第一話 タベチャイタイ 5

〈僕はいつも通りに会社で一人飯よ!笑

 ででで大事なニュース速報です!10月21日の今夜は金星が今までにないくらい地球に大接近するそうです、。。肉眼で一番大きく見えるのは今夜八時だそうだよ。よ

 金星は明けの明星とも呼ばれ、美と愛の女神アプロディーテのシンボルでもあるんだよ。君は僕のアプロディーテだ

 今夜僕は君といっしょに金星を眺めたい。〉

 ここまでで今さっき、午後一時二十六分に届けられたメッセージの内容は終わりであった。

 征矢は読み切って、ため息がでた。ベッドの上に寝転がり、痒くなった胸をTシャツの上から掻く。携帯画面を指でスクロールさせていき、今日の日付で届いた最初から、三十件ほど連なって並ぶメッセージを順々に読みだしている最中に、美香が浴室から出てきた。

「何勝手にいじっているの」征矢の長袖シャツを着た美香は、髪の毛をタオルで乾かしつつ尋ね、眉根を寄せた。

「心配だからいつも通りに見ていただけ」

「心配することないよ。いつも通りだから」

 征矢は美香から苦笑われた。彼女の携帯電話を手にしたまま身を起こし、ベッドの上で胡坐を掻くと、彼女から隣に座られ、自分の手にある携帯電話へ手を伸ばされ、最新のたいちからのメッセージを表示させられた。

「へぇ。金星が大接近するんだ」美香は無表情で呟くようにしていって、征矢へ微笑む。「と、いうことは月みたいに大きな金星が見えるのかな?」

「そんなことないと思うけど」

「一緒に今夜金星を見よう」

「今日のアルバイトは何時に終わるの?」

「六時だよ」

「そっか。なら一緒に見れるね。窓を開けて、ベッドの中から金星を見ようか?」

 美香は口を手で覆いながら大笑いした。征矢は冗談でいったわけではないが、彼女につられて笑う。

「ねぇ。わたしは征矢にとってアプロディーテ?」笑うのをやめた美香は瞬きしながら尋ねてきた。

「アプロディーテは女神。美香は女神って感じじゃないから、違うね」

 なるほどね、といって美香は少し唸ってから、沈んだ顔色になる。

「女神と思ってほしいの?」征矢は美香の乾ききれていない髪に、指を絡ませてあそぶ。

「ううん。違う。わたしもよく考えてみれば、わたしは女神じゃないと思う。アプロディーテに失礼な気がしてくる」

「俺にとって美香は猫だね」

「猫? 可愛いね。嬉しい」

 美香は微笑み、征矢に飛びかかって抱きつき、ベッドに押し倒してきた。そんな彼女が、征矢は本当に猫のように見えた。彼女から自分の胸に頬を擦り当てられ、「あ。いちゃつきたいのかな」と考え、彼女の尻を掴む。彼女から「いやっ」といわれ、軽く頬を叩かれた。

「ちょっとづつ大学へ行く支度をしなくちゃね」

 美香は征矢の頬にキスを軽く寄越してから、タンスへ向かう。タンスの引き出しから彼女の黒いスカート、ストッキングやらを引き抜きだした。



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