第99話 下着のこと
* * * * * *
それは、昔、まだ村に住んでいた時のことだった。
『あ、テオくんいた!』
『テオくん、こんにちわ! ちょっといい!?』
その日の俺は、森から家に帰る途中だった。
おばあちゃんがいなくなって数年が経ち、生活費を稼ぐために加工石に必要な魔石を森に取りに行った帰りだったのだ。
話しかけてくれたのは、同じくらいの歳の女の子たち。ミーナちゃんとマリアちゃん。二人は村に住んでいる女の子で、テトラの友達だ。
親がいなかったことで不気味な奴だと思われていた俺に対しても、こうして普通に話しかけてくれるようになった子達だ。
『テオくん、忙しいところにごめんね。でも、大事な話があるの』
『大事な話……?』
『『うん! 乙女にとっての大事な話!』』
二人は『こっち!』と言って、俺の両腕を抱くようにして静かに話せる場所へと移動した。
そして、真面目な顔をすると、重要なことを聞いてきた。
『テオくん……あのね、今、どんなパンツ履いてる……?』
『……そ、それはどうしても答えないといけないのかな……』
『『あ、違う! 別にいやらしい目的じゃないから!!』』
俺は一気に警戒心を強めた。
彼女たちは、慌ててそれを否定していた。
『あのね、違うの! でも、下着の話をしたいの!』
『私たちも、もう十歳だから、色々気を遣うことが多いでしょ……? 女の子には秘密が多いもん!』
『それで、俺の下着が知りたい……と』
でも……俺は男の子だ。
俺の下着のことを知っても、嬉しくないと思う。
『違う違う! ……ま、まあ、知りたくないといえば嘘になるけどぉ……』
『ほら、テオくんとテトラちゃんは二人暮らしでしょ……? だから、テトラちゃんの方の下着事情とかはどうなってるのかなって……』
そう言った二人が途端にビクッとして、背後を振り返る。恐らく何かを感じ取ったのだろう。
すると、そこには木陰から伺うように、ジトっとした目でこっちを見ているテトラの姿があった。
『『あ!! テトラちゃんッ!?』』
『……テオが、ミーナちゃんとマリアちゃんから告白されてる』
『『し、してないしてない!』』
焦るミーナちゃんとマリアちゃん。
今日のテトラは、ミーナちゃんとマリアちゃんと村で行われたバザーに行っていたはずだ。
だから、彼女たちはバザーの帰りだったのだろう。そして、テトラもその帰りだったのだと思う。
『てお〜』
『テトラ』
駆け寄ってくるテトラ。
俺はそんなテトラを両手で受け止めて、そっと抱きしめた。
すっぽりと胸の中に収まるテトラは、ふわりと落ち着く香りがした。
『テトラ。バザーは楽しかったかな』
『うん!』
『それならよかった』
『うん! でも……テオと一緒に行けたらよかったのに……』
そう言ったテトラは寂しそうで、俺はそんなテトラの頭をそっと撫でた。
俺は色々事情があって、村で行われる催し事には参加できないのだ。
それでも、テトラが楽しんでくれたのなら、それだけでよかった。
『あのね、おみあげいっぱいあるよ。だから家に帰ったら食べよ!』
『テトラちゃん、テオくんにおみあげ買うんだって嬉しそうに言ってたんだよ!』
『テトラちゃん、いっつもテオくんのお話ししてくれるんだよ!』
『うん! だって、テオは私の将来のお婿さんなんだもん!』
『『いいなぁぁぁああ〜〜。私も、お婿さんにテオくん欲しい!!!』』
『『『えへへっ』』』
3人で笑い合う彼女たち。
その頃には、本題なんてすっかり忘れ去られていて、彼女たちは会話を盛り上がらせると、その後はお開きになることになった。
『二人とも、いつもテトラと仲良くしてくれてありがとう。これからも、よくしてくれると助かります』
『『こちらこそ!! じゃあね、テオくん!』』
そして、別れる俺たち。
『『じゃなくって……! テオくん、ストップ!!』』
『ぐ、ぐるじい……』
首が閉まって引き戻された。
彼女たちが、慌てて俺の服を引っ張って引き止めていたのだ。
『テオくん! 下着だよ下着!』
『こうなったら、テトラちゃんに直接聞く方がいいかも。ねえ、テトラちゃん、今どんなパンツ履いてる?』
『……私? 私が履いてるのは、昔、おばあちゃんが履いていたやつだよ?』
『『え”!?』』
絶句する二人。
『……おばあちゃんの!?』
俺も思わずテトラのことを二度見していた。
……俺はテトラの下着事情を知らなかったのだ。
その頃のテトラはスカートとか履かなかったし、ズボンの下にスパッツを履いて、いつも重ね着をしていたのだ。
