第18話


今日もまた、ファントムスネークを探すために、目をがっしりと開けて、周囲を捜索。


ファントムスネークは、森の景色と同化していることが多いので、見つけるのが困難な魔物。




「さすがにここまで長くなるとは思わなかったな...」


クエストを受けてから3日が経過した。




俺は我慢にはなれてはいるが、契約精霊であるヒースは、


「蛇ちゃ~ん...出ておいで...」




面倒すぎて、ほぼほぼ放心状態だった。


「あと少しの辛抱だ」




こんなことを言ってはいるが、根拠はない。


その瞬間、右の草むらの地面が少しゆがんだ。




「ん?...」


俺は、目をこらしてそちらを見る。




確証はないが、ファントムスネークかもしれない。


俺は、小声でヒースに協力するように言う。




「ヒース、ファントムスネークが近くにいるかもしれない」


ヒースは、放心状態の顔から、笑顔に変わり、




「え!?いるんですか!?」


「おい!馬鹿!」




ファントムスネークがこちらに気づき、近くにいた俺に対して幻術魔法をかけてから逃走する。


俺の視界はぼやけて、周りが見えずらくなる。




「ブラッドウォーター!」


逃走したファントムスネークを追うために、ブラッドウォーターを発動させ、すぐに追う。




幸いまだ視界内にファントムスネークの姿は、ぼやけてはいるが見える。


「ヒースはそこで待ってろ!」




ついつい口調が荒くなってしまう。


「は...はい...」




ヒースは落ち込み、今にでも泣きそうになっている。


逃げたファントムスネークを高速移動で追う。




ここは森林なので、もちろん高速移動の障害物となる木は腐る程ある。


普通の状態であれば、難なく移動ができるが、今の俺は幻術魔法をかけられ、視界がぼやけている。




そのため、木にぶつかってしまう、なんていうヘマが起こりうる。


細心の注意を払いながらもファントムスネークを追いかける。




俺とファントムスネークとの距離をどんどん詰めていく。


クエスト内容では、できるだけ傷をつけずに収納すると書いてあったので。




ナイフで、動けなくなるまで切り刻めば、クレームが入るだろう。


そのため、手刀で気絶させるのがベスト、という結論にたどり着いた。




あと1メートル、あと少しで捕まえることができる。


歯を食いしばり、手を伸ばす。




その手は、見事にファントムスネークをつかみ、移動できないように、上に上げる。


「よくも苦労させてくれたな!」




三日分のストレスを、すべて拳に入れて、撃退クエストの撃退対象であるファントムスネークをぶん殴る。




ファントムスネークは、さっきまでブランブランと体を動かしまくって、暴れていたが、ぶん殴ったら、シーンとおとなしくなった。




それにしても危なかった...手刀で気絶させようと思っていたのに、ぶん殴ってしまうとは...


ファントムスネークが硬かったから無事に済んだが、もしそうではなかったら、俺の拳は、ファントムスネークの胸部を貫いていただろう。




そうなってしまったら、俺のヒースの三日分の苦労が水の泡。


ふ~....本当に危なかった。




俺はすぐにヒースのもとに向かい、報告する。


「捕まえたぞ、ヒース」




ヒースは、うれしがる様子はなく、まだ落ち込んでいる。


「私のせいで...面倒なことになった....ごめんなさい...」




うつむきながらも、俺に謝罪する。


俺は、そのうつむいている頭に自分の手を乗せ、




「そんなこともあるよ、まな今度がんばろう?」


ヒースは、少し落ち込んではいるが、こっちを見て、




「うん...頑張ってみる....」


ヒースにしては、元気がないな...そんなに落ち込む程か?




「もう暗いし、野宿するから、準備手伝ってくれよヒース」


こうして俺は、野宿の準備をするために、ヒースに協力を呼び掛けた。

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