03

 隣からため息が聞こえてきた。


「元気ない。何かあった?」

「え、あ、いやぁ……弥、ケガはもういいの?」

「……鎧はまだ直りきってないけど、ほとんど直ってる」

「そっか! よかった!」


 笑う和樹の頬を無言で引っ張ると、痛い痛いと暴れだすが、弥が手を離すことはなく、引っ張り続ける。


「?」


 和樹の頬を引っ張っていると、ふと感じた気配に振り返れば、長老がこちらを眺めていた。すぐに手を離せば、和樹も不思議そうに弥が見つめる先に見つめる。


「あ、長老」

「なに、警戒せんでも、ただ頼まれていたことがわかったから届けに来ただけじゃよ」


 長老が渡してきたのは書類と写真。和樹が受け取るのと同時に、長老はその場から姿を消した。確かになくなった気配に、弥も眉をひそめるが、いなくなったしまった人物を考えても仕方がない。それよりも先程の書類だ。

 弥もその書類をのぞき込めば、和樹の両親の名前と勤め先が書かれていた。しかも、ちょうど今、監視している施設だ。


「会いに、いく?」

「え……あ、う、うん。でも、先に言われたところ調べないと」

「内緒にすればいい」

「や、弥って時々すごいこと言うよな……」


 早速向かおうとする弥に、和樹も慌てて追いかける。確かに会いたいとは思うし、話したいとも思う。でも、どうやって会えばいいのだろうか。


「受付で聞く」


 当たり前のことを返す弥に、和樹も困ったように頷いた。それで来てくれるかはわからないが、息子だといえば、話くらいは通してくれるかもしれない。

 しかし、二人が建物に近づいた時、弥はその影に、和樹はその声に、足を止めた。


「和樹……?」


 微かに聞こえた声に、振り返れば、そこにいたのは写真の二人だった。


「父さん……母さん……?」

「ッ」


 呼びかけられた自分の名前に、呼びかけた言葉に嬉しそうに表情を歪めた二人の顔は、頷かれはしなかったが確信できた。だというのに、


「違うッ!」

「ぇ……」


 否定する言葉に、父が慌てたように母を止めるが、母は取り乱したように首を横に振っていた。


「人違いよ! あなたなんて、息子なんて……私には、いない……ッ」


 父の腕を振り払って、施設の中に走っていってしまった母に、何も声をかけることはできなかった。


「あ、あはは! ごめんなさい! 人違いして!」


 頭をかきながら、謝り、一度頭を頭を下げた和樹は、路地の方へ走り出してしまった。残ったのは、父と弥だけだった。


「……君は、息子の友達かな?」


 頷いた弥に、父は目を伏せる。


「なら、伝えてもらえるかな? すまなかった、と」

「自分で言って」


 はっきりそう返すと、弥も和樹を追いかけた。残された父は一人、困ったように頭をかくしかなかった。

 和樹は路地の行き止まりで座り込んでいた。


「ごめん……なんか、やっぱ、きつくて……」


 かすれた声で謝る和樹は、時々しゃくりあげながら、弥に問いかけた。


「弥もさ、きつかった……? 自分の母さんに……捨てられたになった時」


 初等教育の頃だ。

 弥は自らの母に首を絞められ、殺されそうになった。しかし、母は弥の命を絶つ前に、その手を緩め、弥を外に追い出した。その後、蒼哉と赤哉に首の痕を見られ、母はヴェーベから追放、弥は蒼哉たちの家に居候することになった。

 返事をしない弥に、和樹が不安気に振り返れば、弥は和樹の隣に腰を下ろした。


「和樹、お母さんとお父さん、好き?」

「へ……?」

「私は、好き」

「殺されかけても? 見捨てられても?」

「うん。嫌いにはならなかった」


 もはや、好きとか嫌いとか、そういう問題じゃない。


「和樹は?」


 一緒に住む祖父から、話を聞いて、時々、両親からだと渡されたプレゼント。拓斗の影響で音楽を始めて作った曲を、祖父が両親に送ってくれていて、それで届いたプレゼントは今でも愛用しているヘッドフォンだ。


