荒療治──③
◆
「生裕二君はダメです! 輸血必須レベルで私の体がもちません!」
「輸血が必要なほど鼻血を出す美南が心配なんだが」
「なので暫く生裕二君の裸体は禁止とします」
裸体どころか腕捲ったり腹見せたりしただけなんだけど。
床に撒き散らされた鼻血を綺麗に拭き、改めて美南と向かい合う。
「今日のことで1つ、わかったことがあります」
「どうぞ」
「生裕二君のお腹や腕等の裸体は、私には刺激が強すぎて鼻血ブーです」
美南は、口の前で人差し指でバッテンを作る。
「逆に、高瀬君から送られてきた生着替えのエロ画像。あの時は気絶せず、また鼻息ブーも耐えられました」
「結果的に見たらな」
「その結果が大事なのです! 鼻血を出さず、気絶せずに済んだという事実こそが全て!」
俺の着替え盗撮写真で気絶しなかっただけで何で自慢げなのこの子。
「つまり、生じゃなければいいのです。
「おいこらお前わざとだろ」
「なんのことです?(きゅるん☆)」
ちきしょう、可愛い。
まあ、美南の言いたいことは何となくわかった。
……こんなことわかる時点で、俺もだいぶアレな気がするがそこはスルーで。
「つまり、俺の半裸の写真や映像を見ていけば、いずれ耐性ができるって言いたいのか」
「その通り! なので裕二君、是非ともどエロいポーズで自撮りをお願いします!」
問。旦那にどエロいポーズを要求してくる嫁をどう思いますか?
答。可愛い。
……なんかラブコメラノベのタイトルっぽくなったな。
でも可愛いんだ。一生懸命苦手なものを克服しようとする俺の嫁、可愛いんだよ。
ただ、1つ問題がある。
……問題が1つだけじゃないというツッコミはなしでお願いします。
「どエロいポーズって言っても、俺そんなのわかんないんだけど……」
「ふふふ……ご安心ください。ここにいる私をどなたと心得ますか」
「おっさん系お嬢様下ネタ大好きヒロイン」
「……つらつらと淀みなく言われると、私だって傷付くんですよ?」
ごめん、つい本当のことが。
床に『の』の字を描いて落ち込む美南。令和のこの時代にそんなベタな落ち込み方せんでも。
しかし美南は直ぐに立ち上がると、「こほん」と咳払いを1つ。
「改めて……この私、自慢じゃないですけど読者モデルをしています。写真写りに関しては、そんじょそこらの女性よりいいと自負してるつもりです」
「……まさか?」
「そう! そのまさかです!」
ピンク色のカバーを付けたスマホを高々と掲げ、俺に向けてビシィッ! と振り下ろし。
「この私が、えちちなポーズと言うものを伝授してあげましょう!」
また頭の悪いことを言い出した。
◆
『それでは、私が出てくるまでここの扉を開けてはなりませんよ』
と鶴の恩返し的なことを言って寝室に閉じこもってしまった。
それから30分。まだ部屋から出てこない。
俺も俺で、授業の復習と予習を進めてはいるが……正直、気になりすぎて集中できない。
だってあの学園の女神。全校生徒の憧れの的である美南が、俺のためだけにどエロいポーズで写真を撮ってると思うと……ドキがムネムネして俺の息子が大変なことに。
ちきしょう、これ我慢するの辛すぎる。
てかよくよく考えると、美南と暮らしてから自発してない。
つまり、これはかなりアレな感じだ。
よく耐えてる俺を誰か褒めて。
そわそわ、そわそわ。
直後──リビングの扉が、ゆっくりと開いた。
それから、ひょこっと顔の半分だけを覗かせる美南が。
「み、美南? どうした?」
「……冷静になってみると、とっても恥ずかしいことをしてるような気がして……」
「大丈夫、それはいつもだから」
「私っていつも恥ずかしいことしてるんですか!?」
うん、だいぶ。
美南はしょぼんとしたが、直ぐにぶんぶんと頭を振った。
「あの……見せなきゃダメ、ですか?」
「え……あー……いや、大丈夫だよ。見れないのは正直残念だけど、美南が恥ずかしいなら無理をする必要はない」
それに、今どきポーズなんてネットで調べられるし。
「い、いえ。これでも私は読者モデルの端くれ……それに、裕二君がどエロい自撮り写真をくれるなら、私も差し上げないと不公平というもの!」
律儀なようで、急に覚悟を決めた顔になったな。
扉越しに、スマホを操作。
直後、俺のスマホがピコンと鳴った。
「は、恥ずかしいので、1枚ずつ送ります……」
「お、おう……」
メッセージアプリ、オープン。
最初に目に飛び込んできたのは、自信満々でドヤ顔をした美南の自撮り写真だった。
腕を上げて、斜め上の角度から撮っている。
うーむ、さすが読者モデル。自分が可愛くて写る角度を弁えてる。可愛さ50パーセントマシマシ。
次に来たのは、薄手のシャツにショルダーバッグを斜め掛けしている姿。
文字にするなら『
なるほど、確かにこれはエロい。つかヤバい。
「つ、次が最後ですが……ごめんなさいっ、これが限界でしたっ!」
ピコン。
「────」
……これ、は……女神だ……。
羞恥からか顔だけじゃなく、耳や鎖骨まで真っ赤になっている。
薄手のシャツをたくしあげて見えるのは、綺麗な縦線の入った腹筋に、形のいいヘソ。
そして極めつけが──下乳。
そう、そこにあるはずの
「こ……こんな、感じ……でしゅ……」
「お……ぁ……ぅん……」
その後1時間ほど、なんとも言えない空気が俺と美南の間に流れた。
因みに全ての画像はありがたく保存させて頂きました。ありがたやありがたや。
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