第2章 花の国に到着
第14話 馬車での甘いひと時。
花の国、フラワーエデンまでは馬車で移動するとのことだった。
「途中まで、馬車で移動して、それから極秘のルートを使用し、国まで一気に辿り着きます」
「「ご、極秘……」」
カタンコトンと揺れる馬車の中、僕とアリアさんは花の国、フラワーエデンの使者の女性からこれからに関する説明を受けていた。
窓の外の景色が、後ろに流れていく。馬車に乗ったのなんて久しぶりだから、新鮮な感じだった。
「私の名前はリーネと申します。気軽に、リーネと呼んでいただけると嬉しく思います」
リーネさんはそう言うと、自己紹介をしてくれる。
服装はメイド服。
白銀色の髪が肩ほどまで伸びていて、金色の花の髪飾りでまとめられている。
しっかりしているような雰囲気がある女性だ。
そんなリーネさんは、僕の方を見ると改めてお礼も言ってくれた。
「先日は助けていただきありがとうございました。姫様も私もプラン様のおかげで命を救われました」
「い、いえ、僕もあの時は、たまたまあそこにいただけでしたので……」
リーネさんはあの時、キングキャタピラーに襲われていた二人のうちの一人だったらしい。
そしてもう一人がフラワーエデンの王女様だったと言うことだった。
「それに、あの後、リーネさんたちが僕の治療をしてくださり、気を失っていた僕を街まで運んでくださったのですよね。本当にありがとうございました」
「いえ、それは当然のことをしたまでです。私はあの時、プラン様が魔物を引き連れて離れてくださった時、助かった……と心から安堵してしまいました。それはプラン様に対して、許されざる行いでした」
「そ、そんなことないですよ」
メイド。
メイドというのは、主人のことを一番に考える人……と聞く。
あの時、僕は二人に「ここは僕がやるから、任せてください」と言って一人で突っ走ったんだ。
だから、謝られることでもないと思う。
「リーネさんたちが無事だったのなら、僕も嬉しいです」
「そうですか……。あなたはそうおっしゃってくれるのですね……。やはりプラン様は大変謙虚な方で、とてもお優しい方です」
「だね。プランくんは優しくて、心が綺麗な男の子だもんね!」
「あ、アリアさんまで……」
「えへへっ」
アリアさんが微笑むと、馬車の中、隣に座っている僕の腕を抱きしめてくれた。
柔らかさと温かさ。
アリアさんは馬車に乗ってからずっと嬉しそうにしている。
「うんっ。だってプランくんとこれからも一緒にいられるんだもん。もうお別れかと思ってたのに、私、とっても嬉しいんだもん!」
その言葉に、僕も嬉しくなる。
実は不安で、心細かったけど、アリアさんも一緒に来てくれることになった。
僕もアリアさんと一緒にいられるのなら、これからもいたかった。
「だから、こうやってプランくんを抱きしめて、それを感じるの! それに……! 花の国についたら女の子しかいないんだから、プランくん、耐性をつけないと、緊張しちゃうでしょ!」
「そうですね。では、私も失礼して」
「り、リーネさんまで……」
反対側に移動して僕の隣に座ったリーネさんが、アリアさんがしているみたいに僕の腕を抱きしめた。
右にはリーネさん、左にはアリアさん。
リーネさんからは花の甘い香りがして、アリアさんからは落ち着く甘い香りがする。
どっちも甘い……。脳が溶けてしまいそうなぐらい甘くて良い香りが、両方から僕のことを包み込んでくれる……。
あと服越しに伝わってくる二人の体温が温かくて、柔らかい肌の感触とかも伝わってくるから、自分の顔が暑くなるのが分かった……。
「ふふっ。実はね、私も緊張してるんだよ? だってプランくんを抱きしめてるんだもん。緊張しないわけがないよっ」
頬を赤く色付かせたアリアさんが、恥ずかしそうに僕の頬に頬ずりしてきた。
「実は私も緊張しております。生まれてからずっと花の国にいましたので、殿方と触れ合うのは、これが初めてですので」
頬を赤く色付かせたリーネさんが、少しもじもじとしながらそう紡いだ。
街道を走る馬車が揺れるたびに、二人は僕の体をぎゅっと抱きしめてきて、馬車の中の温度が熱くなった気がした。
「開花しそうなぐらい熱いですね」
「あ、お花の国のジョークだ」
「ええ。緊張を紛らわせるために、言ってみましたけど……やはり少し恥ずかしいですね」
そう言って、リーネさんは赤い頬をもう少しだけ赤く染めて……。
「「ふふっ」」
真面目な感じのリーネさん。
彼女は親しみやすそうな女の人で、照れているのを隠すようにアリアさんと一緒に僕の首筋に顔を埋めるのだった。
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