「好きだった……でも、今はわかんない。好きなのか、嫌いなのか、だって、子供じゃないって言われたんだよ……? 決められるわけないじゃん……」


 でも、きっと嫌いじゃない。嫌いなら、こんなに苦しくはならない。素直に今、やりたいことがあるなら。


「もう一回、会って、意地でも子供だって言って……そんで、好きか嫌いか、決める……! 俺、バカだから、そうしないとわかんないや」


 恥ずかしそうに笑う和樹に、弥も表情を柔らかくすると立ち上がった。ちょうどその時、携帯が鳴り響く。遼太からの調子はどうかという内容のメールだった。弥は一度、施設まで行くと、正面入口を写真で取ると、それを送った。

 その行為に不思議そうに見つめる和樹だったが、すぐに電話が入った。


「お前らの方もかよ」

「も?」

「こっちも怪しいのがあるんだよ。こりゃ、二手に分かれたな。とりあえず、一旦集まって――」

「野暮用」

「…………は? ちょっと待て。野暮用ってなんの話――」


 切れた電話に、遼太は後ろにいた三人に振り返る。


「お前ら、和樹のことで何か知ってたら洗いざらい話せ!」


 もし、蒼哉が運び込まれていたり、処罰される状態であれば、弥がまともに受け答えしたり、電話を受けたりするとは思わない。そのまま、乱入する。

 それが、あれだけ受け答えしたのだ。十中八九、問題は和樹の方だ。遼太も元気がないことは気がついていたが、内容までは知らない。それどころか、自分だって昨日の話には衝撃を受けたのだ。割り切っている弥や最初から気にしていない拓斗、こういったことに鈍感な木在以外なら元気がないことは普通だ。


「あ、そういえば」


 思い出したように木在が手を打った。


***


 本土への呼び出しの通達が来てから、蒼哉は白菜に一緒にこなくていいと言い出した。逃げられたと伝え、あとのことは赤哉が匿うと。拓斗たちが帰ってくれば、全てが決着するから、それまでの辛抱だと。


「どっちにしたって、僕の首が欲しいんだ。なら、それ以上の対価を払う必要はないからね。シロがいなくても大丈夫」

「だったら、俺でもいいだろ!? 入れ替わったって、どうせわからないんだから」

「変身したらわかるよ」


 蒼哉と赤哉の鎧は、青色と赤色。いくら顔が似ていても、それではバレてしまう。


「でも……」

「僕は間違ったことをしてる。その代償がひとつでいいなら、それにこしたことはないよ」


 その時の蒼哉の笑みは、普段と何も変わらない。悲しさも何もない、むしろ喜んでいるようにも見える笑顔。

 いつだってそうだ。蒼哉は中央管理局の息子だから、常に能力者として正しくあるし、あらないといけない。絶対に規則から外れたことはやらない。だからこそ、蒼哉強かった。誰も規則には逆らえないから。

 でも、もし規則に逆らわなければ、家族、恋人、友人、なんでもいい大切なものを守れないとしたら、この人はいつものように、冷徹に大切なものを捨てるのだろうかと考えたことがあった。きっと捨てるんだろうと、その時は結論を出した。この人は、私によく似てるから。

 この部屋に連れてこられてから数時間。つけられた装置は、能力を調べるためのものだろう。何もない部屋で、一人になってから随分時間が経った。何度だって頭に浮かぶ蒼哉のこと。冷たい人間なんかじゃなかった。あの人は、私と違う。


