第9話

俺は今、新しい水魔法を作るために、また森で試行錯誤していた。


防御、破壊、回復は普通に水魔法で十分なのだが。




陰密、俊敏などが少し不安である。


俊敏は身体能力の向上によってギリギリカバーできるが陰密がなぁ...




森の中を歩き回って考える....


「ん?雨?」




急に雨が降ってきた、スコールだろうか?


俺は雨宿りをするために、大きな木の下に移動する。




「しっかしまぁ急に降ってきたな...」


地面を見る、そこには当然のことではあるが草が茂っていて、ところどころに池がある。




ん~、できるかわからないが体を水に変えて高速移動なんてできるのかな?


俺は、体が水でできているような意味が分からないイメージを想像し、そこに魔力をこめたが。




「そうですよね~」


そんな都合の良いことが起こるわけもなく失敗に終わる。




う~ん、体が水になるのが無理ならもう陰密はあきらめた方が良いかもしれないと思った俺は、俊敏に力を入れる、血管や筋肉などにキュアウォーターの浸透性のある水を入れて、それを使って高速移動なんていうのはどうだろうか?




「キュアウォーター」


体のどこかを治療するのではなく、全身に水を行きわたる。




いきわたったことを確認した俺は、右足を前に出すのと同時に体内にある、右足の部分の水を前に進ませる。




そうした瞬間に、俺はもともといた場所から2メートル程移動していた、。


「おいおい嘘だろ...」




高速移動...できちゃったよ...


う~ん名付けて、




「ブラッドウォーター」


って感じかな?実際のところ、全身がものすごいくらい痛い。




「練習あるのみ!」


俺はブラッドウォーターを使いこなすために、その日はずっと練習していたが。




とある改善しなければならない欠点を見つけた。


血管などにもキュアウォーターの水がいきわたっているが、それ以外にも筋肉にもいきわたっているが、その水を移動させる時の力が強すぎて、筋肉が破壊されていく。




その結果、キュアウォーターが流れるところには、ウォーターシールドのような高密度の水をつけて、破壊ではなく圧迫に変えた。




結局のところ痛いのだが、筋肉自体は破壊されないのでましというところだろう。


そしてさらに練習、最終的にはその日の練習で1分間は高速移動ができるようになった。




今日はここら辺にするか....


俺はヒースがまだ眠っている宿に向かう。




その途中で、騎士団の人間から話しかけられる。


「すみません、ギルドプレートを持っていますか?」




ギルドプレート?なんのことだ?


「あ!いやすみません、見た目が冒険者のようでしたので、あなたの知り合いに精霊使いがいるのであれば騎士団本部、もしくは白教会、黒教会までくるように協力してください」




そう言って、騎士団の男はどこかに走っていく。


ギルドプレートってこれのことか?




ポーチに入れている白いプレートを見る。


      アキト 白級


職業 精霊術師


出身地 カロース村




う~ん、俺は精霊術師だから、教会とか本部には行かなくていいよな?....


俺は、宿で未だに寝ているヒースを起こしてギルドに向かう。




ギルドに入った途端、一つのことに気づいた、いつもよりなにか慌ただしい。


「みなさん!緊急クエストです!デビルウルフがロック森林で出現しました!」




受付人のこの一言で、ギルド内が静まり返る。


そもそもデビルウルフとは、魔族の初級種の中で5本の指に入る程強力な個体で、デビルとついているように、全身が赤黒い毛で覆われていて、爪を一振りすれば大地は裂け、人間であるならば全身が離れ離れになることは避けられないだろう。




「クエスト開始時刻は22時、大規模戦闘が予想されるので、回復師の方はこちらに来てください!」


受付人が情報を言い終わるとともに、先ほど静寂に包まれたギルド内とは思えないほど、ギルド内は騒がしくなった。




その中で一人の男が声を上げる。


「みんな!今回のクエストは団結が命だ!クエスト開始まで時間はある、作戦会議をしないか?」




「おいおい、銅級戦士のカーネストじゃねぇか?あれ!?」


カーネスト?確か~下級職の戦士なのに銅級まで上り詰めた、凄腕の大剣使い?だったっけ?




カーネストが大きな声を出して、作戦を説明する。


「今回のデビルウルフは、合計三体で、その中の一体がかなり成長した個体のようだ、一気に全員で戦うのはあまりにも無謀だ!だから、一体一体チームで分けて討伐しよう」




こうして、俺は成長した個体を討伐するAチームに配属された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る