第16話 ついに王女様とご対面!


 花の国、フラワーエデン。

 そこは、花に囲まれたとても美しい国だという噂がある。

 時代とともに絶滅してしまった花や、この国でしか咲かない花。高価な宝石よりも価値のある花々が咲き誇っていると、古くから囁かれていた。


 しかし、誰もその光景を見たことはない。花の国、フラワーエデンは、他国の者を入国させることはないのだから。

 よって噂でしか語り継がれない幻の国。それがフラワーエデンという国だった。


 そして、その国には女性しかいないというのも、どうやら本当だったようで……。


「きゃ〜〜〜〜! プラン様〜〜〜! こっち向いて〜〜〜!」


「プラン様〜〜〜! こっちにも〜〜〜!」


「素敵〜〜〜〜! プラン様、可愛い〜〜〜〜〜!」


「〜〜〜〜〜っ」


 周りの声を聞いていると、自分の顔が熱くなっているのが分かった……。

 花の国にやって来た僕たちは、現在、馬車に乗って街の中を移動している。


 街の中には大勢の人たちがいて、全員女性だった。

 彼女達はこっちを見ていて、みんな笑顔で手を振ってくれている。


「ほら、プランくん。あっちの方の子も待ってるよ!」


「「「きゃ〜〜〜〜! プラン様がこっちを見てくれた〜〜〜!」」」


 僕がその方向を見ると、黄色い声援が上がる。

 そして手を振ると、その声援はもっと大きくなった。


「「「きゃ〜〜〜! プラン様〜〜〜〜! 抱いて〜〜〜〜!」」」


「今日も我が国の国民は元気ですね」


 リーネさんが優しく微笑みながら、僕に見守るような目を向けた。


「ど、どうして、こんなに歓迎してもらえるのでしょうか……」


 手を振っているだけなのに……。

 こんなに喜ばれたのなんて、人生初めてだ。


「みなさん、知っているのです。プラン様が我が国の姫様を助けてくださったことを。我が国の者達は虫の知らせを感じることができますので、あの時のプラン様の活躍をばっちり感じ取っていたようなのです」


「「「プラン様〜〜〜! 姫様を救ってくださってありがとうございました〜〜〜!」」」


 手を振りながら。

 笑顔を向けながら。

 花の国の少女たち全員が、そう言ってくれる。


 その光景には圧倒されるばかりだったけど、その笑顔を見ていると、自分の中が透き通っていくのも確かに感じた。


「でも、花の国って綺麗なところだというのは聞いたことありましたけど、同時に怖い場所だとも聞いたことがありました。でも、みなさん、とても優しそうな方達ですね」


 アリアさんがリーネさんにそう話しかける。


「みたいですね。我が国は周りの国との接触を極力避けていますので、どうしても噂が一人歩きしてしまうみたいです。恐れられる分にはこちらとしても、それでいいと思っております。それで国を守ることができ、この平和が続いてくれるのなら、それ以上のことはありませんので」


 リーネさんが微笑みながら教えてくれる。

 その笑みは本当に優しい笑みだった。


「住んでいる者も、普通の子たちです」


「確かに、可愛い子が多いですよね! みんな、綺麗です!」


 確かにこの国にいる女性は、みんな美少女だ。


「でもそんな国に僕が来ても良かったのでしょうか……。僕は男ですし……」


「ええ、それはもちろん大歓迎です。姫様が是非、プラン様に会いたいと求められたので、それは問題ありません。私も納得しておりますし、国民全員納得しております。周りをごらんください。彼女達も、プラン様が来てくれることを待ち望んでいたのです」


 改めて周りを見てみると、好意の視線ばかりだというのもすぐに分かった。


 街にいた頃は、それとは真逆の視線をいつも感じていた。

 あの時の僕はEランクだったからそれもしょうがないことだった。


 だからこそ……こんなに好意的な目を向けてくれると、少しどうすればいいか分からなくもなる。


「あ、プランくん、照れてる。可愛い」


「あら、本当ですね。赤くなって、お花みたいに可愛くなられております」


「「「「きゃ〜〜〜〜! プラン様の照れ顔、素敵〜〜〜〜〜! 押し花にしたくなっちゃう〜〜〜!」」」


「「「「もっと見せて〜〜〜〜!」」」」


「〜〜〜〜っ」


 ああ……。

 顔から火が出そうなぐらい、恥ずかしい……。


 そんな僕たちは街の中に見える一際大きい城、この国の王女様がいる建物へと向かった。


 そして、ついに、たどり着くと……



「プラン様! お待ちしておりました! 来てくださってありがとうございました!!」



「むぐ……っ」


 城に入ってすぐ、僕は王女様から熱烈に抱きしめられるのだった。


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