「能力者は尋問中に、寝てもいいなんて言われるのかしら?」

「さすがにそんな度胸、私にはありませんよ」


 入ってきた白衣を着た中年の女は、向かいの椅子に座ると、パソコンを開く。


「本当に、尋問みたいなことするんですね」

「安心して。尋問なんてしないわ。私は、ただの研究員だもの。貴方に、研究の協力をお願いしにきただけ」


 ここで逃げ出すために、この女を操った日には、その脳波の波形を調べるのだろう。しかし、自分がここにいることは、状況的にも良くはない。自分はこの特異な能力のおかげで、しばらくは生きられるが、蒼哉は違う。

 女がこの能力について、白菜の協力さえ得られれば、国際的にも帝国はもっと安定した地位を確保できるようになると、説明していた。そんなこと、昔から知っていた。直接攻撃でいえば、他に劣るが、情報に関しては圧倒的に勝る。自分の能力は、そういった方面でしか、おそらく活躍できないことも。


(落ち着け……ただ、能力ズルが使えないだけだ。言葉が使えないわけじゃない)


 一度、静かに深呼吸をする。


「私と同じ能力を持ってる人って、ほとんど処罰されてるんですよね」

「えぇ」

「やっぱり、能力は魅力的だけど、自分もかけられるって思うと、利用するだけして捨てるオチなんですね」

「……」


 そう。能力者でなければ、すぐに洗脳されるなら、その能力者を使おうとする人間も洗脳される可能性があるのだ。特に、相手が意志をもった人間であるなら。それなら、目的が終わり次第、早々に退場してもらうのが一番だ。


「それだけわかっていて、どうして逃げなかったの? どの道、貴方のリーダーは助からないのに。貴方の犠牲はムダよ」

「逃げた人間に、そう言われる筋合いはありません」

「ッ」


 ただの当てずっぽうだったが、思い当たる節があるらしい。女は先程までの機械的な表情ではなく、睨みつけるように白菜を見つめる。


「それは、貴方が子供だから言えるの」

「そうかもしれません。でも、私は、今まで見てきた先輩が逃げる姿を、一度も見たことがないんで、北東教育機関の後輩として、逃げたらあのバカでダメダメでぐーたらニートな先輩に負けることになるんです」


 だから、逃げない。相手が大きいとか小さいとか、そういうのじゃなくて、あの人たちは何かのためとなれば、逃げずに立ち向かう。そんな先輩しか、見たことがなかった。だから、北東教育機関に、敵前逃亡の文字はない。

