第9話 キノコパーティ
枯れ葉を集めて焚いた火を囲む俺とウサギ。
「なんすか、これ。めっちゃ美味しいっすね」
ハフハフと、口から湯気を出しながら串焼きにした黒い
えっ? なんで食事をしているかって。
お腹が空いたからだよ。
さっきモンスターと戦うべく気合をいれたばかりだが、やはり体は正直だ。
森の中を探索中、俺とウサギの腹の虫が同時に鳴いたのだ。
腹が減っては何とやら。
モンスターとの戦闘は一時休憩し、俺たちは食事を取ることにした。
メニューは焼き茸オンリーだ!
どれどれ。
俺も焼きあがった茸を口に運ぶ。
味はシイタケのような旨味がある。
さらにマツタケのような芳醇な香りが口いっぱいに広がる。
「うん。うまいな」
俺たちが食べているのはゴブリンが採取していた黒い茸だ。
ゴブリンを何体も倒しており、結構な割合でゴブリンは黒い茸を持っていたため数は二十個以上ある。
茸には毒があるかもと警戒していたのに、どうして俺たちがそれを食しているのか。
それは俺が念願の『鑑定』スキルを取得し、食材の鑑定が可能になったからだ。
ゴブリンの集団との戦闘で俺のレベルは一気に2も上昇した。
さらに倒したゴブリンからもスキルポイントを入手していたため『鑑定』に必要なポイントが溜まっていたのだ。
ちなみに黒茸の鑑定結果はこうだ。
~~~~~
黒い茸
食用
~~~~~
うん。すごい簡潔な説明。
表示されるのは名前と簡単な説明。
名前なんて見たまんまだからな。
まあ、LV1のスキルだからこんなものだろう。
ちなみにそこらへんに生えている草を鑑定すると、
~~~~~
雑草
有毒
~~~~~
説明は簡素すぎるが、毒がある物にはちゃんとそう表示されるのだ。
そこで茸の安全性を確認した俺たちは、ちょうど昼食時だったため、溜まりに溜まった茸を二人で食べることにしたのだ。
火種に『ライター』3Pを購入。
その辺の枯草を集め火を焚く。
ライターの分、高くついたが茸は想像以上においしかった。
ライターはこれからも使えるし安い買い物だったと思おう。
「ふう。おいしかった」
茸を腹いっぱいに詰め込んだ俺たちは一息つく。
貯めた黒茸はこれで食べつくしてしまった。
軽くなった荷物を背負い立ち上がる。
この世界に来て初めて食べたおいしい食べ物。
まともな食事に精神が充足しているのを感じる。
是非また、食べたいものだ。
だが、この茸を持っているのはゴブリンだ。
奴らとは当分戦う予定はない。
しばらくはお預けとなるだろう。
まあ、ここは森の中だ。
他に食べられる野草などもあるだろう。
鑑定のレベル上げもかねて道中探しておかないとな。
鑑定では味の詳細は分からない。
鑑定のレベルが上がれば分かるのかもしれないが、それまでは実際に食べて判断するしかない。
おいしい野草があればいいのだが。
まあ、それは期待せずにおこう。
「そういえば、ゴブリンは地面の中からその茸を掘り返していたんすよね。どうやって探してたんすかね」
「ああ。鼻を使って探していたみたいだぞ」
「なるほど。犬みたいなもんすね。茸おいしかったっすし、僕たちでも手に入らないっすかね」
「いや、無理だろ。俺たちの嗅覚でどこに埋まってるかなんて分かるわけがない」
「大丈夫っすよ。ゴブリンは手で掘ってたんでしょ? ならきっと浅いところに埋まってるんすよ。それなら何か所も掘ってればいずれは見つかるはずっす」
「いや、さすがにそれは無謀だろう」
俺はウサギをたしなめるが、ウサギの目は完全に食欲に支配されている様子だった。
まあ、この世界に来てからまともな食事を取ってなかったみたいだからな。
こうなるのも多少は仕方ないか。
「じゃあ、さっそくスコップを交換しちゃいますね」
「えっ? おい! はやまるな」
「ふへへ。もう交換しちゃったっす」
ウサギの手にはすでに木製のスコップが握られていた。
くそ。ポイントを無駄遣いしやがって。
こいつ普段は優柔不断な癖に、こういうときだけは行動が速いんだな。
その行動力を別の所に発揮してほしい。
「じゃあ、この辺りを掘ってみるっすよ!」
「あのなあ。遊んでいる場合じゃないんだぞ」
「食料調達も立派な仕事っすよ」
「はあ。あまりこんな事で体力使うなよ」
俺は近場の岩の上に腰かける。
ウサギは意気揚々とその場に穴を掘り出した。
穴は見る見るうちに広がっていく。
ウサギの持つ『脱兎』は恐怖心をスピードに変えるスキルだ。
今はあれだけ楽しそうに穴を掘っているのだ。
恐怖心など感じていないはずでスピードはほとんど強化されていないはずだが、その動きは驚くほど素早い。
これが食欲のなせる業だろうか。
「あったっす!」
「お、おう。ほんとに見つけやがったのか」
ウサギが喜びを叫ぶ。
その手には黒い茸が握られていた!
そしてその背後には大穴が開いていた!
……絶対、労力に見合ってないだろ、これ。
俺はウサギの作った惨状に開いた口がふさがらない。
「オオカミさん、やったっすよ!」
「ああ。おめでとう」
まあ、喜んでいるウサギに水を差すのも悪いだろう。
俺は差し出されたウサギの手とハイタッチを交わす。
さすがにウサギも疲れたのだろう。
二個目を探すとは言い出さなかった。
俺たちはちょっとした寄り道を挟み、レベル上げを再開する。
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