でも……。
『……この前、新しいやつ用意しておいたのは……』
『? あれは、お気に入りのやつだから、まだ保管してるの!』
『『テオくん! ちょっと、集合!!』』
『ぐ、ぐるじい……』
ぐいっと二人に引っ張られて、連行される俺。
その後、二人に説教された。
女の子の下着事情は深刻なことであるということ。
おしゃれにも気を使い始める年頃なので、注意を払うべきこと。
俺とテトラは二人暮らしだった。
普通ならそういうのは、自分のお母さんだとかお姉ちゃんに聞くらしいのだが、うちには俺しかいなかったから、俺がどうにかしないといけなかったのだ。
一応、定期的にテトラの下着は新品を用意していたのだけど、それでも不十分のようだった。
彼女たちが、今回聞きたかったことはそれだったみたいだった。
それから少しばかりしてアイリスさんが村に来てくれてからは、そういう問題が解決したのだけど、その時の俺はミーナちゃんとマリアちゃん指導の元、そういうことを色々教わっていた。
『もう、こうなったらしょうがないな〜。テオくん、うちおいで!!』
『うちでもいいよ!? そこで、私のパンツ見せたげる!!』
『て〜〜〜お〜〜〜』
『ち、ちが……っ』
その後、俺は彼女の家にお呼ばれして、彼女たちは俺に色々教えてくれたのだった。
* * * * * * *
「ってことがあったの。テオ、その頃から村の女の子たちに人気が出始めてたんだよ? モテ期がきたの!!」
「まあ、テオさまったら、羨ましい男の子です」
「ち、ちが……っ」
テトラとソフィアさんが俺を抱きしめた状態で、テトラが昔話をしていた。
まだ村にいた時の、色々あった時期のことだ。それは実話だった。
それで、どうしてテトラが急にそんな話をしだしたのかというと、
「でね、テオ、よく見てあげてね。ソフィアちゃんが今履いてるの、私のお気に入りの下着なんだよ?」
ひらっ。
「あっ。〜〜〜〜っ」
恥ずかしそうに顔を染めるソフィアさん。
テトラがソフィアさんのスカートをめくり、下着が見えるようにしたのだ。
たくし上げられたスカート。そこから覗くソフィアさんの露わになった白い足。
普段は露出のない服を着ているソフィアさんの太ももまで、全部見えるようになっていた。
細くも内ももがもっちりとしているソフィアさんの、太ももだった。
そして、ソフィアさんが履いていたのは、見覚えのある下着だった。
それはシルクでできた素材で、琥珀色の刺繍がしてある下着だ。あれは……テトラの下着だ。
「テオ様に見られるの……恥ずかしいです……」
もじもじと太ももを擦り合わせるソフィアさん。下着が露わになった状態で、焦ったようにしている。
「それで、私が履いてるのは、テオのパンツだよ?」
「あ、こらっ」
ひらっ。
テトラが、履いていたのは、なんと俺の下着だった。
ボクサーパンツで、可愛げのない下着で、テトラにはサイズが合ってないから、ずり落ちてしまいそうだ。
それでも、あらわになったテトラの太ももはシミひとつない綺麗なもので、テトラは甘い表情をしながらその太ももをもじもじとしていた。
何より、自分の下着をテトラが履いてくれたことで、俺はなんとも言えない気持ちになってしまった……。
「ねえ、てお、私たちの下着の感想聞かせて……?」
「いっぱい聞きたい……」
「……い、いや……だめだって」
「「そんなこと言ってガン見してるくせにっ。もうっ、えっちなんだからっ」」
「……っ」
もじもじとしながらキスをしてくれる二人。
そして、俺の手を取ると、自分の太ももで俺の手をそれぞれ挟んでくれた。
「「……どう?」」
「や、柔らかい……」
ふにふにとして、包み込まれてしまいそうだっt。
温もりもあって、とにかく柔らかみがある太ももだった。
でも、これは、いけないことだと思う。
それでも……二人は嬉しそうに俺のことを見てくれていて……。
「ふふっ。大丈夫だよっ。これはソフィアちゃんの腕輪を出すための儀式なんだから、何も問題ないんだよ?」
「だから、いっぱい出しても誰にも怒られないです……。だからご主人様……いっぱい出して……っ。いっぱい、私に、初めてを教えて……っ」
ミシ……ミシ……ミシ……。
ベットが軋む。二人の吐息が俺の肌を撫でる。
その後も、夜は更けていき……。
腕輪が出るまで、俺たちは三人でベッドの上で過ごすのだった……。
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