既成事実が人生さ
「
「へ?」
怖い。
わたしがあれこれ心配する前に学校に連絡が来ていた。
『貴校の
担任の女性教師がわたしに極めて好意的に接してくる。
「すごいわあ、者好さん。いつの間にこんな勉強してたの?」
どんな勉強だ。
「『航空力学と操縦技術の関係性について』だなんて難しそうな研究テーマね」
難しいんだろうか。
公休とは言いながら高校側が配慮してこの『留学』を卒業に必要な単位に組み込んでくれることになった。だからわたしが『留学』から戻ったらそのまま復学してきちんと三年で卒業できる予定だ。
「魔似阿さん。三年で帰れるといいですね」
石嶺のそれが脅しでないことをわたしは本能で悟った。
だからわたしが入る自衛隊の直営寮を見ても驚かなかった。
それは間違いなく都内にある自衛隊駐屯地の敷地内にあるんだけれども、どう見ても普通の築30年ぐらいの一戸建て木造住宅だった。
「ええと。ここでわたしが暮らすんですか?」
「ベトナムへの出発の前は」
「え」
「え」
「ベトナム?」
「そう言いましたよね」
「石嶺さん・・・・・隊員さんたちがベトナムへ行く為に指導するんですよね」
「はい。そしてベトナムへ行ってからも指導を」
「ちょ、ちょっと待ってください石嶺さん」
「なんですか魔似阿さん」
なんだか売れない芸人のコントみたいなやりとりをするわたしと石嶺。聞いてようやく驚いた。
「来週ベトナムに!?」
「そうですよ。だから『公費留学』って高校に連絡したんですよ」
「国内で隊員さんたちをレクチャーするのに学校を休むための方便じゃなかったんですか」
「いいえ。ベトナムに一緒にフライトしてもらいます」
うん?
「フライト!?」
「はい。だから関連性に不自然さが無いように『航空力学と操縦技術の関係性』っていう研究テーマを表示したんですよ」
「あのあの。隊員さんたちの素性ってどんなですか?」
「ひとりはブルー・インパルスの隊長をしていた女性隊員」
「た、隊長!?」
「もうひとりは政府公用機のパイロット。アメリカで言えば大統領専用機エアフォース・ワンの機長ですね」
「ひえ・・・・・」
「最後のひとりは航空自衛隊の整備士なんですけど、セスナから戦闘機、ヘリ、無人爆撃ドローン、はたまたパラグライダーから気球、果てはサーカスの人間大砲まで、ありとあらゆる『飛ぶ』ためのマシンに精通している天才隊員」
「既にマニアックじゃないですか」
「いいえ、まだまだ・・・・魔似阿さんの力無くしてはベトナムへのフライトは成功しません」
「ええと・・・・・わたしも一緒にフライトする、ってことですよね・・・・どんな飛行機で?」
「あ、魔似阿さん。もう全員お揃いですよ」
石嶺がその一軒家の玄関前を指し示すと迷彩服を着た三人の女子が立っていた。わたしは石嶺の後ろに隠れるようにして近づいた。
そしたらいきなり一番背の高い隊員がわたしに敬礼した。
「教官殿!」
「え!?は、はいぃ!?」
「教官殿!ベトナム特命班3名集合しております!」
教官殿・・・・・・?
いやいや、滅相もないんだけど、どうしよう?
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