第14話

俺は今、超高級レストランのシアルアに来ている。


しかも、ユリマよりも早く来てしまい、座って待っている。




周りの人たちはとても豪華な服装で、俺はいつもの生活服。


うん!予想どうりめっちゃ目立ってるね!




俺がヒソヒソしながら待っていると、少しおしゃれな服装の赤い髪の少女が店内に入る。


「あ!お待たせしてすみません!」




ユリマが頭を下げて謝罪する。


「いえいえ、私も今来たところです」




実際は1時間前からきてましたけどね....


ユリマは30程遅れてきて、俺は念のために30分前に来た結果、1時間も待つはめになった。




これからは30分前行動はやんないようにしよう....


そう心で決めていると。




「今回は、うちの先輩が危うくあなたのことを殺しかけたので、そのお詫びということなので、なんでも食べてください!」




はい、本当に殺されかけました。


たしか~、アリスだったっけ?できれば敵に回したくないな....てかユリマって貴族なのか?




「それじゃあ私は、すみませ~ん店員さ~ん」


ユリマが、シアルアの店員を呼ぶ。




「お待たせたせ致しました、注文でしょうか?」


「はい!えっと~私はこのローズベアのホワイトシチューで、あなたは何にしますか?」




え、あ、俺?


「俺も同じやつで!」




どうやら緊張しすぎてしまったようだ。


「承知いたしました、少々お待ちください」




このレストランはフルコースではなく、単品注文のようだ。


店員が去ってから、ユリマが話しかけてくる。




「こんな時にまで他人行儀なのもあれですし...名前を教えてくれませんか?」


「俺は、アキト、普通の冒険者です」




ちょっと緊張しすぎじゃないか?俺...


「私の名前はユリマ・フェーネス・ローファスト、気軽にユリマって呼んでください」




わぉ...ガチガチの貴族だ....


「その~、今回の件はですね....反社会的思想を持っている精霊使いを抹殺するっていう、上からの命令なんですけど...」




いや、どんな命令よ....少し調べてみるか、白教会とやらの存在も気になるし。


「うちのアリス先輩が、とりあえず精霊使いは殺すみたいな命令と勘違いしたみたいで...」




どんな勘違いだよ..


「本当に申し訳ございません!」




「いえいえ、こちらもケガはなかったので別に気にしてません」


そういった瞬間、ユリマの顔は笑顔にに変わり。




「本当ですか!よかったです....」


ユリマが安堵していると。




「お待たせ致しました、ローズベアのホワイトシチューです」


おぉ....これは実にうまそう...




見た目は至って普通のホワイトシチューだが、使われている素材のことを考えれば、かなりお高いことは確定....こんな物を食べる機会はそうそうないだろう。




俺は恐る恐るスプーンでシチューを口まで運ぶ....


口の中でゆっくりと溶けていく肉...なめらかなホワイトソース....




「うまい....」


そう言って、どんどん食べ進めていく。




「それはよかったです!あ!本当だ!おいしい!」


こうして、かなりのスピードで食べてしまい、5分程で食べきってしまった。




「ごちそうさまでした....」


手を合わせて感謝。




そのあとに会計に行ったが。


「お値段、金貨10枚になります」




は?...高すぎでしょ.....


だがミーナは当然の様に金貨30枚を渡す。




「またのご来店をお待ちしております」


ペコリと頭を下げて店員は言う。




来たくても、払えない...


俺の全財産が底をつくほど高かった....




「それじゃ、アキトさん!さよなら~」


ユリマはそう言って走り去っていく。




俺はこの状況を一言で表すとすれば。


「貴族すげぇ....」




としか言いようがなかった。


ユリマって...貴族の中でも上流階級なのだろうか?




こうやってお詫びをしてくれることはうれしいのだが、少し気になることがある。


「その~、今回の件はですね....反社会的思想を持っている精霊使いを抹殺するっていう、上からの命令なんですけど...」




なぜ精霊使いを殺すような命令が下っているんだ?


白教会の拠点に潜入して、情報を盗むのもいいかもしれない。




だが不安なことが一つだけある。


「アリスに見つかれば終わるな...」




白教会の総督幹部のアリス...見つかれば、逃げることはほぼほぼ不可能。


俺は、アリスに会わないことを祈りながら、白教会の潜入を決めた。

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