革命的レヴォリューション
たとえば真白と言ったらそれだけで白の最上級みたいかもしれないけど、わたしは
マニアックを旨とする。
だから、真白い純白、って更に超えていく。
「
「諾」
「ジェト!ハーレーを横付け!」
「了解よぉ」
「教官殿!」
「うん!」
わたしがそうしていいのかどうか何度も逡巡したけど、是非もないよね。
「女神様をお抱きください!」
「分かった!」
日本の最新鋭の火葬場に導入されている棺桶を職員1人で運搬するための電動カーゴを鬼選は調達していたので、女神様をその台上にお移ししてからわたしも隣に座る。
座ったままで、女神様のその上半身の腕のない彫像と抱き合った。
わたしはさ、男子と付き合ったことなんて無いけど、きっと彼氏と抱き合ったところでこんなに切なくはならないだろう。
胸が苦しくはならないだろう。
畏れ多いことだけど、女神様をわたしは独占して、そしてわたしの躯体は彼女を感じている。
「教官殿!決して離さないでください!」
カーゴでコンドミニアム内を梨子と鬼選が横に着いてジェトが回したハーレーを目指す。
「マニアちゃぁん!」
ジェトはバイク本体に跨ってサラブレッドを御すような極端な前傾姿勢に腰を浮かせている。ハーレーのフォルムならばあり得ないのだけど。
「教官殿!」
「うん!」
カーゴからサイドカーに、女神様とわたしは移る。
向かい合って抱き合ったまま。
サイドカーのシートの背もたれに鬼選がつい先日開発完了したばかりのシャボン玉すら押しつぶさないレベルの緩衝材を貼り付けて女神様がお座りになり。
わたしはその女神様に、正面から抱きつく形になる。
「淫靡」
「鬼選!おかしなことを言うなあっ!」
厳格な梨子はそう言ったけど、わたしはさっきから鬼選が言うような淫靡さに肌の中芯から熱さが表皮へとにじってきている。
おかしなところに汗をかいている。
「ジェト!行け!」
「OKよぉ!」
梨子のハーレーの操縦も素晴らしかったけど、ジェトは概念が全く違った。
ジェトはこの重戦車のようなハーレーのサイドカーを、ツール・ド・フランスで初日から最終日まで誰にも抜かれずに先頭を走り続けた英雄のようにライディングした。
ハーレーを、超超軽量のロードレーサーのように駆った。
「マニアちゃあん、歯を食いしばっててねぇ!舌噛むわよぉ!」
ジェトに言われるまでも無く、女神様と抱き合った時点でわたしのカラダは力みで硬直して奥歯が欠けそうなぐらいに噛み合わせている。
街の空は赤の上に、黒い雲。
雲には、黒煙が溶け込んでいってる。
日本の時刻の言い回しで言えば丑三つ。
「マニアちゃぁん。まさかクーデターが起こるなんてね」
「ジェト。違うよ」
「えぇ?」
「革命だよ」
わたしは見たんだ。黒煙の元になっている火薬の青が強い炎の正面に立って、銃じゃなくってサーベルをベトナムの空に向かって右手の肘を反るぐらい真っ直ぐに・右耳にピッタリと当てて突き貫くその少年が。
その勇姿のシルエットが。
帝室の末裔たるあの兄だった。
「革命、だよ。あの子には信念みたいなあやふやなものじゃなくって植民地に成り果てなければ正統なこの国の誠を貫いていくその精神が漲ってるんだもん」
「マニアちゃぁん。彼に、惚れたなぁ?」
「そうかもしれない」
けれどもわたしは女神様の胸にわたしの胸を押し当てている。
どちらも、好き。
どちらも、淫靡。
「マニアちゃぁん。女神様はどちらを支援するかしらぁ?」
あの子が率いる勇敢な部隊は男子だけじゃなくって女子も大勢加わっている。
銃じゃなく、みんなサーベルを携えて。
火器は、ベトナム戦争時にゲリラ戦の中で使用された、火炎瓶に近い仕組みのプリミティブだけれども洗練された武器。
そうして、あの子の敵の一団は最新の地上戦の軽火器から銃火器まですべてを装備して。
さらに後方には戦車でもなくドローン爆撃機でもなく、そいつが控えてる。
地上30cmほどを静止のようにホバリングする、UFO。
「女神様がどちらを支援するかなんて、決まってる」
「そうよねぇ」
だってこれは革命的だから。
革命の定義すら清涼で清新なものへと塗り替える革命だから。
あの子と若きベトナムの戦士たちのこの行為は革命を超える革命。
革命的革命。
The Revolutionary REVOLUTION !
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