 その白菜の目に、女はたじろぐが、それを切り裂くように警報が鳴り響いた。すぐにドアが開き、男がやってきて侵入者だと、告げる。

 白菜はすぐに合点がいった。嬉しいような嬉しくないような、呆れた感情。普通は見捨てるというのに、やはりやってきた。


「あの子だ」

「――ッ!」


 男が告げた言葉に、女は目を見開いて驚く。


「どう、して……」


 辛うじて紡がれたその言葉に、男は何も言わず、白菜に付けられていた装置を外した。そして、後ろのドアを指す。


「そこから出て、右の通路を行きなさい。すぐに、警備隊がここにくる。そうなれば、逃げられなくなる」

「逃がして、いいんですか?」

「せめてもの償いだよ。親として、何もできなかったことの」


 白菜は何も言わず、頭を下げると仮面をつけ、走り出した。それから、程なく、警備隊がやってきた。


「能力者を逃がしたのか」


 言い逃れはできない。能力者の持つ銃口が、女に向く。そして、ためらいなく引き金は引かれた。

 しかし、火薬の弾ける音はいつまで経ってもせず、聞こえてきたのは叫ぶ声と水が打ち付けられる音。


「間に合ったァァア!!」


 今までの不安を全て吹き飛ばすような、嬉しそうな声。ドアの前に現れたのは、白い鎧に身を包んだ、二人の息子だった。


「二人共、早く逃げて!」

「どうして、貴方が……私は、もう貴方に――」

「その話は後で! ここは俺が食い止めるから、早く」

「……行こう」


 父が母に手を貸しながら歩き出し、逃げるのを背中に感じながら、目が霞む。しかし、口元は笑ったままだった。


「和樹。今まで悪かった」


 初めて聞いた父の言葉に、その笑みはもっと深くなる。


「ヘッドフォン、ありがとう!! ずっと大切にするから!」


 背中に向かって叫んだ。


***


 木在はようやく見えてきたその施設に、足を一度止めた。


「きっつ……ルーチェ、だいじょ――――あ゛」


 振り返った場所にルーチェはいなかった。いや、厳密にいえばいた。小人内に捕まった状態で。


「こんな場所で見つけられるとは、ラッキーだったな」

「ちょっと待てェ! なんでロリコンがいるんだよ!」

「ロリコンじゃなァい!!」


 木在が仮面を取り出せば、銃がルーチェの頭に突きつけられる。


「変身すれば、このガキの頭ぶち抜くぞ」

「なにそのテンプレ! かっこ悪いぞ!」

「うるさい! 私の顔に泥を塗っておいて、ただで済むと思うなよ!」

「泥パックでお肌ツルツルだぞ! 喜べよ!」

「そういう意味じゃない! バカなのかお前は!」


 こういうときに限って、物理的になんとかできる弥もいなければ、なにか打開策を考えてくれる遼太もいない。


「こんなことをしないといけないとはな……やはり、兵器は意思を持たない方がいいな」


 兵器というのが誰を指しているのか、ルーチェでも容易に想像がついた。


「みんなを、兵器なんて言わないで!」

「ハァ? 兵器じゃなきゃ、なんだっていうんだ? この化け物どもは!」

「化け物じゃないッ……!」


 一緒にいた期間は確かに短かった。だが、バカみたいにはしゃぐ、木在たちが小人内よりもずっと優しい人間だと理解するには十分だった。そんな人たちをただ能力者というだけで、兵器と化け物と言われるのは許せなかった。


『何かあったら使って』


 そう言って渡されたホイッスル。まだ首にかけてあった。


「みんなをバカにするなッ!!」


 思いっきり、そのホイッスルを吹いた。音の衝撃とは違う、脳に直接叩きつけるような衝撃に、小人内は目を回して倒れる。木在はその瞬間を見逃さず、変身するとルーチェの元に駆け寄った。


「なんかよくわからんけど、ナイス!」


 安心したのも束の間、小人内の護衛だったスーツの男たちが車から飛び出してくると、二人の銃を向けた。木在が杖を地に付け、ルーチェを守るように抱える。しかし、銃を撃ってくる気配は一向にない。


