第4話
結局、精霊の領域とやらはどこにあるのだろうか、そう思いながらも掲示板の紙を見る。
その中に、俺が受けれるクエストにしては報酬が破格の金貨3枚のクエストがあった。
クエスト内容を見ると、黒星が一つついていた。
黒星とは、そのクエストを失敗した場合につけられる。
詳細を見ると、黒級の3人パーティーが全滅したそうだ。
「面白そうだ....」
気づいた時には、もう紙を受付人に渡していた。
クエストはオーク一体の討伐、どうやら緊急の討伐クエストのようだ。
しかし、黒級のパーティーが全滅とは、少し嫌な予感がする...黒級ともなれば単独でオークを討伐できるはずなのだが...しかし、これだから討伐クエスト程たぎるものはない。
また、クエストの現場はロック森林、この前よりも少し薄暗くなっている、ほとんど生気が感じられない、おそらくオークを恐れて逃げていったのだろう。
まさか、変異種?
しかし、オークの変異種ともなれば、黒級どころではすまないだろう。
「討伐できるかな?...」
今の俺の持ち物は、投げナイフ20本、簡易爆弾4個、ナイフ一本....行けるか?
そう思いながらも、オークを探す。
「これは...ひどいな..」
ゴブリンの群れが、ぐちゃぐちゃに潰されていた、オークにやられたか...
その奥には、大きな足跡があり、かなり最近にできたものだろう。
ナイフを構え、投げナイフを両手の手甲に5本づつはめる。
目の前には、通常の個体とは違い、全身が真っ黒のオークが立っていた。
やはり変異種のオークだったか...
そもそも変異種とは、自分と同じ種族を喰らい、自分の細胞と適合することによって、身体能力を何倍にも強化することができるのだが、適合する確率はかなり低く、適合したとしても、自我が保てなくなり、自滅することがほとんどだが、その中で自我を保ち、生き残った個体が討伐クエストの対象となる。
さて...討伐しますか...
まず、オークの急所は、首の周りが狙いやすい、
俺は、気づかれないように後ろから接近し、オークの首に向かってジャンプし、それと同時にナイフを突き刺し、周辺の肉をえぐり取る。
「グルルルル」
急所をえぐりとったというのに、痛がる様子はない、さすが変異種といったところだろうか。
オークを蹴り、その勢いを利用し距離を取る。
さぁ、ここからどうするか....オークは力こそ強いが、動きはとても鈍い。
まずは目を潰すか、手甲にはめている投げナイフをオークの目に向かって投げる、しかし、それはオークのこん棒によって防がれた。
しかし、こん棒によって視界を遮る隙を突き、オークに接近し、スライディングで懐に潜る、その時に両足のアキレス腱を切り、オークの背中の肉をつかみ、オークの肩に乗り、目をナイフで切る。
そこで気づいたことがあった、
「傷がふさがってきている...」
俺がさっきえぐりとった部分が少しずつふさがってきている。
「回復量に勝る攻撃をしないといけないのかよ..」
そう言っていると、オークは肩に向かって手を振りかざす。
「やべ!」
俺は全力でオークをまた蹴り、はたかれる前にオークから降りた。
「どうしよ...倒せねぇ...」
今の俺では、オークの回復量に勝る攻撃手段は簡易爆弾しかないな...
しかし、この簡易爆弾はひもを引っ張った瞬間に爆発する、いわば最後の切り札だったんだが...
「4個同時か...俺の体もつかな?....」
少々不安だが、やるしかないだろう。
4個の爆弾のひもを結び、同時に起爆できるようにした。
オークに向かって走り、当然オークも反撃してくる。
上からこん棒を振り落とす、俺はそれをサイドステップで避けて、オークの口を切り裂き、瞬時に簡易爆弾を入れて起爆する。
爆風に巻き込まれて、俺は木にぶつかり、ちょいと頭を強く打ってしまった。
「こりゃ、やったろ...」
オークの姿を確認したが...
「嘘だろ...おい....」
少ししか効いていないようだ....
「さすが変異種...化け物だな...」
ドシドシと大きな音をたてて、俺に向かって一歩ずつ近づき、こん棒を動けなくなった俺に向かってぶん回す。
遠くに吹っ飛ばされ、また木にぶつかる。
オークがトドメを指すためにまた近づき、こん棒を振りかざしたときに、
「契約、結ぶ?」
と、少女の声が聞こえた。
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