第5話

「契約、結ぶ?」


目の前に現れた少女が俺に対して問う。




「精...霊?....」


よく見ると、オークが振り落としたこん棒は、少女の手から出ている水の壁のようなもので抑えられている。




「契約、結ぼ!」


少女が乗る気で、俺に手を差し伸べる。




何が何だかよくわからないが、俺は少女の手を握り、


「これからよろしく頼む」




その瞬間、周囲に青い光が広がる。


オークから受けた攻撃の傷も治っている。




「よろしくね!ご主人様!」


そう言って少女は、水の壁を押し出し、オークを突き飛ばした。




「少し魔力借りるね!」


そう言って、少女は魔法陣を展開し、




「ウォーターキャノン!」


オークにめがけて高密度の水の塊が放たれる。




それは見事にオークに当たり、オークは地に伏せる。


「君の名前は?...」




俺は目の前の水色の髪の毛の少女に問う。


「私の名前はヒース、ご覧のとうり水の精霊だよ!」




「俺はアキト、よろしく」


これでようやく、精霊術師のスキルが使える。




「もしかして、ヒースが俺のことをずっと見てたの?」


最初のクエストの、クラッシュボア撃退の時に、森に入ってからずっと誰かの視線を感じていた。




「あらら、ばれちゃってた....」


ヒースが頭を掻きながら、俺のことを上目遣いで見る。




「なんでずっと見ていたんだ?」


「う~ん...ご主人様が精霊を扱えそうな雰囲気だったから..としか言いようがないかな?..」




しかし...奇妙だな...精霊ってもっと小っちゃいはずなんだが...


これがミーナが言っていた、総合的な力が何倍にも飛び上がるってことか?




「とりあえず、オークも倒したし、ギルドに戻るか...」


俺はオークの耳を忘れずに切り落とし、ヒースと共にギルドに戻った。




ギルドに戻る最中にものすごいくらいの視線を感じたが、気にせずに直進した。


受付人に変異種のオークの耳を渡す。




「こ...これは?...」


受付人が俺に対して問う。




「オークの耳です」


ピカピカの笑顔で答える。




「いやいや...これ変異種ですよね?...」


「報酬をください!」




そして俺は、報酬の金貨三枚を手に入れ、宿に泊まった。


「ヒース...その~...どんな服が欲しい?..」




今のヒースは、白いワンピース一枚だけで、女の子の服装にしては危なすぎる。


「ご主人様が選んでくれるなら何でもいいよ~」




ヒースは俺が先ほど受付人に対してやった笑顔よりもさらにピカピカの笑顔で答える。


「分かった、じゃあ..服屋行くか...」




こうして、俺は少々恥ずかしながらも女性専門の服屋に行った。


ヒースの髪の毛が青色だから....でも戦闘向けにしたいからな..




悩みながらも俺は、ヒースの服を決めた。


「ヒース!これはどうだ!」




そう言って、俺は考えぬいた服をヒースに見せる。


「いいんじゃない?色合いもきれいだし!」




「よかった...」


俺が選んだ服装は、青と白が混ざっているワンピースだった。




「で?ご主人様、下着はどうするんですか?」


あ...忘れてた....




そのあと、恥ずかしすぎて死にそうになったが、なんとかヒースの服を調達できた。


「ヒース、俺は風呂入ってくるから、少し待っていてくれ」




「わかったよ~」


俺が今止まっている宿は、一つ一つの部屋に風呂がついている。


さすが銀貨5枚も払った甲斐があるな!




なんたって今の俺には金貨三枚銀貨3枚もあるんだからな!


これでしばらくの生活には困らないだろう。




しかし、どうしたもんか。


変異種のオークを一発で仕留める精霊....精霊術師って結構強いのか?




そう思いながら、手をかざし、言葉を発する。


「ウォータシールド」




目の前に、水の盾ができる。


「これが、精霊術師のスキル...」




顔のにやけが止まらない。


なんたって、魔術師や精霊にしか使えない魔法が俺にも使えているのだから。




俺は、水の盾を片手で握り潰す。


やはり身体能力も格段に上がっている。




これが上級職...これで、やっと復讐の一歩か....


そう、喜んでいると。




「ごっ主人様~!」


大きな声を出しながら風呂に入ってくる。




「ちょ!おいヒース!待ってくれと言ったじゃないか!」


「待ちきれなかった★」




こうして、静かな雰囲気になるはずが、とても騒がしくなった風呂場であった。


「ご主人様~、洗ってあげますよ~!」


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とある場所。


「珍しいですな、No.1が緊急招集とは」


一人のひげを生やした、ローブを羽織った人が問う。




「何か緊急事態でも起こったんですかい?」


「No.5!無礼が過ぎるぞ!」




「まぁまぁいいじゃないですかNo.6」


「それで、説明を聞きましょうか、No.1」




「第五の精霊術師が現れた」


この一言によって、その場が静まり返った。




「第五の.....精霊術師?....」


「そんなわけありません!術師の血脈は現魔王誕生時に途絶えたはずです!」




「今回の精霊術師は、血脈ではなく、純粋な覚醒です」


「なん...てことだ.....」




「私からは、白教会、黒教会に、精霊術師の抹殺を仕向けましょう」


「それでは、みなさん、これにて六賢会議を終了させていただきます」

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