第38話 コスプレ衣装と悲しみ

「ここが、外町通り‥」

バスを降りて通りを見ると驚いた

バスは外町通りを通らず、外町通りの入口のところで止まったから中が見れなかった

バスの中からは見れなかったので、ここで驚く

「凄い和風の町並みという感じですね‥」

外町通りはパンフレットにも書いてあったが、江戸時代から続く町並みで、和風の建物が数多く残っている

まるで、江戸時代にタイムスリップしたかのようだ


バスの時間を確認した、6時間程がタイムリミットらしい

急ぐほどでもなかったが、焦って早足で行くとせっかくの雰囲気が崩れてしまう

雰囲気を楽しみつつ、多くのところを効率よく周るのが良さそうだ


「そうだ、ここコスプレ衣装貸し出しているみたいですよ、行ってみませんか?」

もう一度周りを見ると、ほとんどの人が和風なコスプレをしていた、店の人から観光客まで多くの人が

そこまでコスプレしたい訳ではないが、繁がやりたそうだし、ここでこの服だとかえって目立ちそうなので、コスプレをすることにした

そのほうが雰囲気的に良さそうな写真を撮れそうだ、思い出の写真は、雰囲気にあったものが良いだろう

繁に連れられ、コスプレ衣装を貸し出している店に向かう

「繁は何でそんなにコスプレしたいの?」

少し気になったので尋ねる、すると繁は、

「そっちのほうが良いじゃないですか」

そう、笑いながら言った


「ここです!」

歩いて数分、目的の店に着いたみたいだ、店ののれんをくぐって中にはいる

「コスプレ衣装を貸し出してください」

ウキウキしながら繁が言った、そんなにコスプレ衣装を着たいのか

しかし、店主はそんな繁の気持ちを180度変えてしまうことを言った

「ごめんね、今は貸せないんだ」


「どうしてですか、お願いします!」

繁が必死に懇願する、そこまで懇願するほどのことではないだろうが、繁はそこまで着たかったのだろう

「無理だ、今は衣装がない」

店主がこういった、そこで俺は納得したが、繁はまだ納得していなかった

「ここはかなりの数あるはずですが‥」

「いや、確かにかなりの数あった」

「でも、衣装を返さない人がかなりいて、それで衣装が少なくなってしまったんだ」

その店主の目には、悲しみと怒りがこもっていた

貸し出しのものなのに返してもらえない、借りパクと言うものなのだろうか

店主の言葉に、流石に繁も納得したようだ

「すみません、怒鳴ってしまって」

繁は店主に深く頭を下げた

そして、店を出た


ぐぅ~

小さめだが、腹が鳴る音が聞こえた、後ろを見ると、繁が恥ずかしそうに顔を赤らめている

時計を見ると、12時を超えていた

「よし、昼食べに行こう」

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