第6話
俺は今、一人でロック森林に来ている。
なんにしろ、身体能力や魔法が使えたとしても、正確に扱うことができなければ意味がない。
ちなみにヒースは宿で眠っている。
まぁ、ヒースばっかりに任せておいては申し訳ないし、どっちみち俺は...
そう考えながらも、魔法の練習をする。
「ウォーターキャノン」
水の塊が木に当たる。
見事にギシギシと音が鳴りながら、倒れる。
「少し弱いな...」
ヒースがオークに喰らわせたウォーターキャノンよりかは威力が低い。
その次は、身体能力の向上と防御系の魔法を試すために実戦をしていた。
「相手はランテージベアか....」
全身が鋭利な毛で覆われていて、大型のくせに素早いのが特徴、変異種のオークには及ばないが、それでもかなり強い魔物だ。
まずは、魔法の確認をしてみよう。
「ウォーターキャノン」
水の塊をランテージベアに当てることはできたものの、ヒースがオークに放ったものほどダメージを与えることはできなかった。
ランテージベアがこちらに向かって走ってくる、爪を振りかざし、俺に対して振り下ろす。
「ウォーターシールド」
俺は片手に水の盾を作り、攻撃をはじき返しランテージベアが怯んでいる隙をつき、八の首元をつかみ回転するように体を動かし、それと同時に首をナイフで切り落とした。
「いって...」
アンテージベアの首元をつかんだ時に、毛が手に刺さったようだ。
身体能力が上がったとしても、体が硬くなるなんてことはないようだ。
「キュアウォーター」
手の傷がみるみる治っていく。
「いやはや...便利だな~、精霊術師のスキルは...」
精霊術師のスキルは、自分が契約した精霊が扱うことができるもの劣化版が使えるというスキルだ。
それにともない、おまけ程度で身体能力が上がるようだ。
ランテージベアの毛と肉をはぎ取りながらも少し考える。
「最近物騒なことが多いよなぁ...」
最近、精霊使いが白教会や黒教会なんていう奴らに殺されるなんて言う話が出てきている。
俺も、一応精霊を扱うジョブなので気をつけたいところではある。
肉をはぎ取り終わった後に、魔物のことを扱う専門店に行った。
「すみません、魔物の素材を売りたいのですが...」
そう言って、会計の場所にランテージベアの毛と、肉を置く。
そうすると、奥から年老いたおじいさんが出てきた。
「やぁお兄さん、売り出しかな?」
ひげを触りながら俺に問う。
「はい、ランテージベアの素材を売りたくて」
そういうと、おじいさんは驚いた顔をして。
「お兄さんがあのランテージベアを..倒したのかい?...」
「はい、ギリギリでしたけどね...」
実際のところは、そこまで苦戦はしていなかったが、自慢できるほどすごくはないので黙っておく。
「この素材っていくらぐらいになりますか?」
「う~ん..ざっと銀貨40枚でどうかな?」
おぉ...意外と高いな。
「分かりました、ありがとうございます」
そう言って、その場から去ろうとすると、おじいさんに腕をつかまれる。
「何か用でも?」
「お兄さん...少し賭けをしてみないか?」
おじいさんがにやりと笑いながらも俺に問いかける。
「お兄さんを見る限り、戦士や盗賊の初級職の類じゃないだろう?防具はローブだし、急所を守るのは鉄のプレート一枚、一見魔術師に見えるが杖を持っていないし、武器はナイフ一本、精霊使いの類かな?」
このおじいさん...鋭いな....
「そんなお兄さんに提案があるんだが...」
俺は固唾をのみ、おじいさんの話に夢中になる。
「俺と賭けをしてみないか?」
は?賭け?
「最近俺も暇してんだ、金には困っていねぇが暇で暇で、スリル好きの俺からしたら退屈で仕方がねぇんだよ」
「ルールは至って簡単、単なるポーカーだ、俺が負ければお兄さんには鋼のナイフをくれてやる、もしお兄さんが負ければ...そうだな、さっきあげた銀貨40枚に、持っているんだろ?変異種の核を?」
このおじいさん...鋭すぎだろ...
「えぇ...持っていますよ、核を」
「何なら、鋼のナイフに、その核を調合してやってもいいぞ?」
この賭けは...かなりうまいものかもしれない。
そもそも変異種の核とは、その名の通り、同じ種族を喰らい、細胞と適合した変異種が成長の過程でできる、魔力の塊、それは表向きの市場ではまったくもって販売なんてされないが、闇市場などでは、一年に5回ほどのペースで取引される。
しかし、何故表向きの市場で取引がされないのかというと、核がまとっている魔力が濃すぎる、としか言いようがない。
この核を一般人が触れば、核の魔力が全身に侵食していき、体がボロボロになって死んでしまうのがオチだ、だから武器との調合も只者ではろくに触ることもできない。
「その賭け、乗りますよおじいさん」
少々失うものが大きすぎるが、こちらも調合できる人がいなさ過ぎて困っていた身だ、文句はいえないだろう。
こうして、リスクがとてつもなく大きい賭けが始まった。
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