第15話 ようこそ、花の国へ!
それからほどなくすると、もう少しで馬車は花の国までのルートの目的地までたどり着くとのことだった。
ちなみにこの馬車を操縦している人はいない。なんでも花の国の技術で、縄を自在に操り、自動で操縦してくれるとのことだった。
そして今まで街道を走っていた馬車は道を外れ、少しして見えてきた森へと進路を変えた。
緑が生い茂る森の中は地面が整備されていないものの、馬車はそれほど揺れることなく森の中を走っていく。
土の香り、葉っぱの香り、自然の景色が窓の外で後ろに流れていく。
「見えました。あそこです」
リーネさんが指差した先、そこは森の中央付近の場所だった。
しかし……。
「……いつものことながら、魔物が集まってしまっていますね」
植物に囲まれた森の中、何もない場所に、多くの魔物が集まっている姿がある。
昆虫系の魔物が多い。
フォレストビーという蜂の魔物、レッドアゲハという蝶の魔物、プラントワームという芋虫の魔物。
「恐らく花の国の香りに惹きつけられて集まっているのでしょう。これなら私でも退けることができるとは思いますが……さすがに数が多いかもしれません」
馬車が止まり、そこを見たリーネさんが考え込む。
「あ、では僕もお手伝いします」
「それは大変心強いです。あの時の葉っぱカッターは、私も見ておりましたので」
「プランくんの葉っぱカッター! 私も見たい!」
僕は二人の前に出ると、やってみることにする。
あの時の感じを思い出して……。
「葉っぱカッター」
「「おお!」」
風が吹き、僕の目前に一枚の葉っぱが現れる。
それがヒュンヒュンヒュンと飛んでいき、魔物の真上で回転し続ける。
すると、魔物達はその葉っぱに気づき、葉っぱの方を見る。
あの葉っぱには飛ばした際に、事前に近くにあった木から垂れていた蜜を塗ってあるので、魔物達にとっては無視できないものだ。僕がそれを遠くまで飛ばすと、魔物達は一斉に葉っぱを追って移動を開始して、この場所から遠ざかっていった。
「お見事です」
「すごいよ! プランくん、敵を倒さずに追い払っちゃった!」
リーネさんとアリアさんが褒めてくれる。
あの魔物達は害意がないように見えたから、とりあえずああしておいた。
リーネさんに確認して見ると、倒す必要も特にないという。
「では道が拓けましたので、花の国まで転移します。お二人とも、私の体に触れてください」
言われた通りに、僕とアリアさんはリーネさんの手に触れる。
すると、リーネさんは目を閉じて、呪文のようなものを詠唱し始めると、地面に魔法陣が浮かび上がる。
「『転移』」
そして一瞬だった。
「「「きゃああああああ〜〜〜! 本当に来てくださったわ〜〜〜〜!」」」
「「!」」
視界が変わり、感じたのは眩しさ。
さっきまで森にいた僕たちだけど、今は街の中にいる。
高い塔の上のような場所に立っていて、周りにいるのは大勢の女性たち。
彼女たちは高い位置にいる僕たちを見上げるようにしていて、みんなが黄色い声援をあげて手を振ってくれている。
周りを見て見ると、遠くの方に街をぐるりと取り囲んでいる大きな外壁が見えた。
その外壁の内側には建物が立ち並んでいて、全体的に明るい雰囲気を感じる光景だった。
「着きました。ここが花の国、フラワーエデンです」
「「こ、ここが……」」
……すごい。
一瞬で着いた……。
それになんというか、とにかく色づいていて綺麗な街だ……。
「ふふっ。驚いていただけて良かったです」
あっけにとられている僕とアリアさんに、リーネさんが柔らかく微笑んでくれる。
「ではプラン様、花の国の皆があなたを見ておられます。是非、手を振ってあげてください」
「こ、こう、ですか……?」
僕は促され、恐る恐る手を振ってみた。
すると、
「きゃああああ〜〜〜! 嬉しいいいい〜〜〜〜! プラン様が手を振ってくださったわああああああ〜〜〜! キャ〜〜〜!」
割れんばかりの歓声が花の国を包み込む。
そんな彼女達の顔には笑顔が浮かんでいて、満開の笑顔が花の国に咲き誇るのだった。
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