第45話 二人だけの秘密

新と愛香は神様によって入れ替えられた

彼らは、とりあえず路地裏から通りに出た


これ、さっきは怒りで気づかなかったけど、凄い違和感だな‥

体が入れ替わっているのだ、しかも男女で

違和感を感じないほうがおかしい

現に、愛香も同じように違和感を感じていた

「とりあえず明日までの辛抱か‥」


「ところで、あの‥」

愛香が言いかけた、顔を赤らめていた

「どうかしたか?」

「あの、お手洗いに‥」

完全に恥ずかしがりながら言った、通りの端とはいえ、人通りはあるところであることが、効果を増しているようだ

「行ってきたら‥」

そう言おうとしたが、途中で気づいた

彼女はそもそもそんな恥ずかしいことは言わない

それでも伝えた、その理由はこの状況から分かった

「分かった行こう、そこまで我慢できそうか?」

「はい‥」

彼女、男がどのように用を足すのか分かっていない

一緒についていって、教えるしかない


「ありがとうございました、神代先輩」

「ま、こんな状況だし‥」

トイレから出た、結果的になんとかぎりぎり間に合った

多目的トイレを二人で出たときは、まわりの人に見られてあらぬ誤解をされそうになったが‥


「てか、神代先輩、時間!」

愛香が叫び、それで近くの時計で時間を調べた

「え、もうこんな時間か!?」

時計の針は3時45分を指していた、集合時間は4時

今は集合場所からまぁまぁ遠くにいるので、今から歩いていかないと間に合わない

「よし、行くか」


「ところで、このこと繁に言ってもいいか?」

繁とは今日は二人でここを周ることになっている

そのため、繁と一緒に行動しなければならない

それなら、このことを伝えたほうが良いだろう

「いや、このことは二人だけの秘密にしてほしいです」

愛香は断った、確かに第三者にこのことを伝えられたくない、そう思っても不思議じゃない

「じゃあ、旅の途中で愛香と会ったから、ついでに愛香とも周るように誘っていてくれない?」

「愛香に話振られたら、俺が近くで答えるから、それを言って」

繁はただの後輩だ、それに二人きりがよくてついてきたわけではない

そして、繁はそんなことを拒否なんてしない、優しい心の持ち主だ

「わ、分かりました」

愛香は物分りが良い、こんなことでも分かってやってくれる

本当はそんな面倒なことしたくないだろう、でも俺のためにやってくれる

愛香も優しい心の持ち主だ


その後は一緒に周るときの注意点(愛香は愛香の体の俺のことを愛香と呼び、俺は俺の体の愛香を神代先輩と呼んで、違和感をもたせないようにすることなど)を伝えて、集合場所に着いた


「先輩!」

優しい声で、紙袋を両手に持った繁が近づいてきた

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