「?」

「ギリギリセーフってところですかね」


 その声に、振り返ればウサギを模した鎧を身に付けた白菜と弥、それから見たことのない二人が立っていた。


「ハクサイ!」

「それはもう弥さんにやられました!」


 怒鳴る白菜は、すぐに木在からルーチェの方に視線を移す。しかし、それは安堵や喜びではなく、怒った視線。


「あんなに先輩たちのために使うなっていったのに」

「え、あ、ご、ごめんなさい……?」

「もう使っちゃったならいいわよ」


 拗ねたように顔を背けると、スーツの男たちの銃に目が行く。その銃は腐敗し、もう撃てたものではないだろう。


「私、必要ありませんでした?」

「ちょー必要だった。ナイス! ところで、そちらさんは?」


 和樹の両親だということと白菜を逃がしたせいで、もうあの場所に帰れないことを言えば、母は涙を浮かべていた。


「私はあの子の母親なのに、何一つ母親らしいことをやってあげられない……! あの場所に置いてきて」

「そのことなら平気っすよ。今、二人が助けに向かってますから」


 ブイサインをする木在に、父も微笑み、母の肩を支える。


「帰ってきたら、和樹とちゃんと話そう」

「でも、私はもう、あの子に愛してるなんて言う資格ないのよ……?」

「じゃあ、大好きって言いましょう!」


 ルーチェが言い出したことに、白菜は驚いたように弥に目を向けると、


「ルーチェちゃんに変な影響、与えないでください」

「与える気はなかった」


 頷く木在に、白菜もため息をつくしかなかった。


***


 何度もくる衝撃にいい加減、手も痺れ、何故か笑みが漏れてくる。試験ができなさすぎて、自然と笑いがこみ上げてくるような、そんな感覚。


「いい加減、諦めろ! あいつらを守って、お前に何の得がある!?」

「得も何もあるかァーー!!」


 力を振り絞って、盾を押し出す。水の膜が警備隊に勢いよくぶつかり、数人が吹き飛ばされた。黄色で描かれた円は傷が付き、白銀の盾が歪み始めようとも、その輝きは失われてはいなかった。


「絶対に……! 絶対――」


 守るから、しかし、その言葉は発されることはなく、窓ガラスが割れる音が響きわたる。


「イヤァッフォォォォオオォォオウ!」


 黒いカラスが窓枠で仁王立ちを、赤い鬼は金棒を片手に窓枠に刺さった斧の柄に屈み、和樹を見下ろしていた。


「月がキレイだなぁ?」

「そうだな!」


 テキトウに相槌を打ったカラスは、愛用のギターを構える。戦っている最中だというのに、ありえないその行為に、その場にいた全員が唖然とその光景を見つめていた。ただ一人、意図に気がついた和樹、すぐに耳を塞ぐ。

 次の瞬間、大音量のギターの音に、目の前が眩く点滅した。普通ならここまでの大音量はでない。しかし、遼太がいるなら別だ。遼太の能力“震”は振動を操る。その能力を応用すれば、声や音を増減することは可能だった。

 しかし、どれだけ演奏が上手かろうと、鼓膜を遠慮なく破りそうな、音のパンチに拍手を送る人はいない。耳をふさいだ和樹ですら、まだ耳の奥で音が響いているのだ。耳を塞がなかった警備隊はしばらく音は聞こえないだろう。


「ほら、逃げるぞ!」


 イタズラが成功したかのように笑顔で手招きする遼太に、和樹もすぐに二人の元へ駆け寄り、施設から脱出した。

 先に脱出していた白菜たちと廃ビルで落ち合うと、和樹は改めて、自分の両親に向き合う。他のメンバーは気を使ったのか、離れた場所にいた。


「父さんも母さんも、無事でよかった!」

「あぁ……ありがとう。和樹」


 その返事は笑顔で返すと、母は悲しげに微笑みながら、


「恨んではいない……? 能力者として生まれたこと」


 それは学生の頃だった。研究室でもまだ下の立場であった母は、当時の新薬であった母体にある卵子を全て能力者にする薬の最終段階の実験のデータを取るため、上司にその新薬を無理矢理投与された。失敗すれば、一生子供を産めないことになるが、断る力を当時は持っていなかった。そして、実験は成功。そのデータのおかげもあり、その新薬はすぐに世に発売された。

 母はそのまま研究の道へ進み、能力者の特に能力を専門とした研究室に入った。その後、同領域の研究者である父と結婚し、和樹を授かった。しかし、研究室のこともあり、二人はヴェーベに移住することができず、祖父に和樹のことを全て任せてしまった。

 自分のために、息子である和樹を見捨てたものだと、母親失格だと恨まれても、仕方がない。


「全然!」


 しかし、思いとは裏腹に、和樹は満面の笑みだった。


「そのおかげで、すっげーいい友達と、会えたんだから!」


 遠くでふざけ合っている拓斗たちは、和樹がこちらを見ていることに気がつくと、ちゃんと親を見て会話しろとジェスチャーしてくるが、またすぐにふざけ出していた。


「ね!」

「和樹……ごめんね。ごめんね。ダメな母親で。大好きよ」


 ようやく、母は和樹のことを抱きしめた。


***

 

「――――いいか? 必ず、奴らは現れる。そこを捕まえろ。一人、二人死んだところで、構わん。今度は失敗は許さん」


 男は電話を切ると、苦々しく表情を歪めた。


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