第29話 ヒーローも自分一人では生きられない

「え‥」

師匠が、俺のことで悲しんでいる‥

ただ一方的に慕っている、そんな感じの俺を?

混乱している俺に、愛香はさらに言う

「あなたがミスでこっちに来てしまったのに、神代先輩は当たり前のように助けに来たんですよ」

「それなのに、あなたのことを心配してないと思うんですか!」

涙ながらに言った


「俺、間違っていた」

師匠がこんなにも俺のことを見ていたなんて、ただ勝手に上がり込み、勝手に師匠扱いしている俺

そんな俺でも、師匠は大切にしていたんだ

「絶対にあの男を倒す、絶対に死なない」

そのことを強く決意した



「大丈夫か?」

俺の後ろから声がかかった、いつも聞いていた

俺が一番尊敬している人の声

「師匠‥」

目の前には師匠、神代新がいた

さっきまで天国に行ってしまっていたと思っていた師匠、それが今、目の前にいる

「生きてたんですね」

「ああ、繁に助けてもらった」

師匠は隣の繁を指差した、爆発する前までは倒れていたはずの彼女を

「ちなみに私は凪さんに助けてもらいました、彼はどっかに行ってしまったんですけど」

凪・繁、二人のおかげで二人が助かった

心の中で二人に感謝した

「繁、ありがとう」

師匠はお礼の言葉を伝えていた



爆発が起きる少し前、新は魔族と戦っていた、そのときに爆発予告をされた

「爆発、だと‥」

ここで爆発を受けるのはまずい、かなりのダメージを負うことになる

下手したら、ここで死んでしまうかもしれない

その爆発を避けなければならない、しかし、走って逃げてもここは屋上、そうそう遠くまでは逃げられない

「愛香、瞬間移動は使えるか?」

そう聞いた、しかし愛香はただ首を縦に振った

爆発を避ける方法が思いつかない中、ついにドラゴンのような魔族が火を吹いた

もう、無理か‥

そう思ってしまった


そのとき、繁が横から来た

「繁!」

そのような声をかける前に、体を繁に掴まれた

そして、繁が床を勢いよく蹴る、それと同時に、俺達の体は宙に浮いた

高さは数メートル程だろうか、下を見ると、爆発が起こっていた

あと少し遅ければくらっていた、爆発の威力が強かったので、もしかしたら俺が死んでしまっていたかもしれない


繁は元いた場所から離れてグラウンドに着地した

「先輩、大丈夫?」

繁が心配そうに見てくる

「大丈夫だ、お前は?」

中学3年生を掴んで跳んだ、一年生にできることとは思えない、ましては女子に

「私は大丈夫です」

笑った顔で彼女は答えた

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