ゲーセンデビュー──③

 その後レースゲームで無双し、格闘ゲームで蹂躙する美南。

 少し見て、ルールや操作を1回でマスターする。

 ぶっちゃけチートすぎる。異世界転生したら、間違いなく勇者候補筆頭だ。



「ゲームセンター、楽しいですねぇ」

「これだけ暴れてたら楽しいだろうな」

「これからはリアルゲームセンターあ〇しを名乗ろうと思います」

「あんな超人技、お前でも無理だろ」

「2つくらいはできますよ」

「できるんかい」



 あんなの素でできるとか人間じゃねぇ……。


 ゲーセン内にある休憩スペースで、お茶を飲みながら一時休憩。

 もうあらかたやり終えたかな。

 時間も16時だし、結構遊んだ方だろう。



「あとやってないのは、ガンシューティングゲームくらいか」

「がんしゅーてぃんぐ?」

「銃の形をしたコントローラーで敵を撃つんだ。ゾンビだったり、テロ組織だったり」

「おおっ、やります! やりましょう!」

「2人プレイできるから、一緒にやろうな」

「はい!」



 シューティングコーナーに向かうと、丁度1台が空いていた。

 隣では別のカップルがキャイキャイ言いながら遊んでいる。

 ふっ、チャラチャラしおって。


 ガンシューティングにその程度の心持ちで向かうなど、笑止千万!



「美南訓練兵。ここからは戦場である。気を引き締めて敵を殲滅するのだ」

「え、何ですかそのノリ。裕二君大丈夫?」

「馬鹿者! ここでは私のことは軍曹と呼べ!」

「えぇ……」



 そう、何を隠そうこの俺、ガンシューティングガチ勢でして。

 特に冬吾や彩香とタッグを組んでやる時は、ワンコインで最終ステージまで行くほどなのだ。



「お手本はいるか?」

「いえ、大丈夫です。あの人達のを見て、何となくわかりました」

「流石だ。ではゆくぞ!」

「はーい」

「返事はイエッサーだ!」

「い、イエッサー!」



 コイン投入。

 ゲームが開始され、少しだけバックストーリーが流れると直ぐにゾンビの群れが来た。



「美南訓練兵、行くぞ!」

「このノリ疲れるなぁ……」

「返事はイエッサーだ!」

「イエッサー!」



 襲いかかってくるゾンビを迎え撃つ、撃つ、撃つ。

 連射し、リロードし、また撃つ。

 よしよし、いい調子だ。久々にやったけど、腕は衰えてないな。

 さて、美南はどうだ?


 横目で美南を見る。



「ふっ──!」



 お……おおっ? なんだ、すげー様になってる……!


 構え、一糸乱れぬ動きで狙い、残弾数を計算して最適なフォームで撃ち続ける。

 明らかに初心者の動きじゃない。


 周囲からも、俺と美南の動きで歓声やざわめきが起こっていた。



「美南訓練兵ッ、貴様初めてじゃないな!」

「イエッサー! ハワイで親父に習いました!」



 それどこの少年探偵?


 軽口を叩きながら無双、殲滅、蹂躙。

 雑魚も中ボスもボスも、全て撃ち漏らすことなく倒し。

 遂にラスボス。



「くっ、堅い……!」

「諦めるな美南訓練兵!」

「ですが軍曹!」

「とにかく撃ちまくるんだ!」

「イエッサー!」



 巨大すぎるゾンビを相手に2人で連射。

 こいつは3回変身をするタイプのボス。正直、素人はこいつを攻略するのに手間取るだろう。


 だが俺の意図を汲み取った美南が俺に合わせて残弾数をコントロールし、攻撃を途切れさせることなく撃ち込み続ける。


 まるで初めてとは思えない美南とのコンビネーション。

 数分の激闘の末、遂にラスボス巨大ゾンビを倒すことができた。



「やったー! 勝てましたー!」

「よくやったぞ、美南訓練兵。今日からお前は二等兵に昇進だ」

「あ、このノリまだ続けるんですね」



   ◆



「ぷはーっ! 満っ足……!」



 結局美南がガンシューティングにハマり、3回プレイして終了。

 再び休憩スペースで休憩だ。


 流石の美南も疲れたのか、俺の肩に頭を乗せてまったり中。

 まあ、あれだけ大暴れしたら疲れるだろうな。

 まさに、リアルゲームセンターあ〇し。


 ……ん? スマホが……。



「冬吾?」

「メッセですか?」

「ああ。……これ見ろ?」



 なんだこれ、URL?


 ポチッとな。



「ぶっ!?」

「な、なんですかっ?」

「こここここれっ」

「なになに? 『【女神】読者モデル、ナミちゃんがゲーセンで無双【可愛すぎ】』……何ですかこれ?」

「今日のことが動画や写真に撮られて、SNSやウェブでまとめられてるんだよ……!」



『クレームゲームうますぎて草』

『猫ぎゅーかわえー』

『おい猫そこ変われ』

『メダルゲームでここまで積まれたの初めて見た』

『大箱8箱wwwwww』

『やべぇwww』

『意味わからんw』

『お、パンチングマシンか』

『旦那さんふつーに強い』

『↑俺のが強いわ』

『↑聞いてない』

『ちょwwwナミちゃん300オーバーwww』

『wwwwwwwwwwww』

『なんやそれwww』

『草も生えない』

『ゴリラかな?』

『最強夫婦爆誕』

『意味わからない』

『これで全国ランキング2位とかやば』

『1位のバケモノ感』

『お、次はシューティングか』

『旦那うま』

『ナミちゃんもうめぇ』

『ノーダメ攻略とか』

『何だこの夫婦www』



 すげぇ盛り上がってるけど、やっぱこうなったか。



「ふふふ。私達の仲睦まじい姿を世に知らしめることができましたね」

「あんま目立ちたくはなかったけど……今更か」



 美南と顔を見合わせて苦笑い。

 ドタバタしたゲーセンデビューだったけど、美南も楽しんでくれたみたいだし……結果オーライ、だな。

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