第47話 護るものこそ好きで大事なもの

ガラス工芸は特に問題なく進んだ、30分ぐらいして、俺と繁は作り終わった


「先輩、あんなに悩んで‥そんなにこういうの好きだったんだ‥」

繁はポツリとつぶやいた、実際の俺はこういうやつはそこまで好きではない

というか美術的なやつは苦手だ

繁がこのようにつぶやいたのはあの状況を見たからだろう

俺と繁とは違って、愛香は色付けの下書きを何度も描いては直してを繰り返していた

愛香はもう20分ほどやっているのだろうか

愛香は抹茶の和菓子を作るときなど、こういう何度も模索することは大事と前に話した

だから何度も考えているのだが、今は愛香は俺の体だ

だから、繁は俺のことだと勘違いしていた


「ねえ、愛香」

愛香が終わるまでベンチに座って待っていると、繁が突然話しかけてきた

「何、繁」

「愛香ってさ、先輩の好きなものとか、知ってる?」

繁は本人にはあまり聞きたくないのだろう、しかし、今の愛香の体には俺が入っており、結局本人に聞いてしまっている

「好きなものね‥」

自分が好きなもの‥たくさんあった

しかし、これだけは譲れない

「俺が一番好きなもの、大事なものは‥」

「大切な仲間、かな」

俺はアイツをアンダス団に殺された、そんな悲劇は二度と味わいたくない、他人に味あわせたくない


「え、今俺って‥」

「あ、いや、気のせいだよきっと」

やばい、アイツのことを思い出していると今愛香の体であることを忘れてしまっていた

「そうだね、気のせいだよね」

繁はこういうことを、簡単に信じてしまう

今回はそのおかげで助かったが、いつか騙されて詐欺に会わないか心配だ‥


「終わったぞ」

繁と会話をしていると、後ろから声が聞こえた

愛香も作り終わったみたいだ、作ったグラスには美しい枝垂れ桜が描かれていた

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