第12話 チーム機能
「チーム? 何すかね、これ」
メニューに『チーム』という新項目が追加されていた。
俺がそれを選択するとチーム画面が展開する。
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現在、チームメンバーがいません。
メンバー一覧
メンバー申請
通信
ポイント管理
~~~~~
『チームメンバーがいません』
うん。やはり俺はボッチだったようだ。
……と、冗談(?)はさておき、まずは追加された機能を確認しよう。
表示をみると『メンバー一覧』『通信』『ポイント管理』の項目は黒色になっており、選択しても反応が無い。
俺は『メンバー申請』を選択する。
~~~~~
周囲に申請可能な人物は1名です。
ウサギ ユウト
~~~~~
「あっ。僕のチーム申請の項目にオオカミさんの名前が表示されていますよ」
ウサギも俺と同じ操作をしているようだ。
虚空を見つめ、宙に指を這わせている。
他人から見るとシュールな光景だな。
「俺の方もウサギの名前が載ってるな」
「これ元の世界だったらプライバシー侵害も甚だしいっすよね。あの神様、訴えたら勝てるっすよ」
「まあ、それをいうならこの世界に連れてこられている時点で立派な誘拐だろうけどな」
「あっ、たしかに。言われてみればそうっすね」
「それよりも、チーム申請っていうのを試してみるか。今から俺の方でウサギの名前を選択してみるぞ」
「はい。お願いするっす」
『ウサギ ユウト』の名前を選択する。
というか、こいつの名前ユウトっていうんだな。
ウサギとしか呼ぶことがないから知らなかった。
人の名前を覚えられないとか、安定のボッチあるあるだ。
「あっ。僕の方にオオカミさんからチーム申請が来ているって表示が出ましたよ。承認するっす!」
~~~~~
現在、チームメンバーは1名です。
メンバー一覧
メンバー申請
通信
ポイント管理
~~~~~
ウサギの声の直後、チーム画面の表示が切り替わる。
『現在、チームメンバーは1名です』
うん。これで晴れてボッチは卒業だ。
「えっ、なんでオオカミさん怖い顔してるんすか」
「はあ? 別に怖い顔なんてしてねえ。ただ笑って……ゲフン、ゲフン。それよりもそっちの画面の表示も変わったのか」
「はい。チームメンバーが一名だと表示されているっすよ。メンバー一覧にもオオカミさんの名前が表示されました」
どうやら俺とウサギはチームを組めたようだ。
俺はメンバー一覧を確認する。
~~~~~
チームメンバー 2/20
オオカミ ロンリ リーダー
ウサギ ユウト 一般
~~~~~
「なんだ、このリーダーとか一般って表記。ウサギの名前の隣に一般と出ているんだが」
「あっ。僕の方もオオカミさんの名前の隣にリーダーって表示が出ているっすよ」
「何かの役職みたいなものか? おっ。名前の所を触ると役職を設定できるみたいだな」
ウサギの名前を選択すると『役職変更』『リーダー委託』『追放』の三つの項目が現れた。
俺の名前を押しても反応は無い。
俺は『役職変更』を選択する。
すると今度は『サブリーダー』『会計』の二つの項目が現れた。
「僕の方では名前を選択しても、なんの反応もないっすね」
「リーダー権限ってやつか? 多分俺がウサギをチームに誘った形になるから俺がリーダーになっているんだろうな。それでリーダーはチームメンバーの役職を自由に設定できる」
「でも、役職って何の効果があるんでしょうね」
「リーダー、サブリーダーは分かりやすいよな。おそらくチームメンバーの管理ができるんだろう。会計は、そういえば『ポイント管理』って項目があったな。それ関連の役職じゃないか」
とりあえずウサギをサブリーダーに設定しておく。
本当はリーダーを譲りたいところだが、どうせウサギは固辞しそうだ。
まあ、形だけの役職だ。
そんなことで、もめたくない。
俺は話題に上がった『ポイント管理』を続けて開く。
説明を読むと、これはどうやらチームで共同してポイントを使用できるシステムみたいだ。
使い方は簡単だ。
チームメンバーが自分の保有ポイントを振り込むことでチームの保有ポイントにすることができる。
チームの保有ポイントはリーダー、サブリーダー、会計のみ扱うことができショップ画面でアイテムと交換することができる。
チーム単位でアイテムを交換するためのシステムだ。
