったこと、見えていなかったことが分かったので再び書いていこうと思う。ここでは、前回私が書いたことを元に書いていくので前のを読んでない方はそちらからどうぞ。


 まず、私がつかめなかったテーマであるが、押井監督はこの作品で「共同謀議者」の関係を描きたいそうだ。主人公の貢はかわいいヒロインのマイと一緒にいたいから、吸血鬼マイは血が欲しいから。こうして二人は血を集めるために色々と画策する。監督曰く利害のみによって結ばれた関係を描きたいらしい。こうした人間関係は大人になるとよく経験するよな?(社会に出たことのないニートにはわからんやろけど)最近のはやりの作品で「恋愛」や「友情」を描くことはあっても、「共同謀議者」をテーマにした作品はないだろう。(恋愛とか友情は学生とかにもわかりやすいし、描きやすいもんね)近くにあるのになかなか相手にされない興味深いテーマだと思う。


 次に、昔のアニメのようなパロディが多いのはどうも意識してのことらしい。プロデューサーも「勉強しながらでないと見れない」と言っていた。実際見てみても、マニアックなネタは不学な私には元ネタが分からなかった。4話の『機動警察パトレイバー 2 the Movie』のパロディは面白かった。音楽を担当した川井憲次も音楽は寄せて、一部同じ音を使ったらしい。あいかわらず、ウィザードとプリーストだしね。


 これが前回の内容のうち、「昨今のアニメ批判を行っているのではないか?」という部分だが、押井監督は最近のシリーズアニメが「安い映画」になっていると感じているそうだ。予算を理由に内容を妥協していると感じているらしい。だが、監督曰く、シリーズだから描けることもあると考えているようで、それを今作で実践したいようだ。(こうした考えは実は私も持っていて、誰か現状を改革してくれる人はいないのか、と勝手に嘆いていた)プロデューサーはこの話を聞いて今の業界に疑問を感じている人を中心にして、スタッフに誘ったらしい。


 以上が、前回の妄想をインタビューなどから再度整理した内容である。私はこうして整理する中で、前回言っていたことの方向性はあっていたのかなと思う。だが、テーマを見極められなかったのはお恥ずかしい限りだ。この『ぶらどらぶ』だが、ギャグのノリは2000年よりもっと古いと思う。(感想では2000年ぐらいだと言う人がいたのだが)そのため、現在の若い子供にはよくわからないだろう。だが、やはり演出や見せ方は巨匠の技だと感じたし、限られた予算でいかに(シリーズとしての)物語を作るかの知恵は初めて聞いたとき感心してしまった。(詳しくはYouTubeの関係者インタビューをどうぞ)今まで、押井守を知らなかった人も知っている人も一度は自分の目で見てほしいそんな作品だと私は考える。やはり文化はつながってこそ文化なのだ。背景無き文化に未来などない。


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