ただし、一度チームに振り込んだポイントは引き出すことはできない。
交換できるのはあくまでアイテムとだけ。スキルとの交換はできないようだ。
「なるほど。チームポイントを使えば一人では手が出ない高額なアイテムを皆でポイントを出し合って交換できるわけだな」
「上手く使えば強い武器や、アイテムを交換できそうっす……って、なんで僕サブリーダーになってるんすか」
「別にいいだろ。現状二人しかいないんだから、飾りみたいなものだ」
「嫌っすよ。こういうのは最初にきっちりしておかないと、人数が増えてもそのままズルズルと最初に決めた設定を引きづることになるんすから」
「だったらなおさらだな。俺はリーダーなんて嫌だぞ。なんならウサギにリーダーを譲ろうか?」
「いや、お断りっす。サブリーダーの任、謹んでお受けするっす」
うん。予想通りリーダーは断ってきたか。
まあ、サブリーダーを受けてくれたんだ。
リーダーもサブリーダーもそんな違いないだろう……ないよな?
*
紆余曲折あったが、チームの大まかな仕様は分かった。
そしてチーム画面を確認していたところ、有用な機能を発見した。
『オオカミさーん。聞こえていますかー』
「ああ。聞こえている。うるさいぐらいにな」
『ひどいっすよー。そんなに邪険に扱われたら泣いちゃいますよ』
「泣くな。まあ、どうやらそっちも問題なく俺の声が聞こえているみたいだな。通信いったん切るぞ」
『ちょっとオオカミさ――』
俺はウサギとの通信を切断する。
有用な機能。
それが今の『通信』機能だ。
これはチームメンバー同士であれば距離が離れていても互いの声を相手にリアルタイムで届けることができる機能だ。
招き猫の神様も同じような方法で言葉を俺たちに伝えていたっけな。
頭に直接声が響いてくるので、なんだか変な感じだ。
この通信機能によりウサギとの合流の難易度は格段に下がった。
ウサギには川を川下に向かって移動してもらい洞窟を見つけたら川に沿って戻ってきてもらう。
通信でウサギが戻ってくるタイミングが分かれば、俺が川沿いでウサギを待ち合流できるはずだ。
ウサギには今回の探索で何も見つからなくても一時間ぐらい経ったら戻ってくるように言ってある。
チーム機能の確認などで戸惑ったからな。
太陽は真上をとうに過ぎ、西の空へ移動していた。
まだ日没までは時間があるが拠点が見つからなかった場合は野営の準備をしなければならない。
それにもし拠点となる場所が見つかっても、俺が移動しなければならないのだ。
あまり遠くまで探索してもらっても意味がないだろう。
俺は川下を目指しながら生えている野草を『鑑定』していく。
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野草
食用
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~~~~~
野草
食用
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毒草
有毒
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鑑定は使い続ける内にレベル3に上がったが表示される情報に変化はない。
ただし複数同時に鑑定ができるようになり、視界内の対象を一辺に鑑定できるようになった。
そのおかげで、だいぶ食材探しの効率は上がっている。
あまりたくさん採取しても嵩張るから、見た目が違うものを少しずつ採取し、食べ比べてみる予定だ。
野草の他に、木の実や果実、茸も少量見つけた。
食用の物はその中でも一部だけだったので量は少ないが、ただの野草よりは味があるはずだ。
ちょっとだけ期待しておく。
一時間後にはゴブリンからドロップした布袋3つ分の食料が集まった。
さすがに少し重くなってきた。
今日の採取はこのくらいにしておこうか。
俺が少し休憩していると通信が入る。
『オオカミさん、やりました!』
「やったって、まさか」
『はい! 洞窟、見つけちゃいました!』
「おお! ナイス!」
思わずテンションが上がってしまう。
これで野宿をしなくても済む。
俺はウサギからの吉報を聞き、軽くなった足取りで川下へと向かった。
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